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第二章、〘飛び交う依頼〙

ギア12、切り裂けギアバッシャー!貫けギアシューター!

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「前回、依頼主の家であるヨシグチさん家を訪れたギアヒーローエヴォ本名は元宮モトミヤ 成也ナルヤは、デスブレイドを宗教として見立てて信仰するジャアクインドガビアルと対面する。エヴォはマスタフォンというスマホ型アイテムを使い、剣型の武器、ギアバッシャーを呼び出したのだが...このギアバッシャーの武器としての性能は、いかほどの物か。楽しみですね。」

[ギアバッシャー!]
「ギアバッシャー?こいつそういう名称なのか。まんま過ぎてなんかなぁ…俺だったらもっといい名前付けられる…って、んな事言ってる場合か。さぁ、最高の負けイベントを始めようか!」
矛先をジャアクインドガビアルに向け、台詞を決めるエヴォ。ジャアクロイド達はナイフを構え、エヴォの動きを伺う。
「ジャク...ジャグァ!!」
「ほらよっと!」
真後ろにいたジャアクロイドは飛びつき、ナイフを突き刺そうとするが、ギアバッシャーとのリーチ勝負に圧倒的な差をつけられ、ズバッと切り裂かれる。
「おーこいつ、見た目の割に案外軽いな…ん?窪み…?あ、ベルトの窪みと同じやん。なぁるほど。」
剣の鍔に備わられている窪みを見たエヴォは「絶対これやん」と何かを確信する。するとエヴォは、ハイタカギアをその剣の窪みにはめてみる。
[ハイタカ!スラッシュギア!]
ギアバッシャーから緑の風が発生し、刃を包む。
「おぉ!やっぱ連動した!っしゃあ!」
エヴォはギアバッシャーのトリガーを引く。
[ハイタカ!トルネードストライク!ビュンビューン!!]
「ハァァァ....タァ!!」
剣から発生された緑の風を振り回し、周囲のジャアクロイドを一瞬で細切れにする。その風が通った地面は、タカの羽が舞っていた。
「...やべ。」
羽が舞踊ったのち、ヨシグチさんの家は強烈な風の余波でボロボロになった。幸い周囲の家は紙一重で当たらなかったらしいが、この家はちっちゃな心霊スポットのような風貌に陥ってしまった。
「...後でネストに相談しよう。ワンチャンどうにかなるかもしれないし...あれ?あのおばさんは⁉」
ジャアクインドガビアルはそうこうしてる内に何処かへと行ってしまった。エヴォはマスタフォンで剣を選択解除し、再度武器一覧を漁る。
「う~ん、マスタフォンに頼るか…何かないか何かないか…あ、あるやん。」
エヴォは[探知式アーム]というものをタップする。すると、エヴォの右手に魚雷を探知できそうなレーダーがくっつく。
「おおぉわぁぁ⁉あ、くっつくのね。んーと、あ、これか!」
画面を見てみると、必死にここの地点から離れていく一つの点があった。
「よっし!」
[ディンゴ!]
パンサーカメレオンギアを外し、右サイドにディンゴギアをセットする。
「フォームチェンジ!」
エヴォは犬の姿に変わり、颯爽とレーダーを頼りに走り出す。
「なんなんだここ?迷路かよ。...てなると、道に迷わず走り出してるあのおばさんは、前からここに住んでいたってことなんかな...」
(「デスブレイド万歳!!」)
ふと、あのおばあさんの言っていた言葉と、完全に狂っていたあの目を思い出す。
「…人は者より、物で狂うもんだよなぁ本当に……ん?」
自然と俯いていた顔を上げると、ワニっぽい怪物を見かける。釘バットをしっかり持っており、レーダーもこのワニを指していた。
「まてまてまてまてぇい!!!待てって言っとるやろがーい!!!」「ほげぇ⁉」
そのままの勢いでエヴォは飛び上がり、地面と平行になるような角度でドロップキックを背後からぶちこむ。ジャアクインドガビアルはそのままでんぐり返りでその先のT字路に激突し、目が回ってしまう。
「ちょっとそのままヒヨってて!!」
エヴォはマスタフォンで武器を左手で取り出す。一覧を漁ると、エヴォの目に銃が写る。すぐさまタップし、バッ!と右手を大きくパーにする。
「んーキャッチ!」
ギアバッシャーと同じように飛んでくる銃。エヴォはしっかり手に持ち、銃口を敵に向ける。
[ギアシューター!]
「...やっぱまんまだなぁ。」
エヴォは弾丸を五発放ち、ジャアクインドガビアルはそれに反応し、釘バットで打ち返す。しかし、三発は護りきれず当たり、打ち返した二発はエヴォを襲おうとするがササッと避ける。
「あっぶねー打ち返してきたよ弾丸....まぁ反動なくて助かる!モノホンだったら多分反動で狙い定まらないからな!」
[アオザメ!]
「さっきの周囲崩壊の反省を活かして...!」
エヴォはアオザメギアを、トリガーの上辺りの窪みにはめる。
[アオザメ!シューティングギア!]
「ハァァァ....!」
両手でギアシューターを持ち狙いを定め、トリガーを引く。
[アオザメ!クラックストライク!ガキバッシャーン!!]
「ラァァァァッ!!!」
弾丸は水を纏い、ジャアクインドガビアルを目掛けて放たれる。当たる寸前にサメが現れ、敵を噛みつく。
「そのまま上で爆発しな!」
エヴォが人差し指で空を指すと、サメは敵を噛みついたまま上空へ上がり、高度をだんだんと上げる。
「……ギィャアアアア!!!!」
断末魔と共に、サメは大爆発を起こす。エヴォは目を凝らし、落ちてくるおばあさんを視認する。
[ハイタカ!]
[EVO THE HENSHIN![ハイタカ!]]
「よーっととと...」
エヴォはおばあさんに負担を掛けないように優しくキャッチする。おばあさんの安全が確認できたエヴォはホッと一息つく。そして早速、ネストにメールを送る。

[ボロ雑巾みたいにした家ってどうすればいい?X-<]
[...安心してください。負担しますよ。:->]
[だから優しいかよ。]

[数分後]
パトカーのサイレン、赤く光る住宅街、ガヤガヤ騒ぐ野次馬の溜まり場、エヴォは家の石塀に背中を寄らせ、一息しながらマスタフォンを見る。
「さーてと、思い当たる限り、やることはとりあえずやれたかな。」
エヴォはマスタフォンに映されたチェックリストを見つつ、そのまま指差し確認をゆっくり行う。
「まず...女の子の保護の許可を取った。そして、おばあさんのギア破壊と警察にお世話。というかネストは何者だ?もう警察とかそういう所に連絡して...まぁあんなテレビ放送やったら少しはやり易いのか...んーとそして、ネスト保険会社負担での家工事。あとは....あのギアの出所だな。そこら辺にポッと出てくる訳ないし、誰かが渡した...あのおばあさんが最初じゃなかったらもうやべぇ。」
とりあえず状況を整理しつつ、次にやるべき事を探る。
「今一番やんなきゃいけないのは...まずは警察に色々聞くことか?ヨシグチさんの家に、何かしらのヒントがあるかもしれんし。」
エヴォは野次馬を避けるように裏道を使う。マスタフォンの[ルートミッケタ!]というアプリを使い、人込みを避けられるルートを調べる。
「…アプリのネーミングセンスはまぁ良いんだよな...多分ネストのセンスなのか……可愛い。」

[ヨシグチさん家前]
見張り番の警察官はエヴォを見つけると、「何者だッ!」と銃を構える。
「あー違いますぅー!!味方ですぅー!!」
エヴォは名刺を右手に大声を上げる。警察官は銃をゆっくりと下ろし、敬礼する。
「えっと、なんか思ったより呆気なく信じてくれるというか…味方してくれているんですね…」
「え?あ、はい。そりゃあもちろんです。ネストさんのお仲間の方なら尚更ですから。」
エヴォは「え?」と首を傾げる。
「あ、細かいことは省きますが、実は私、ネストさんに派遣されたスパイというか…」
「え、スパイ?」
彼の言葉に首を傾げる。ネストは何故スパイを派遣しているのか。そして、何故スパイをこの時代で雇えているのか。
「…まぁそんなことより、何かありました?」
「それが特に何も…それどころか、ノーネームの像すら無くなっています。」
エヴォは「えぇ!?」と驚愕する。話によると、ノーネームの像が置かれていた跡はあったが、肝心の像は無くなっているとの事だった。その場での調査では、盗まれた可能性があるとの話である。
「...そっかー、マジかぁ...分かりました!では俺は色々聞きたいことがあるので、戻りまーす。」
「はい、ご武運をお祈りします。」
エヴォはマスタフォンでネストにメールを送り、ワープホールを発生させてもらう。
「んじゃ。」

[ナルヤの家]
「おーいネストさん?俺さぁ警察官に話聞いたんよ?…なぁんでスパイがいんの!?というか、そういうのは最初に言うことだろ!?」
ネストを指差し、思ったことを全てネストに直接ぶつける。
「…えーとですね、まぁ説明しますと…私はもう政府と話を付けているのですよ。」
ネストの口から「政府」というとんでもない単語が飛び出す。
「…へ?政府!?どういうこと!?」
「簡単に言えば、私はもう数年前にもうタイムスリップしたことあるのですよ…そこで未来の話をして…すると追いかけてきたジャアクカルマが政府を襲い...」
「…てことは、あのスパイは政府から?でも、てことは前から伝えてあったんなら、なんであんたはもっと早く行動しなかっ…」
すると、ネストはマスタフォンに保存されていた画像を見せる。その画像には、まるで世界滅亡前に絶望したような顔をした者達がいた。
「私は、その時に監獄されたのですよ。この人達と一緒に。」
ナルヤはこの画像を見て「マジかよ…」と驚愕していた。
「もしかして…この画像に写ってる人達って…政府の…」
「…とりあえず、私が話せるのはここまでです。ですがこれだけは言っておきます。政府は味方です。」
「…色々と事情があるんだな。」
ナルヤは、完全にとはいかないが、この話に納得した。これ以上掘り返すのは悪いのではと思い、黙って自分の部屋に戻る。ナルヤがいなくなった部屋で、ネストは独り言を呟く。
「ナルヤさん…貴方にとって、これ以上のことを話すのは……」

[ナルヤの部屋]
「…イチゲンさんのギア開発…そして、セナのトントン拍子友情…さらには、ネストさんの数年前から政府…うん。」
時計の秒針の音が聞こえる。五回程カチッカチッ…という音が鳴る。
「...絶対裏あるじゃん!!!」
六回目の音はその大きな声でかき消される。
「絶対なにかあるやん!!イチゲンの説明も意味不明!当たり前のように出た政府の話!!そういうのってこんな戦闘初心者の俺がチュートリアル段階で聞ける話じゃないやん!!あーもう!!意味分からん!!あーー……」
ナルヤは勢いのまま枕に顔を埋める。
「…まぁ、何も知らずにやるよりはマシなのか…」
マスタフォンを取り出し、依頼一覧を漁る。
「あいつらも多分まだ仕事やってるし…俺もやらなくちゃいけないしなぁ…」
ピンポーン♪
すると突然、家のインターホンが鳴り響く。ナルヤは少し驚きつつも、ゆっくりと部屋のカーテンを開けて外を確認する。
「トラックはない…多分宅配じゃないな。(なんも注文してないし。)」
とりあえず部屋から出て、「はーい」と返事をして一階に降りる。そのままリビングへと走り、家のインターホンに繋がる受話器を手に取る。
ガチャッ
「はーい!どなたでしょうか!」
[やっほーナルヤ君!]
聴いたことある声。ナルヤはその一瞬で少し虚ろに近い真顔になり、渋々名前を聞く。
「…誰でしょうかって聞いたンすけど。」
[へへ♪いつでも永遠に…君のアイドル!マーイちゃんだよッ♪(ブツッ!)
ナルヤは「マイ」という名前を聞いた瞬間に、勢いよく受話器を叩きつけ通話を切る。
「…」
ピンポーン♪
「…」
ガチャッ
[なんで切るのー?せっかく今日チョコ持ってきたのに(ブツッ!)
「…」
ピンポーン♪
「…」
ガチャッ
[だーかーらー。切らないでって「約1億年ほどお引き取り下さい。」(ブツッ!)
「…」
ピンポーン♪ピピンピンピピンピンポーピンピピンポーン♪
ガチャッ
「ッルセェェェェェ!!!!!!」
受話器越しにぶちギレるナルヤだったが、マイは構わずにっこり笑顔で話を続ける。
「聞いたよセナちゃんから♪ナルヤ君、最近ネットで話題になってる正義の戦士なんだね♪」
ナルヤは適当に相づちを打とうとする。
「あーはいはいそうですよってはぁぁぁ⁉」
受話器から「セナ」と「戦士」という言葉が聞こえたナルヤは、急いで玄関に向かい、ドアを開ける。
「あーやっと開けてくれたね♪ナルヤく「誰から聞いたって言った⁉マイ!」
ナルヤは焦った顔でマイを睨む。
「え?えっと、セナちゃんって言う子から……今日は積極的だね…♪」
「…あー良かった……」
もし赤の他人かつ事情を知らないやつから聞いたとしたら、ナルヤは正体を世間に思いっきりバラしていることになる。一息ついた後、ナルヤはすぐにマイの腕を掴み、リビングへと案内する。
「お邪魔しまーす♪」
「…一応言っておくけど!俺がギアヒーローだってことをバラすんじゃねぇぞ⁉こっちにも事情って言うのがあるからな⁉」
マイに指を指してナルヤは釘を刺しておく。マイは笑顔で頷き、ナルヤは右手をグーにして、片手で神様に願うポーズをとる。
「マジで言うんじゃねぇよマジで...で?何の用だよ?お前にしては珍しく家にきたよな?いつも庭で済んでいるのに。」
「庭まで来た」というマイのストーカー行為を思い出し、ナルヤは本当にロクな思い出無いなと改めて思った。
「うん、今日は色々と伝えたいことがあるの。」
「伝えたいこと?あ、しょーもなかったら追い出すからな?」
すると突然、マイは笑顔からキリッとした真面目な顔つきになる。
「!」
ナルヤは初めてみるそのストーカーの顔に、話を聞いた方がいいと本能的に察知する。
「実は学校で爆発が起こる前、というよりナルヤ君達とご飯を食べた後の話なんだけどね。一人、小さな女の子が私に訪ねてきたの。」
「小さな女の子?」
最初に思い浮かんだものは、あの病院の、謎のギアヒーローだった。そう、ジャアクギアヒーローフォリカ。
「その女の子はね、ギアを付けた人を探してるって言ってたの。多分、そのギアヒーロー?って言うもののことだと思う。」
「なるほど、思い当たる節がある。あの後謎のギアヒーローと会ったんだ。とんでもなく戦闘狂だったな。」
マイは少し首を傾げる。
「え?でもあの子は落ち着いていて戦闘狂っていうような子じゃなかったよ?」
「…」
(「…ごめんね……」)
あの言葉は不思議に思っていたナルヤだったが、今のマイの話を聞き、さらに沈黙する。
「…まぁそいつがあのギアヒーローとは限んないからな。でもいい話を聞いたよ。んじゃ、お茶出すんで5秒以内に帰ってくれませんかな?」
マイの両肩を掴み半回転させ、背中を押して帰らせようとする。
「え?まだ帰らないよ?」
「…は?」
マイの言葉に思わず足を止めてしまう。そしてマイは、ナルヤをソファに押し倒し、じわじわと攻め寄ってくる。
「いや、いやいやいや…」
「お楽しみは……これからだよ♪」
「誰か助けてぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
その後、一線を越える直前にナグラとナオタに助けられたナルヤだった。

次回ギア13、魚!魚!魚!ガブリと逝くのは誰だ⁉

おまけ
「ありがとぉぉ二人ともぉぉぉ……」
「本当に良かった…間一髪で依頼が終わって、助けられましたよ…」
「ナルヤ、パンツは無事か。ほら、ズボンだ。」
「ほんっとマジありがとうございます……」
「まぁ、この方は…」
「ねーねー、もうやらないって言ったら許してくれる?」
[[コガネグモ]遺伝子、魔改造。]
「俺がお前の家まで送りつける。それまではそのままだ。さて、また俺の仕事が増えたな…お前らは先に昼御飯を食べていろ。」
「「はーい。」」
しばらくの間、蜘蛛の糸に捕まっていたマイだった。
「あ、私を乱暴する気ね!エ〇同人みたいに!!〇ロ同人誌みたいにッ!!」
「…誰かこいつを黙らせてくれ。」
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