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第三話
しおりを挟む「先ずは君の部屋だが…先ほど君が寝ていた部屋を使ってもらう。」
そういいながら、コルノはプロトに屋敷を案内する。
大雑把な間取りの説明をすると、使用人室のようなものが5部屋と厨房と食堂と家主であるスーの大部屋と客室が2部屋と訓練に使う道場のような部屋と執務室と談話室と厠と風呂があるようだ。
小さ目の屋敷なのだが、こう聞くと結構な大きさがあるんだな。
そう考えながら聞いていると、コルノは更に説明をつけ足していく。
使用人の部屋は、プロトが寝ていた部屋とコルノとバルの部屋、食堂で通いで働く人が万が一帰れなくなってしまったとき用の部屋と空室が1つな事。
倉庫は屋敷から本当に少し離れた所にあることなど。
屋敷からでたコルノの後に続いてプロトも外に出る。
小さ目の小川を沿うように木で舗装された道を少し進むと大きめの川にぶつかった。
そこには安全のための柵と小さ目の棚のようなものがあり、説明される前だが何となく何をする場所か察する。
「これが最後の説明かな…お察しの通り洗濯はこの川ですると良い。
我々使用人は勿論、姫の衣類もここで洗っているけど…姫の衣類は私かバルかやるから気にしなくていい。
君も一応男だ、意識の有無に関係なく異性の衣類や匂いは気にするものなのだろ?」
「一応は余計だ。
あんな小娘の下着で一々ムラムラするかよ。」
プロトの対応に口元に手で抑えてクスクスと堪えるように笑うコルノ。
完全に遊ばれている。
舌打ちをした後にバツの悪い表情をしていると後ろから殺気を感じた。
コルノが余裕そうにしている時点で誰かは察している。
「貴様ぁ…私の可愛いお嬢様をあんな呼ばわりとは…。
この地にいるどの姫よりも麗しいあの方を…目に入れても痛くないあの方を…!!」
お前はいつも俺の後ろにいるな。
ため息をつき心の中でそう呆れながらプロトはゆっくりと振り向く。
プロトの後ろにいたのは、額に青筋を浮かばせ見下ろすように睨みつけるバルだった。
余りにも気合をいれた睨みっぷりの彼女は白目をむいている。
「感想や思いは人それぞれで自由だ、てめぇの意見を一々他人に押しつけてんじゃねーよ。」
「ヤンキーみたいな振る舞いをしている割には、随分とまともなこと言うんだね。
感心感心。」
プロトの言ったことにウンウンと頷きながら、スーは歩いてきた。
舗装されているとはいえ、目を隠している状態で歩くような所ではない。
「おい、目が見えねーのにチョロチョロしてんじゃねーよ。
部屋で大人しくしてやがれ。」
プロトの一言に更に腹をたてたバルはその巨体の足を進めようとしたが、またもコルノに止められる。
「はっはっは、オイラは目隠しをしているが何も見えない訳ではないのだ!」
えっへんと胸を張るスーに対して大きなため息をついたプロトは、ノソノソとスーの近くまで近づいて右脇で抱えるとスーの部屋に向かってゆっくりと歩き出す。
スーは完全に悪さをした子供のような姿になっている。
「冗談はその一人称だけにしておけよ小娘。
今どき下町のガキでも使わねーぞ、その言葉。」
「そんな細かい事いーじゃないか!
仮にも男なら紳士的対応しておくれよぉ!」
プロトは、空いている左手でスーのつむじを少し強めにウリウリと擦る。
大分加減はしていると思うが、ソコソコに痛いだろう。
「一々仮なんてつけてんじゃねーよ、ボケ。
テメェは、紳士を都合よく解釈しすぎだ。
夢や妄想は寝てる時だけにしておけ。」
「ちょっとした、じょーくってやつだよ!
いいじゃない、少し和んだんじゃないのかいこの空気!」
部屋まで連行しようとしたが、いつのまにか回り込んでいたコルノに道を阻まれた。
敵意や悪意は特になく止まれと言わんばかりに掌を前に突き出して立っている。
「イチャイチャするのは、そこまでにしてもらおうか。
プロト、君には姫の御勤めの付き添いで近場の村まで行ってもらおう。
なに、暴漢からの護衛や荷物持ち以外の業務がないほぼついていくだけの簡単な仕事だ。
できるね?」
嫌とは言わせないと言わんばかりの圧をコルノから感じる。
少なくとも一宿一飯の恩はあるから圧をかけなくてもそれくらいなら断る気すら起きないのだが…。
何より素性がよく分からない初対面の男に主人の護衛を任せてもいいのか?
などと他にも色々な考察がプロトの頭をよぎったが、考えてもキリがない。
めんどくせぇ…。
その一言で思考を停止するとゆっくりとスーを地面に下ろす。
「丸腰でもあれだし…刀とかあったっけ?」
「ぁあ、いらねーよそんなもん。」
スーはコルノに視線を送るが、プロトにパシャリと止められる。
2人はえっと驚いた顔でプロトを見るが…プロトの対応は変わらない。
「必要になれば調達できる。
そこら辺の雑魚くらい素手でも十分だ。
ほら、暗くなっても面倒ださっさと行くぞ。」
コルノは不思議そうにプロトを見たが本人がそれでいいのなら仕方ない。
別にスーも戦えない訳ではないから、問題ないか。
そう考えながらコルノは、2人の背中を見送った。
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