コバナシ

鷹美

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第4話 

第4話 16

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ベンチで待っていると、そんなに待たずに蓮達が帰ってきた。


「待たせてすまんのぅ。
トーロが遊郭で長々と捕まってしまってな。」

「いい男ですまないな、籐麻。」



疲れきっている蓮を他所にトーロはなんだが嬉しそうな表情をしていた。

黙ったいたが、遊郭については籐麻は知っている。
長身で筋肉があって男前ならオカンな性格でもさぞモテるだろう。

へっと擦れた笑いをしていると、トーロは少し驚いた様子で籐麻に近づいた。


「籐麻…おまえ、怪我してるじゃないか。
この様子だと喧嘩でもしたのか?」


ノシノシと籐麻に近づいて手当てされた箇所を見る。
蓮も心配している様子だったが遊郭での気疲れがあるのかやや反応は遅かった。



「とりあえず、大した怪我じゃなさそうだな。
手当ての質も良いし、問題はなさそうだが…痛みが続くようなら医者にでも見てもらうといい。

…ん?」


トーロは籐麻の肩から何かを摘みとった。
トーロの指から見えるのは黒い長めの癖っ毛でどうみても猫や犬ものではない。
毛も柔らかめで男ではないだろう。

それを察したのかトーロは、何かを察してニヤニヤと笑い始めた。



「なんだ、籐麻も隅に置かないじゃないか。
絡まれた女の子でも助けたのか?」

「違う、探索してたら遊郭付近で絡まれたんだ。」


トーロに咄嗟にそう返した籐麻だったが…女の子と一緒ではないと否定はしていない。
それに反応したのは他ならぬ蓮だった。

先程の疲れ切った表情と動きが嘘のような過敏さで籐麻の側まで近づいていた。



「なるほど…籐麻は、遊郭に着くまでは女の子と一緒だったのじゃな?
ほーーーう。」



椿は母親似だと思っていたが…父親の血も大分影響があるようだ。

変に話さないで養分を与える方が面倒くさそうだな。
そう判断した籐麻はこれまでの経緯を素直に話した。


シュリとの出会い。

シュリと花街を散策したこと。

遊郭にて侍に追われて交戦。

剣士が話した追われた理由。

結局、シュリの保護者に助けられたこと。



「なるほど…なるほど…。
剣士から得た情報はお手柄だぞ籐麻。

長居は良くなさそうだ、ワシらも離れるか。」



ふざけた雰囲気をぶった斬って、蓮はトーロに誘導を任せて花街の脱出を目指す。
花街からある程度離れた後に、キョロキョロと辺りを見回した。




「…どれ、2人とも…花街で最初に見た光景は忘れていないな?」

「…忘れてないさ。
いよいよか?」


トーロがニヤリと笑うと、蓮はコクリと頷く。
ついていけてない籐麻にトーロはウキウキとした表情て教えてくれた。

狩り人に攫われた人を助ける…と。

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