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第二章、〘飛び交う依頼〙

ギア13、魚!魚!魚!ガブリと逝くのは誰だ⁉

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「前回、ストーカーのマイから謎のギアヒーローの情報を伝えられたナルヤ改めマイナス兼ギアヒーローエヴォ。その後ストーカーに襲われそうになったが、そこに鉢合わせたナオタとナグラに助けられたナルヤだった。さて、今回の依頼は何でしょう。今回も、お楽しみください。」

[とある船着き場]
「…海に怪物っぽい影…」
「はい…それが現れてから漁獲量がガクッと下がりまして…更には、数隻ほど船のエンジンが壊されまして…」
白いハチマキの漁師の話を聞くマイナス。話によると、数日前に謎の魚影が見えてから一向に魚が獲れなくなったらしく、幸い怪我人はいないらしいが、船のエンジンが大破していたらしい。エンジンには人の手で壊された跡があり、例の魚影が関係している可能性があるとのことだ。
「そろそろ私は仕事に行きます、マイナスさん方、よろしくおねがいします…」
「分かりましたー。…んじゃあ、行くかぁ。」
「…分かった。行くぞ。」
シャッター倉庫の壁に寄りかかるブラックは、マイナスの声に応じて頷き、スッと壁から離れる。
「そういえば、なんでブラックも俺と同じ依頼を受けてるのよ?」
「簡単だ。…ストーカーに襲われないようにだ。」
「…なんかごめん。」
「ん?大丈夫だ。気にするな。」

[浜辺]
「変身!」「変身。」
[EVO THE HENSHIN!][GEAR HERO DANUA...THE HENSHIN.]
二人は早速変身し、海中に潜り込む前に何のギアで行くか話し合う。
「俺は…あ、アオザメギアとマダコギアがあるよ。」
するとダヌアは、ギアをコイントスのように親指で弾く。
「俺はダイオウイカギアと…」
コイントスして落ちてきたギアをキャッチし、そのギアの絵をエヴォに見せる。
「…メガロドンギアだ。」
「メガロドン?それってほぼ架空の存在じゃねぇの?」
エヴォは頭にハテナを浮かべる。
「話によるに、イチゲンは架空のものであっても、ネットの情報で得た設定だけでそのギアは作れるらしい。」
「何でも有りかっつーの。というかネストさんとの相性完璧か。」
エヴォは苦笑いをする。もしあの二人が敵だとしたら、自分側の陣営の終わりを覚悟してしまう。それでの苦笑いだった。
「…んじゃ!行きますか!」
[アオザメ!][マダコ!]
「…あぁ。」
[ダイオウイカ!][メガロドン!]
二人は一緒に海へ飛び込み、潜り込む直前で形態を変える。
[EVO THE HENSHIN![アオマダコザメ!]]
[ダーク・ネクサス・アビリティ。[ダイオウイカ][メガロドン]遺伝子、魔改造。]

[海中]
「…くッッら。ふッッか。」
「海はそういう物だ。仕方ない。」
エヴォは実際に潜るまで海を完全に侮っていたが、ダヌアが来てくれたおかげで謎に安心感があった。改めてダヌア感謝したエヴォだった。
「…でも、美しくて…なんか底がない感じがして…怖いな。」
奈落の底、青白い世界に広がる黒は、そんな言葉がお似合いだった。
「一応マスタフォンでライト点けたけど…ほぼ意味ねぇなこれ。もうこれは時間かかるなー…」
そこにダヌアは、マスタフォンから探知式アームを左腕に装着し、画面を見てみる。
「いや、探知してみたのだが…何かが向かって来てるな。」
「え?何処?」
「…あそこからだ。」
ダヌアは斜め下の岩場を指差す。
「え?」
エヴォは目を凝らし、指された岩場を見つめる。
「…」
数秒後の次の瞬間、その岩場は砕け散る。砕け散った際に発生した砂ぼこりから、サメのような何かが掻い潜って出てくる。
「うわ!出たぁっ!!」
ダヌアは有無を言わずエヴォの前に立ち、ベルトを操作する。
「…来い!」
[ドープノンパレイルアタック。[ダイオウイカ][メガロドン]ダーク・ネス・アメイン!]
背中から無数の吸盤の付いた白く大きい触手を出し、その触手で標的を捕らえる。すると捕らえたサメのジャアクカルマには、小さな魚を引き連れていたことに二人は気付く。
「こいつは!?」
「ヨゴレザメか。ダイオウイカとの相性はイマイチか…」
ジャアクヨゴレザメが引き連れていた小さな魚は、ダヌアの触手を噛みちぎり、本体を拘束から解放させる。
「うわー怖い…でも!」
エヴォはギアバッシャーを出し、血走った目でダヌアに突撃するジャアクヨゴレザメの口を抑える。
「よしっ!ダヌア!周りの小魚がめっちゃ痛いから助けて!!痛いっ!!やめて!!!乱暴しないでッッ!!!!」
「…立ち向かうその心、流石だな。待っていろ!!」
ダヌアもギアバッシャーを出し、引き連れていた魚をたたっ斬る。
「…うわぁ、俺はマダコとアオザメだからなぁ…パワープレイは出来んよ…」
と言いながら、ボロボロの体で敵の口を抑え続けるエヴォだった。
「…戦友の為の、生贄となれ!」
[メガロドン!スラッシュギア!]
「…んじゃあ俺も!」
[アオザメ!スラッシュギア!]
エヴォはヨゴレザメの喉元を全力で蹴り飛ばし、勢いのまま口から脱出する。
「ゴゲェアッ?!」
「元は人間だからな!喉は痛ぇだろうな!…風邪はキツいよな。」
「言っている場合か。」
二人はジャアクヨゴレザメを挟み撃ちにし、トリガーを引く。
[メガロドン!クラッシュストライク!グチャバッシャーン!!]
[アオザメ!クラックストライク!ガキバッシャーン!!]
「「ハァァァァ!!」」
共に放った一撃は爆裂し、海中は渦を巻く。

[数分後]
「…なぁブラック。」
「…なんだ?」
先程の船着き場で、二人はあぐらをかいて面を合わせていた。
「…なんでヨゴレザメは攻撃避けたんだろうね?」
「知るか。」

[数分前]
「なんだとッ!?」
「ぎゃあああーーッ!!!!」
ジャアクヨゴレザメは紙一重で二人の攻撃を避け、エヴォの攻撃はダヌアに、ダヌアの攻撃はエヴォにとフレンドリーファイアをかましてしまった。

[そして今]
マイナスはボロボロな状態で頭をかく。対してブラックも同じくボロボロで、マスタフォンでジャアクヨゴレザメの対策を練っていた。
「あーもう!!ヨゴレザメ速すぎだよなクソ!!あの攻撃普通避けます!?」
キレつつも傷薬を塗り、防水絆創膏をせっせと貼る。
「…マスタフォン曰く、アイツは魚だから陸に上がらせる方がいいとの事だが。」
「…マスタフォンはもっと頭良い情報をくれないん?マスター言ってる割には名前負けにも程があるだろって。」
「…なら、とりあえず強行突破か?俺は…大歓迎だ。」
ナグラは立ち上がり、手を差し伸べる。
「…それは俺もだ!んじゃリベンジマッチ行くかー!!」
たった数分経ったくらいでリベンジを挑む二人。周りの漁師はその若者共の元気さに少し引いてしまう。
「あの方達には疲れとか無いのか?」「今の若者はどうなっているのか…」

[浜辺]
二人は先程と同じギアをセットし、変身準備を済ませる。エヴォはストレッチを行い、ダヌアは軽く肩を鳴らす。
「んー…っと。そういえばさ、俺達の存在は日本中で認知されてるやん?」
「そうだな。」
「国家はともかく、市民は全員知ってんのかね?」
「全員は無いな。そもそも、国家側は頑なにネストの件を黙秘。更に言えは、信じる人はまだ少ない。その証拠にマスタフォンの依頼一覧、更新頻度が遅い。」
ダヌアはマスタフォンを見せ、更新ボタンを連打する。
「わ、分かったから…連打止めて…多分壊れる…」
「…そうだな。」
二人はギアバッシャーを持ち海に走り出す。

バッシャーンッ!!

[海中]
「再びの海。さっきのジャアクギアあいつも流石に戸惑うかもな。」
「何故だ?」
ダヌアは笑っているエヴォの考察に理由を尋ねる。
「あいつ目線で考えてみ?縄張り争い負けた奴らが再び来たらどうよ?」
「驚愕そしてうざいな。」
「そゆこと。」
二人はそのまま海の底を目指し潜り込む。
「…(そういえば俺の必殺技って、このセットした2つのギアを回して発動待機ジャ~ンな訳だけど、片方だけ回転させたらどうなるんやろ?後で試そ。)」

[深海]
「チッ、流石に暗いな。ギアヒーローなら圧力は気にしなくても良いが、視界が暗いと話は別だ。」
ダヌアはそのままエヴォに、1つのギアを手渡す。
「…チョウチンアンコウ?」
「あぁ、持っておけ。俺はもう読み込んであるから気にするな。」「いつの間に…」
と言って、ダヌアは頭についた光る触角をピロピロ震わせる。
「まぁ、こいつ遠慮なく使わせていただきます…ん?何かいる?」
次の瞬間、暗闇から1つ巨大な魚影がエヴォ達に突っ込んでくる。
「グウオオオォォォ!!」
「え!?ちょ、ま、」
ダヌアはその魚影の喉を、ギアシューターで貫く。
[ダイオウイカ!]
「…さっきのお返しだ。」
エヴォは急な出来事に数秒固まるが、我に返って無意識に黙って拍手をする。だが海中なので拍手は鳴らない。
「ギィィイ……お前ら…また来やがって……」
魚影は喋り出す。エヴォはチョウチンアンコウギアを使って光を照らす。
「うわー、風穴スゲー…」
写ったのはジャアクヨゴレザメの喉。ダヌアが撃ち貫いた喉は暗い海の底を写す。
「安心しろ。変身解除させれば元通りになる。」
「いやそういうことじゃないぜ?サイコかっちゅーねん。」
二人は日常コントの様に会話をするが、一切そんなことをするような状況ではなく、場違いな明るさだった。
「…何だこいつら、人の喉貫いておいて…ムカつく……」
ジャアクヨゴレザメは一切変わらないサメの顔で少し眉毛をピクつかせる。
「…あ、スンマセン。んじゃ、戦いますか。さっきの戦いで決め台詞言ったからもういいか。」
「行くぞ。」
そう言って二人は、剣を構えて突撃する。
「行け!お前ら!!」
ジャアクヨゴレザメは小魚を呼び出す。ダヌアは寄ってきた小魚を切り裂き、様子を伺う小魚をことごとく撃ち抜く。エヴォはそんな器用なことは出来ないため、ほぼ無限に出てくる小魚を寄って切り裂くことしか出来なかった。
「あーもう!埒が明かん!一か八か……」
[チョウチンアンコウ!]
エヴォは左サイドにセットしたマダコギアを取り替える。
「フォームチェンジ!」
[TRANS FORM.]
[チカチカチカッチ!デーデーデンデーデーデン…チカチカチカッチ!チョウチンアオザメ!]
[EVO THE HENSHIN!チョウチンアオザメ!]
サメのヒレに明るい触角の灯火。イチゲンセンスのダサい音楽と共に現れたのは、暗い深海を照らす悪魔。
「…変身音声、どうにかならんかなぁ…」
「マイナス!!」「え、」
エヴォはダヌアの声に反応して正面を向くと、小魚の大群がこちらに向かって襲いかかってくる。
「うわちょ待ッ…!?」
するとエヴォの触角は閃光を放つ。
「…ほあ?お、小魚が逃げてく。」
本能的に発動した能力は、深海に住まう魚にとってはとても強力だった。真正面から慣れない閃光を喰らった小魚達は驚きすぐさま逃げ去ってしまう。
「こーれーはー?…やりたかったやつやるときやん!ッシャァァ!!」
そう言ってエヴォは左サイドのチョウチンアンコウギアだけを回転させる。
[チョウチンアンコウ!]
「んで~!持ち手を~!引いて押すッー!!」
[チョウチンアンコウ!レフトエヴォスカッシュ!]
「ハァァァーッ!!!」
薄暗い海の底は眩い光に包まれ、ジャアクヨゴレザメはその光を直視してしまい目眩状態になる。
「アガッ!?目がぁっ!?」
「よっし!トドメ行こうぜダヌア!!……ダヌア?」
複眼を両手で抑えながら、天に召される様にブラックは徐々に上へと上がっていく。そう。予め伝えることもなく技を放ったため、ダヌアはジャアクヨゴレザメと同じように目眩状態となり行動不能となっていた。
「…ごめん!ダヌア!お前の仇は俺がとる!!」
「…いや…マイナ…ス……お…前の……せい…だ………あ……」
ギアヒーローダヌア、撃沈。
「なんだ?!何が起きてる?!」
ジャアクヨゴレザメは今何が起きているのか分からず、パニックになる。
「ギアバッシャー!」
[チョウチンアンコウ!スラッシュギア!]
ギアバッシャーの刀身は光り輝き、エヴォは思いっきり振りかぶる。
「今回は避けられんからなぁぁ……?ハァッ!!」
トリガーを引き、エヴォは輝く斬撃波を放つ。
[チョウチンアンコウ!ライトニングストライク!ピカピカーン!]
「あぁ…あぁぁーッ?!」
海中は再び光り輝く。小さな爆発と共に。
「アガァァァァァアア!?」

[船着き場]
「…いやぁ!ほんっとにありがとうございました!!お陰様で漁獲量が右肩上がりだよ!!上がり過ぎて、もはや右肩昇天だよ!!」
「ハハハ、それは良かった良かった。」
「……頭が痛い。」
元気な親方様のジョークに笑顔で迎えるマイナス。壁に寄りかかり右手で頭を抑えるブラック。晴天の下、大きな掛け声で漁をする人々の姿があった。そして、親方様とマイナス達の間に座っていたのは……
「…そういえば、このジャアクギアの変身者って誰?」
「あぁ、こいつはいわゆる…」
親方は男の服を掴み上げる。
「うちらを目の敵にしている奴だよ。」
「つまり、こことは別の漁師さんの集まりの人か?」
親方は頷き、「ハァ…」とため息をつく。
「…まぁその方をどう料理するのかは自由で。捌くなり裁くなり。」「上手い!あんちゃんに座布団1枚!」「頂戴します。」
「…おいマイナス、くだらんことせずに帰るぞ。…お前には色々奢ってもらうから覚悟しておけ。」
「いや悪かったって。」
頭を抑えつつブラックはマイナスを引っ張り出す。
「あ、お二方!」
「ん?」
「…最初、貴方達のことは半信半疑でした。ですが、その話は本当でした。あなた方を信じて、本当に良かったです。本当に…ありがとうございました…!」
マイナスは照れ臭く鼻を擦る。
「…オッス。こちらこそ、ありがとうございました。」

次回ギア14、獣VS武器&父親

おまけ
翌日の朝…
「…やっぱ俺の変身音声、ダッサいなぁ……どうにかならないのかなぁ……あ、ネストさんおはようございやす。」
「ん?あぁ、おはようございます、ナルヤ様。」
「…」
「(?)どうしました?」
「…ネストってさ、イチゲン制作の変身音声どう思う?」
「……ご本人はいませんよね?…では改めて……普通にダサいと思います。」
「だよなぁ……それを踏まえてお願いしたいのがありますんですが……」
「…何でしょう?」
「…俺のセンスで変身音声を改変したいんだけど……」
「…」
「どう?」「ぜひやりましょう何なら今すぐに。」
「よっしゃキタコレ。」
「私がイチゲンのデータをハッキングしましょう。貴方は私に改変したい音声を教えて下さい。」
「任せろ。まぁイチゲンにバレないように、一個だけ!」
「お安い御用です!さぁ!私の部屋へ!」
「おー!」
乞うご期待!!
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