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第3話
第3話 6
しおりを挟む一方、残った楓はスーの指示に従った。
楓は、空に周りの人達をお願いとだけ告げると医者の方に向かって走り出す。
「誰か、蓮様にしらせる狼煙をお願いします!
あと今から医者がくるので、怪我人以外は道を開けてください!
後は、血が出てる人がいれば誰か止血するものを…。」
倒れてはいたが、空もスーの話を聞いていたようでピオと一緒に立ち上がると指示を出し始めた。
ピオは、目を見開くと急に走り出して倒れる前に見た子供の側まで走りだした。
空の静止も間に合わず、ピオは子供の側まで移動すると膝を折って話しかける。
「怪我はどこかしら!」
腕を捲り、今までのネットリした喋り方ではなくハキハキとした聞き取りやすい声でピオはそう話した。
必死になりながらも、怪我をしている場所を探していたようで教えられなくても直ぐに怪我を見つける。
怪我をしていたのはどうやら女の子のようで、褒められることではないが…沢山いる人の流れの中で男は見事に弱者を選んで刺していたようだ。
「どうしてこんな酷い事をっ…!」
ピオは、怒りと悔しさで顔を歪ませながら怪我の状態を見る。
不幸中の幸いなのか、刺されたのは腕で動脈になどに当たらなかったようだ。
そして、蓋をするようにナイフは刺さったままだった為に出血は酷くない。
「…痛いけど、我慢してね。」
ピオは、腰にあるポーチから麻酔と消毒液と包帯を取り出して応急処置を施す。
麻酔を打った後に刺したままのナイフを一気に抜き、直ぐに消毒液をかけて包帯で止血。
かなり手早い処置だったようで女の子が痛みで悲鳴を上げた様子は無かった。
「これで、大丈夫。
後は完全に血が止まるでなるべく手を頭の上にあげてね、お姉さんとのお約束。」
ピオは、ふぅ…と汗を拭うと普段のようなねっとりとした喋り方に戻る。
ピオの処置が完全に終わった頃に、楓と一緒に医者がやってきた。
怪我は、ピオが手当した女の子だけのようで他に怪我人はいないようだった。
ピオが手当した女の子も一応、楓が連れてきた医者も診た。
消毒も止血も見事だったようで医者も驚いていて、一緒に働いてくれとまで言われている。
「あら、そんな色気のないナンパはお姉さんはお断りするわぁ。
今回に関しては、たまたま道具がそろっていただけの話だものそんなお誘いをうけるほどのものでもないでしょう。
それに、どこかに留まって医者をするのはお姉さん合わないわ。」
ピオの答えに、医者は少し残念そうにすると気が変わったら何時でも来てほしいと言って帰っていった。
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