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紫苑の約束
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ここは、白く冷たい。永遠に降り続ける白く冷たいものを全身に受けながら、私は非現実的に、なかば他人事のように思っていた。そしてぼんやりと過去を振り返るのだ。なぜ私はここにいるのか、私という存在は何なのだろうか。しばらく考えてみるも、その答えはわからない。私の記憶には、ただ無機質な白が果てしなく広がっている。それは眼前の白い何かのようにただただ虚無だった。いや、違う。私の脳内を巡る白い走馬灯のなかに「それ」は微かに、だが確実に存在している。ここではない場所、私以外の誰か。私は横たわっている誰かとどこか明るい場所で会話している。だが、その人の顔には濃い霧がかかったようにぼやけ、声にはノイズがかかり、聞き取ることが出来ない。これ以上鮮明に思いだそうにも、激しい頭痛が再生を拒んだ。私の頭を軋ませるが如き頭痛は脳内の「それ」にも干渉した。美しかったその空間は突如豊かな色を失い、無機質な灰色へと変色した。その時突然白いものが勢いをまして私に襲いかかった。やがて私の脳内世界と目の前に広がる虚無はまったく同じものになった。そうして私はようやく気づいたのだ。例え過去がどんなに美しいものであっても、結局のところこれが現実であり、過去はただの幻影でしかないことを。さらに勢いを増す白いものと低い轟音が私の五感のすべてを奪った。そのまま私のすべてを奪って欲しいと切に願った。
次に目を覚ますと、私はどこか知らない明るい場所に横たわっていた。明るいだけではない、何やら熱を感じる。それに降り続いていたあの白いものも、もう降っていない。ただ青く、透き通った地面が彼方まで続いている。どうしてしまったのかと思い、呆然としていると、目の前にあった白いものの塊が崩れ落ちた。すると、その地面に波紋が生じ、塊は少しずつ小さくなり、やがて青い大地の一部になった。残った塊も見ている間に段々溶け出していき、大地と一つになった。なぜこの大地は青い色をしているのだろうか?いや、青だけではない。大地は風に吹かれ、一瞬ごとにその形と色を変える。私の足元には薄い青、遠くを見ると濃い蒼、涼しい風が吹けば、これまた薄い白が混じる。この水面の彼方と空はやがて一つになり、さざ波だけが二つを分けていた。よく観察してみると、白い部分はこの先のどこか遠い場所に密集している。辺りを見渡してもあれほど密集している箇所はない。私はなんとも不思議な気分になり、なんとなく視線を上げた。
そこには光と熱を発する巨大な星があった。私はその光に目を焼かれ、反射的に目を背けくた。完全にブラックアウトした視界は時間の経過と共に彩りを取り戻していった。例の箇所はその星の真下にあり、私は今になって初めてこの世界の本質的な変化に気づいた。
ぼんやりとさざ波を眺めていると、水面が紅色に染まりだした。どうしたものかと辺りを見渡すと、例の星が水平線の彼方へと消えるところだった。しばらく眺めていると、紅はやがて黒に変わっていった。
代わりに、綺麗な円形の白い星が登ってきた。その星は先ほどの星と違い、穏やかな光を発していて、この世界を優しく照らしてくれた。それは水面にもその姿を映しだし、まるで一つが二つであるかのようだった。
その星が少しずつ形を変えて沈んでいくのを見ていると、その反対の方から再び明るく眩しい星が登ってきた。それは先ほどまでの物と同じだが、また違う光を発しているように感じられた。明るい星から一条の光が差し込み、世界は再び青く変色した。今一度、白い星の方を見ると、もうその姿は無く、ただ淡い青が広がっていた。あの星は消えてしまったのだろうか?一瞬そう思ったものの、明るい星が再び出てきたのだから、白い星もそのうち見られるだろうと思い直した。
ある意味納得した私は、やはりここで待つことにした。別に動けないという訳でも、ここに居なければいけないという確固たる理由がある訳でもない。だが、なぜだかここにいなくてはいけないような気がした。あの美しい幻想の舞台であるこの場所に。失われた私の過去もこの世界のこともやがて分かる、私はそう感じてならなかった。
そんなことを考えていると、また明るい星が出てきた。星の明るさに目を細めながら、私は「二つ」とカウントした。そうしたところで私はふとこの行為に疑問を抱いた。カウントを始めたのはいいが、このカウントは何をもって終わるのだろうか?あの幻想にたどり着くまで?私という存在の消滅の時まで?……わからない。私は無意味なそれがなんとも面白く、くすりと笑った。
そうこうしていると、また明るい星が出てきて、私は「三つ」とカウントした。
それからは、空から水が降ってきたり、灰色の何かが空を覆ったり、時々白くてつかみ所のない何かに包まれてたりした。空から水が降るとたまに七色の大きなアーチが遠くに見えて、それが見られると私はなんだか幸せな気分になれた。それはしばらくすると霞んで消えてしまい、決まって私を哀しい気分にさせた。
カウントが百を越えるころには足元の水が減り、茶色の地面が見えてきた。
カウントが二百を越えるころには茶色が地平線の果てまで広がっていた。
カウントが三百を越えるころ、大きな変化が起こった。辺りの地面に緑色でふさふさとした外見の何かがぽつりぽつりと出てきた。それらはどうやら水を吸収するようで、空から水が降ってきても、水が地面に溜まることはほとんど無くなった。それらはしばらくするとその表面が茶色に変色して乾燥し、ぼろぼろと崩れた。それらは数を増やし、辺りを覆いながら生き死にを繰り返した。
そして、今。カウントはちょうど一万を数えた。辺りは様々な色や形、大きさのものが乱立し、その間をくぐり抜けるように小さい何かがふわりひらりと、または仲間と隊列を組みながら行き来している。私の世界は様々な色や音に包まれていた。しかし、約束の時はまだ来ない。いや、もはや私はその約束すら思い出すことが出来なくなっていた。星が昇るたびに重ねたカウントのみが過去の私と現在の私を繋いでいた。ずっと前にもこんなことを考えたような気がするが、今の私には全くもってどうでもいいことだ。
それから少し時間が経った。いつからそこに存在していたのかは分からないが、私の目の前に小さな双葉が芽吹いていた。成長しても丈が短く、薄い緑色をしている辺りのものとは違い、この双葉は今まで見たことのない色や形をしている。これは一体どんな姿に育つのだろうか。普段は無関心であるはずのことがなぜか気になった。
それは少しずつ大きくなり、ついには立ち上がった私とほとんど同じ高さに成長した。細い幹にうっすらと線が通った葉がいくつもついていて、先端には大きく膨らんだつぼみがある。この私の知らない何かにはこのつぼみの中の世界、つぼみが綻ぶその瞬間だけが私の全てであるかのような錯覚すら起こした。やがてそのつぼみはゆっくりと溢れるように綻んだ。それは無垢な白色から徐々に綺麗な薄紫色に染められていき、周りのつぼみとほとんど同じタイミングで開花した。完全に開花したそれの中央は黄色でその周りに薄紫色の花弁がついていた。その小柄な花は可愛らしくも、どこか強かさを感じられた。その時、私はこの不思議な魅力を持つ花の匂いを嗅いでみたいと思い、花のほうに体を寄せた。ある程度近づいても何の匂いもしないので香らない花かと思ったが、自分の視界がぼやけるほど花に顔を近づけると涼しげな香りが仄かに香った。その瞬間、私は世界が揺らいで消えるかのような感覚に陥った。
揺らいで揺らいで揺らいで、辺りの景色が何度も写り変わった。
目が覚めると私はどこか知らない場所にいた。辺りは丈の短い草が端正に生え揃えられていて、その中に小さな家がポツンと一つある。全く知らない場所だというのに、不思議と私はここが懐かしいと感じ、あの家に淡い既視感を感じるのだ。とりあえず私はその家のほうに歩いて行った。その家の庭には様々な色や形の花が咲いており、どこか冷たい雰囲気が漂うこの空間では異質な存在感を放っている。家の正面にある花壇には例の薄紫色の花が咲いていて、その裏手から誰かがすっと出てきた。
その人物は黒い長髪で、リボンの付いた大きな麦わら帽子を被りながら、夕暮れを背にこちらのほうに向かってきた。その時、私は何とも不思議な感覚に陥った。夕日に隠れて顔を見ることは出来なかったが、あの人物は他ならぬ私であると半ば直感的に私は感じたのだ。そんな突拍子のないことを考えている間に「私」はそこの家のドアを開けて中に入って行った。私は一瞬どうしようかと悩んだが、家のドアが開け放たれたままだったので、私も家の中に入ることにした。
家の玄関は陽の光を受け、夕暮れに染まっていた。おそらく、本来の内装は白色なのだろう。壁に取り付けられている額縁には絵が飾られていたが、それもまた反射で茜色にしか見えなかった。
ここには誰もいないようなので、さらに先に進もうとすると、風もないのに家のドアがパタンと閉まった。
玄関を抜けて、通路に沿って左に曲がると家の大きさの割に開けた部屋に繋がった。脇には二階への階段があった。ここにも人の気配が無かったが、大きめのベッドが不自然な位置,丁度花壇の正面に置いてあった。辺りにはテーブル、大きな本棚、ロッキングチェアなどがあり、寝室とは思えない。あのベッドはこの空間において、明らかに異質だ。あの不自然なベッドが何となく気になったので、もう少し近くで見ることにした。すると階段から、一階へ降りてくる足音が聞こえてきた。見つかっては不味いと思った私はとっさに本棚の陰に隠れた。トン、トンと聞こえていた足音は一階に到達し、そのまま私のいるこの部屋に向かってきた。足音の主は段々とこちらに近づき、私が隠れている本棚の前で立ち止まった。呼吸の音すら聞こえてきそうな静けさの中、私はただ息を殺していた。その人物は本を吟味しているのか、本を出したりしまったりしていた。やがて読みたい本が見つかったのか、その人物は例のベッドのほうに歩いて行った。後ろ姿から察するに、先ほどの人物は「私」だったようだ。「私」は一度ベッドを覗き込んで、そのままベッドの隣にあるロッキングチェアに座った。ロッキングチェアが軋む音が聞こえて、それからすぐ、「私」が本を捲る乾いた音が聞こえ始めた。
しばらくの間、本を捲る音と時折ロッキングチェアを揺らす音が静かな夕暮れの中聞こえた。
しばらくすると、「私」はやや薄いその本を読み終えた。「私」が本を少し名残惜しいように閉じて、本棚に本を返す為に今一度ロッキングチェアを軋ませた時、例のベッドから男の声が聞こえた。
「おはよう。何の本を読んでいたのかな?」
「私」は少し驚いたのか、本を戻す為の動きが止まった。
「夏目漱石の「夢十夜」よ。……全く、びっくりしたわ。寝ているものだと思っていたもの。」「私」は椅子に座りなおし、ロッキングチェアの肘掛けに軽く乗り出し、ベッドのほうに顔を近づけた。
「いや、しばらく前から起きてはいたよ。君の読書中の真剣な顔に見とれていただけさ。」
「……馬鹿。」そうつぶやくと「私」は本を戻す為、今度こそ立ち上がった。本を棚に戻すと、今度は何も持たずすぐにロッキングチェアに座った。
「今日は珍しく晴れているね。」ベッドの男が言った。
「そうね。こんなに晴れることのは何か月ぶりでしょうね。」
「僕たちが生きている間に晴れるのは今日が最後かもしれないね。」男は冗談とも諦観ともとれる乾いた笑いと共に言った。
「そうね。言われてみるとそうかもしれないわ。AIによる予報だと、もう氷河期は始まっていて、地球は世界的な低気圧に襲われて、北と南の端からゆっくりと氷漬けにされているそうよ。暦上で冬になる頃には、この星はスノーボールになっているかもしれないわね。」
「今からでも遅くはない。君だけでもオーストラリアあたりに避難したらどうだい?」男は疑問形で尋ねているが、切願するかのような声音だった。
「……まぁ出来なくはないでしょうけど、その気にはなれないわ。どこにいようとも、最期には氷詰めになるし、変わらないわ。」
男はそう返されることが内心分かっていたのか感情を表にだすことはなかったが、落胆しているのか諦観しているのか、悲しそうに返した。
「結局同じ結末を迎えようとも、君には少しでも可能性のある道を選んで欲しいだけなんだよ。病気で体を動かせない僕に遠慮することは、」その時彼は突然息が詰まり、激しく咳き込んだ。慌てた「私」が彼の背中をさするよりも早く、ほとんど反射的にベッドの下からいくつかの細長い白色のアームが出てきた。それらは胸で呼吸する彼の腕を固定してそこに何かを打ち込んだ。すると苦しげに呼吸していたのが徐々に落ち着き、十回息を吸い込むまでには元の穏やかな呼吸に戻った。呼吸が落ち着くや否や彼は深呼吸にも似たゆったりとしたため息をついて、再び話し始めた。
「この通り、僕の病気はもう末期だ。前みたいにガーデニングすることは愚か、支えなしでは立ち上がって歩くことさえ出来ないだろ。正直、もう長くはないだろうな。薬で体を誤魔化し続けているだけさ。」
彼は少しおどけたような語調で続けた。
「だけど、もうこうなったら仕方がないのさ。映画を見たり、小説を読んだりして最期の時間を過ごすことにするよ。タイムリミットがあるから案外充実した時間になるかもしれないな。」
彼は先ほどまでの語調に戻した。
「だから、もう大丈夫。何も心配することはないよ。」
「私」は黙ってベッドの男を見つめていた。その表情は沈む直前の夕日に隠れて見えなかった。それから少しの間、夕闇に世界が包まれるまで、ただヒュウヒュウと風の音だけが遠く聞こえた。
夕暮れの沈黙を破ったのは「私」だった。
「あなたは私があなたの為にここに留まっていると思っているようだけど、それは違うわ。私は他ならぬ私自身の意思でここにいるのよ。私がここにいる理由はあなたとこの場所が好きだから。ただそれだけよ。」
その時、陽は完全に沈み、深い茜色だった「私」のシルエットはほんの少し茜色を残した黒色に変化した。夜が始まったその時「私」の口角は微笑んでいるのか、僅かに上がっていた。
「ああ。理由はもう一つあったわ。寒空の下、知らない人達と人生最期のヴァカンスなんて願い下げだわ。」
一瞬間を開けて、二人は揃って笑った。
そうして、満月と無数の星々と共に、夜の帳は下りていく。久しぶりに雲の無い夜で、今宵はたまたま満月だった。陽が落ちると、部屋は一気に暗くなり、天井に付けられている照明がひとりでについた。「私」は照明の眩しい光に目を細めながら、「アロエ、照明をオフにして。」と言った。すると照明がフッと消えて、月明かりが窓際から差し込んでくる。
「私」は、いや、そこにいる二人は同じ月を見ているような気がした。
しばらく沈黙が続いた後、「私」は彼に向かって呟いた。
「今夜は月が綺麗ですね。」
彼はひと呼吸置いて、「私」の言葉に応えた。
「死ぬにはいい夜ですね。」
「私」は少し気恥ずかしいように、また哀しそうに、ロッキングチェアから立ち上がった。そしてベッドに近づき、彼のほうを覗き込んだ。「私」と彼の様子はベッドに隠れて見ることが出来なかった。彼らは静かで、月明かりで白く照らされた一つの塊のようだった。
それから少しした後、「私」は彼から離れ、ベッドの側のロッキングチェアに前かがみになって再び座った。今度は椅子を揺らさず、ただ彼を見ていた。
不意に彼が言った。
「僕は今夜中に死ぬだろうな。手足に力が入らないし、体の先のほうから寒くなってきた。」
「……変な冗談は止めてよ。」
「……冗談ならいいんだけどなぁ。……残念だけど病気はとっくに末期なんだよ。……医療技術がここまで発展していなかったら、今頃火葬されて灰になってるような状態だよ。」
「私」はここに来て、始めて激しく動揺していた。
「いや。そんなの絶対にいや。私を置いて行かないでよ。お願いだから私を一人にしないでよ!あ、アロエ何とかならないの!?」
ベッドの脇に置かれた円筒状の小さな物体が音声を出した。
「残念ながら、もうどうすることも出来ません。」
「私」は深く落胆したように頭を抱えた。
「……しょうがない。寿命というやつさ。……君だってそうは変わらない。……僕が少し早く逝くだけさ。」
私は重いものを持ち上げたように頭を上げた。
「そんなのわかってるわ。だけど、どうせならあなたと一緒がよかった。……独りはいや。」
「……それは僕も同じさ。……残念だよ。……僕が死んだら、死体は部屋の前の紫苑の花壇に埋めて欲しい。……いつかきっときっと綺麗な花を咲かせるだろう。……出来れば君に見て欲しかったけど、それは無理そうかな。……そうだ……これは言ったかな……紫苑の花言葉は…………。」
それから彼は黙ってしまった。「私」が彼を揺さぶっても、彼が再び言葉を発することはなかった。
彼は死んでしまったのだ。
「私」は月が空の果てに消えるまで彼の胸の上で泣き続けた。再び日が昇る頃には泣き疲れて穏やかな寝息を立てていた。
私は今まで見られなかった彼の顔を見ることにした。彼の存在こそが私の失われた過去の最後のピースなのだ。
私はベッドのロッキングチェアがない側から彼の顔を覗いた。
そこには懐かしい、そしてなぜ忘れていたのかわからないほどに愛おしい人がいた。すると、頭の霧が晴れて、彼と過ごした時間を思い出した。そして理解した。これが二回目の別れであるということに。久しぶりの再会で最期の別れだということに。自分のいる世界に彼はいないということに。
さようならのキスをしよう。そこにあなたはいないけれども。さようなら。さようなら。もう会うことは無いでしょう。
彼に別れを告げた後、再び世界は揺らいで、私は現の世界に帰ってきた。目の前には先ほどの花いや、紫苑が咲いていた。もう一度その匂いを嗅ぐと、今度は先ほどと同じ涼しい香りと共に懐かしい香りもした。この懐かしさはなんだろうか。嗚呼そうだ。花に囲まれた庭の中で、なぜか彼からは紫苑の涼しい香りがしていたのだ。
そうか、彼はもう一度私に会いに来てくれたのか。ありがとう。私の所に帰ってきてくれて。
そして、私は再び彼にキスをした。
次に目を覚ますと、私はどこか知らない明るい場所に横たわっていた。明るいだけではない、何やら熱を感じる。それに降り続いていたあの白いものも、もう降っていない。ただ青く、透き通った地面が彼方まで続いている。どうしてしまったのかと思い、呆然としていると、目の前にあった白いものの塊が崩れ落ちた。すると、その地面に波紋が生じ、塊は少しずつ小さくなり、やがて青い大地の一部になった。残った塊も見ている間に段々溶け出していき、大地と一つになった。なぜこの大地は青い色をしているのだろうか?いや、青だけではない。大地は風に吹かれ、一瞬ごとにその形と色を変える。私の足元には薄い青、遠くを見ると濃い蒼、涼しい風が吹けば、これまた薄い白が混じる。この水面の彼方と空はやがて一つになり、さざ波だけが二つを分けていた。よく観察してみると、白い部分はこの先のどこか遠い場所に密集している。辺りを見渡してもあれほど密集している箇所はない。私はなんとも不思議な気分になり、なんとなく視線を上げた。
そこには光と熱を発する巨大な星があった。私はその光に目を焼かれ、反射的に目を背けくた。完全にブラックアウトした視界は時間の経過と共に彩りを取り戻していった。例の箇所はその星の真下にあり、私は今になって初めてこの世界の本質的な変化に気づいた。
ぼんやりとさざ波を眺めていると、水面が紅色に染まりだした。どうしたものかと辺りを見渡すと、例の星が水平線の彼方へと消えるところだった。しばらく眺めていると、紅はやがて黒に変わっていった。
代わりに、綺麗な円形の白い星が登ってきた。その星は先ほどの星と違い、穏やかな光を発していて、この世界を優しく照らしてくれた。それは水面にもその姿を映しだし、まるで一つが二つであるかのようだった。
その星が少しずつ形を変えて沈んでいくのを見ていると、その反対の方から再び明るく眩しい星が登ってきた。それは先ほどまでの物と同じだが、また違う光を発しているように感じられた。明るい星から一条の光が差し込み、世界は再び青く変色した。今一度、白い星の方を見ると、もうその姿は無く、ただ淡い青が広がっていた。あの星は消えてしまったのだろうか?一瞬そう思ったものの、明るい星が再び出てきたのだから、白い星もそのうち見られるだろうと思い直した。
ある意味納得した私は、やはりここで待つことにした。別に動けないという訳でも、ここに居なければいけないという確固たる理由がある訳でもない。だが、なぜだかここにいなくてはいけないような気がした。あの美しい幻想の舞台であるこの場所に。失われた私の過去もこの世界のこともやがて分かる、私はそう感じてならなかった。
そんなことを考えていると、また明るい星が出てきた。星の明るさに目を細めながら、私は「二つ」とカウントした。そうしたところで私はふとこの行為に疑問を抱いた。カウントを始めたのはいいが、このカウントは何をもって終わるのだろうか?あの幻想にたどり着くまで?私という存在の消滅の時まで?……わからない。私は無意味なそれがなんとも面白く、くすりと笑った。
そうこうしていると、また明るい星が出てきて、私は「三つ」とカウントした。
それからは、空から水が降ってきたり、灰色の何かが空を覆ったり、時々白くてつかみ所のない何かに包まれてたりした。空から水が降るとたまに七色の大きなアーチが遠くに見えて、それが見られると私はなんだか幸せな気分になれた。それはしばらくすると霞んで消えてしまい、決まって私を哀しい気分にさせた。
カウントが百を越えるころには足元の水が減り、茶色の地面が見えてきた。
カウントが二百を越えるころには茶色が地平線の果てまで広がっていた。
カウントが三百を越えるころ、大きな変化が起こった。辺りの地面に緑色でふさふさとした外見の何かがぽつりぽつりと出てきた。それらはどうやら水を吸収するようで、空から水が降ってきても、水が地面に溜まることはほとんど無くなった。それらはしばらくするとその表面が茶色に変色して乾燥し、ぼろぼろと崩れた。それらは数を増やし、辺りを覆いながら生き死にを繰り返した。
そして、今。カウントはちょうど一万を数えた。辺りは様々な色や形、大きさのものが乱立し、その間をくぐり抜けるように小さい何かがふわりひらりと、または仲間と隊列を組みながら行き来している。私の世界は様々な色や音に包まれていた。しかし、約束の時はまだ来ない。いや、もはや私はその約束すら思い出すことが出来なくなっていた。星が昇るたびに重ねたカウントのみが過去の私と現在の私を繋いでいた。ずっと前にもこんなことを考えたような気がするが、今の私には全くもってどうでもいいことだ。
それから少し時間が経った。いつからそこに存在していたのかは分からないが、私の目の前に小さな双葉が芽吹いていた。成長しても丈が短く、薄い緑色をしている辺りのものとは違い、この双葉は今まで見たことのない色や形をしている。これは一体どんな姿に育つのだろうか。普段は無関心であるはずのことがなぜか気になった。
それは少しずつ大きくなり、ついには立ち上がった私とほとんど同じ高さに成長した。細い幹にうっすらと線が通った葉がいくつもついていて、先端には大きく膨らんだつぼみがある。この私の知らない何かにはこのつぼみの中の世界、つぼみが綻ぶその瞬間だけが私の全てであるかのような錯覚すら起こした。やがてそのつぼみはゆっくりと溢れるように綻んだ。それは無垢な白色から徐々に綺麗な薄紫色に染められていき、周りのつぼみとほとんど同じタイミングで開花した。完全に開花したそれの中央は黄色でその周りに薄紫色の花弁がついていた。その小柄な花は可愛らしくも、どこか強かさを感じられた。その時、私はこの不思議な魅力を持つ花の匂いを嗅いでみたいと思い、花のほうに体を寄せた。ある程度近づいても何の匂いもしないので香らない花かと思ったが、自分の視界がぼやけるほど花に顔を近づけると涼しげな香りが仄かに香った。その瞬間、私は世界が揺らいで消えるかのような感覚に陥った。
揺らいで揺らいで揺らいで、辺りの景色が何度も写り変わった。
目が覚めると私はどこか知らない場所にいた。辺りは丈の短い草が端正に生え揃えられていて、その中に小さな家がポツンと一つある。全く知らない場所だというのに、不思議と私はここが懐かしいと感じ、あの家に淡い既視感を感じるのだ。とりあえず私はその家のほうに歩いて行った。その家の庭には様々な色や形の花が咲いており、どこか冷たい雰囲気が漂うこの空間では異質な存在感を放っている。家の正面にある花壇には例の薄紫色の花が咲いていて、その裏手から誰かがすっと出てきた。
その人物は黒い長髪で、リボンの付いた大きな麦わら帽子を被りながら、夕暮れを背にこちらのほうに向かってきた。その時、私は何とも不思議な感覚に陥った。夕日に隠れて顔を見ることは出来なかったが、あの人物は他ならぬ私であると半ば直感的に私は感じたのだ。そんな突拍子のないことを考えている間に「私」はそこの家のドアを開けて中に入って行った。私は一瞬どうしようかと悩んだが、家のドアが開け放たれたままだったので、私も家の中に入ることにした。
家の玄関は陽の光を受け、夕暮れに染まっていた。おそらく、本来の内装は白色なのだろう。壁に取り付けられている額縁には絵が飾られていたが、それもまた反射で茜色にしか見えなかった。
ここには誰もいないようなので、さらに先に進もうとすると、風もないのに家のドアがパタンと閉まった。
玄関を抜けて、通路に沿って左に曲がると家の大きさの割に開けた部屋に繋がった。脇には二階への階段があった。ここにも人の気配が無かったが、大きめのベッドが不自然な位置,丁度花壇の正面に置いてあった。辺りにはテーブル、大きな本棚、ロッキングチェアなどがあり、寝室とは思えない。あのベッドはこの空間において、明らかに異質だ。あの不自然なベッドが何となく気になったので、もう少し近くで見ることにした。すると階段から、一階へ降りてくる足音が聞こえてきた。見つかっては不味いと思った私はとっさに本棚の陰に隠れた。トン、トンと聞こえていた足音は一階に到達し、そのまま私のいるこの部屋に向かってきた。足音の主は段々とこちらに近づき、私が隠れている本棚の前で立ち止まった。呼吸の音すら聞こえてきそうな静けさの中、私はただ息を殺していた。その人物は本を吟味しているのか、本を出したりしまったりしていた。やがて読みたい本が見つかったのか、その人物は例のベッドのほうに歩いて行った。後ろ姿から察するに、先ほどの人物は「私」だったようだ。「私」は一度ベッドを覗き込んで、そのままベッドの隣にあるロッキングチェアに座った。ロッキングチェアが軋む音が聞こえて、それからすぐ、「私」が本を捲る乾いた音が聞こえ始めた。
しばらくの間、本を捲る音と時折ロッキングチェアを揺らす音が静かな夕暮れの中聞こえた。
しばらくすると、「私」はやや薄いその本を読み終えた。「私」が本を少し名残惜しいように閉じて、本棚に本を返す為に今一度ロッキングチェアを軋ませた時、例のベッドから男の声が聞こえた。
「おはよう。何の本を読んでいたのかな?」
「私」は少し驚いたのか、本を戻す為の動きが止まった。
「夏目漱石の「夢十夜」よ。……全く、びっくりしたわ。寝ているものだと思っていたもの。」「私」は椅子に座りなおし、ロッキングチェアの肘掛けに軽く乗り出し、ベッドのほうに顔を近づけた。
「いや、しばらく前から起きてはいたよ。君の読書中の真剣な顔に見とれていただけさ。」
「……馬鹿。」そうつぶやくと「私」は本を戻す為、今度こそ立ち上がった。本を棚に戻すと、今度は何も持たずすぐにロッキングチェアに座った。
「今日は珍しく晴れているね。」ベッドの男が言った。
「そうね。こんなに晴れることのは何か月ぶりでしょうね。」
「僕たちが生きている間に晴れるのは今日が最後かもしれないね。」男は冗談とも諦観ともとれる乾いた笑いと共に言った。
「そうね。言われてみるとそうかもしれないわ。AIによる予報だと、もう氷河期は始まっていて、地球は世界的な低気圧に襲われて、北と南の端からゆっくりと氷漬けにされているそうよ。暦上で冬になる頃には、この星はスノーボールになっているかもしれないわね。」
「今からでも遅くはない。君だけでもオーストラリアあたりに避難したらどうだい?」男は疑問形で尋ねているが、切願するかのような声音だった。
「……まぁ出来なくはないでしょうけど、その気にはなれないわ。どこにいようとも、最期には氷詰めになるし、変わらないわ。」
男はそう返されることが内心分かっていたのか感情を表にだすことはなかったが、落胆しているのか諦観しているのか、悲しそうに返した。
「結局同じ結末を迎えようとも、君には少しでも可能性のある道を選んで欲しいだけなんだよ。病気で体を動かせない僕に遠慮することは、」その時彼は突然息が詰まり、激しく咳き込んだ。慌てた「私」が彼の背中をさするよりも早く、ほとんど反射的にベッドの下からいくつかの細長い白色のアームが出てきた。それらは胸で呼吸する彼の腕を固定してそこに何かを打ち込んだ。すると苦しげに呼吸していたのが徐々に落ち着き、十回息を吸い込むまでには元の穏やかな呼吸に戻った。呼吸が落ち着くや否や彼は深呼吸にも似たゆったりとしたため息をついて、再び話し始めた。
「この通り、僕の病気はもう末期だ。前みたいにガーデニングすることは愚か、支えなしでは立ち上がって歩くことさえ出来ないだろ。正直、もう長くはないだろうな。薬で体を誤魔化し続けているだけさ。」
彼は少しおどけたような語調で続けた。
「だけど、もうこうなったら仕方がないのさ。映画を見たり、小説を読んだりして最期の時間を過ごすことにするよ。タイムリミットがあるから案外充実した時間になるかもしれないな。」
彼は先ほどまでの語調に戻した。
「だから、もう大丈夫。何も心配することはないよ。」
「私」は黙ってベッドの男を見つめていた。その表情は沈む直前の夕日に隠れて見えなかった。それから少しの間、夕闇に世界が包まれるまで、ただヒュウヒュウと風の音だけが遠く聞こえた。
夕暮れの沈黙を破ったのは「私」だった。
「あなたは私があなたの為にここに留まっていると思っているようだけど、それは違うわ。私は他ならぬ私自身の意思でここにいるのよ。私がここにいる理由はあなたとこの場所が好きだから。ただそれだけよ。」
その時、陽は完全に沈み、深い茜色だった「私」のシルエットはほんの少し茜色を残した黒色に変化した。夜が始まったその時「私」の口角は微笑んでいるのか、僅かに上がっていた。
「ああ。理由はもう一つあったわ。寒空の下、知らない人達と人生最期のヴァカンスなんて願い下げだわ。」
一瞬間を開けて、二人は揃って笑った。
そうして、満月と無数の星々と共に、夜の帳は下りていく。久しぶりに雲の無い夜で、今宵はたまたま満月だった。陽が落ちると、部屋は一気に暗くなり、天井に付けられている照明がひとりでについた。「私」は照明の眩しい光に目を細めながら、「アロエ、照明をオフにして。」と言った。すると照明がフッと消えて、月明かりが窓際から差し込んでくる。
「私」は、いや、そこにいる二人は同じ月を見ているような気がした。
しばらく沈黙が続いた後、「私」は彼に向かって呟いた。
「今夜は月が綺麗ですね。」
彼はひと呼吸置いて、「私」の言葉に応えた。
「死ぬにはいい夜ですね。」
「私」は少し気恥ずかしいように、また哀しそうに、ロッキングチェアから立ち上がった。そしてベッドに近づき、彼のほうを覗き込んだ。「私」と彼の様子はベッドに隠れて見ることが出来なかった。彼らは静かで、月明かりで白く照らされた一つの塊のようだった。
それから少しした後、「私」は彼から離れ、ベッドの側のロッキングチェアに前かがみになって再び座った。今度は椅子を揺らさず、ただ彼を見ていた。
不意に彼が言った。
「僕は今夜中に死ぬだろうな。手足に力が入らないし、体の先のほうから寒くなってきた。」
「……変な冗談は止めてよ。」
「……冗談ならいいんだけどなぁ。……残念だけど病気はとっくに末期なんだよ。……医療技術がここまで発展していなかったら、今頃火葬されて灰になってるような状態だよ。」
「私」はここに来て、始めて激しく動揺していた。
「いや。そんなの絶対にいや。私を置いて行かないでよ。お願いだから私を一人にしないでよ!あ、アロエ何とかならないの!?」
ベッドの脇に置かれた円筒状の小さな物体が音声を出した。
「残念ながら、もうどうすることも出来ません。」
「私」は深く落胆したように頭を抱えた。
「……しょうがない。寿命というやつさ。……君だってそうは変わらない。……僕が少し早く逝くだけさ。」
私は重いものを持ち上げたように頭を上げた。
「そんなのわかってるわ。だけど、どうせならあなたと一緒がよかった。……独りはいや。」
「……それは僕も同じさ。……残念だよ。……僕が死んだら、死体は部屋の前の紫苑の花壇に埋めて欲しい。……いつかきっときっと綺麗な花を咲かせるだろう。……出来れば君に見て欲しかったけど、それは無理そうかな。……そうだ……これは言ったかな……紫苑の花言葉は…………。」
それから彼は黙ってしまった。「私」が彼を揺さぶっても、彼が再び言葉を発することはなかった。
彼は死んでしまったのだ。
「私」は月が空の果てに消えるまで彼の胸の上で泣き続けた。再び日が昇る頃には泣き疲れて穏やかな寝息を立てていた。
私は今まで見られなかった彼の顔を見ることにした。彼の存在こそが私の失われた過去の最後のピースなのだ。
私はベッドのロッキングチェアがない側から彼の顔を覗いた。
そこには懐かしい、そしてなぜ忘れていたのかわからないほどに愛おしい人がいた。すると、頭の霧が晴れて、彼と過ごした時間を思い出した。そして理解した。これが二回目の別れであるということに。久しぶりの再会で最期の別れだということに。自分のいる世界に彼はいないということに。
さようならのキスをしよう。そこにあなたはいないけれども。さようなら。さようなら。もう会うことは無いでしょう。
彼に別れを告げた後、再び世界は揺らいで、私は現の世界に帰ってきた。目の前には先ほどの花いや、紫苑が咲いていた。もう一度その匂いを嗅ぐと、今度は先ほどと同じ涼しい香りと共に懐かしい香りもした。この懐かしさはなんだろうか。嗚呼そうだ。花に囲まれた庭の中で、なぜか彼からは紫苑の涼しい香りがしていたのだ。
そうか、彼はもう一度私に会いに来てくれたのか。ありがとう。私の所に帰ってきてくれて。
そして、私は再び彼にキスをした。
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