コバナシ

鷹美

文字の大きさ
上 下
103 / 151
第3話

第3話 20

しおりを挟む


「こんな大騒ぎして誰か来るかもしれないと君は考えなかったのかい?」


狩り人が降って来た上の方を眺めると、建物屋根の上に立った優の姿があった。
八尺瓊を右手に握り狩り人のリーダーを見下ろしている。

頼みの綱だった仲間もダメだったショックのせいなのか、狩り人のリーダーはその場で気絶してしまった。

あっけない。
ため息をついた優はそのままコルノの横を目掛けて飛び降りる。


「君がスーの仲間かな?
仲間と娘を助けてくれてありがとう。」

「こちらこそ、我が主をここまで保護せていただいてなんとお礼をいえば…。」


コルノと優はそういうと握手を交わした。

楓が、コルノの口にした”主”という言葉を聞き逃すわけもなくスーを疑いの目でジーっとみる。
男は、スーをひょいと片手で抱えるように抱っこした。


呆れたような表情をうかべる。


「嬢ちゃん、何も話してなかったのか。」

「私が正体を明かさないように言ったんだ。
ただでさえ視力に頼れないから、可能な限り向けられる悪意は少なくしたいからね。

ここで立ち話するような話でもないし、私が泊る部屋に来てくれないかな?
お茶かお酒でももてなしたい。」


コルノにそう促されて、一行は宿に向かう。

コルノがとった宿の部屋は大きく優達が全員入っても問題なかった。

部屋の窓からは、港町を一望でき眺めは最高だ。
スーを見つけやすいように一番景色が見えるこの部屋をとったようで、結果論だがよかったとコルノは話す。

全員に飲み物が行きわたると、コルノは話を始めた。


「まずは自己紹介をしよう。
私はコルノ、そこの赤髪は”トーロ”で樹海を管理する一族であるスー様のか家臣だ。

我が主をここまで保護していただいてありがとう。」


コルノはそういうと、優達に向かって深々を頭を下げた。
コルノの横にいるトーロもスーの頭に手をやってスーとコルノと一緒に頭を下げている。


樹海の管理?
始めて聞く話だったが、コルノはすぐに補足した。


磁場の関係で自殺の名所と言われているが、主にその自殺者の保護や樹海に住む凶暴な動物の駆除を生業としているらしい。
自殺者ではないが、国を追われてさ迷っていたコルノやトーロが保護された人間の1人だそうだ。



「やっていることはわかった。
でも…そんな立派な事をしているんだ、もっと世間に名が知れ渡ってもいいと思うんだけど。」


優の質問に言葉を探すように悩むコルノ。
すると、スーは立ち上がり目隠しを外して瞼を開いて金色の瞳を優達に晒した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚
ファンタジー
にゃんこ大好きな私はいつの間にか乙女ゲームの世界に転生していたようです。 しかも、なんと悪役令嬢として転生してしまったようです。 どうせ転生するのであればモブがよかったです。 この乙女ゲームでは精霊の卵を育てる必要があるんですが・・・。 精霊の卵が孵ったら悪役令嬢役の私は死んでしまうではないですか。 だって、悪役令嬢が育てた卵からは邪竜が孵るんですよ・・・? あれ? そう言えば邪竜が孵ったら、世界の人口が1/3まで減るんでした。 邪竜が生まれてこないようにするにはどうしたらいいんでしょう!?

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi
ファンタジー
前世は日本で超絶貧乏家庭に育った美樹は、ひょんなことから異世界で覚醒。そして姫として生まれ変わっているのを知ったけど、その国は超絶貧乏王国。 美樹は貧乏生活でのノウハウで王国を救おうと心に決めた! ※エブリスタさん版をベースに、一部少し文字を足したり引いたり直したりしています

女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ
ファンタジー
目の前に、女神を名乗る女性が立っていた。 麗しい彼女の願いは「自分の代わりに世界を見て欲しい」それだけ。 使命も何もなく、ただ、その世界で楽しく生きていくだけでいいらしい。 厳しい異世界で生き抜く為のスキルも色々と貰い、食いしん坊だけど優しくて可愛い従魔も一緒! 忙しくて自由のない女神の代わりに、異世界を楽しんでこよう♪ 13話目くらいから話が動きますので、気長にお付き合いください! 最初はとっつきにくいかもしれませんが、どうか続きを読んでみてくださいね^^ ※お気に入り登録や感想がとても励みになっています。 ありがとうございます!  (なかなかお返事書けなくてごめんなさい) ※小説家になろう様にも投稿しています

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

処理中です...