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第二話
第二話 1
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東野をでた護一行。
名前や役職、和国の民としての身分を手に入れた藤麻は今後起こることに期待と不安が混じったような気持ちでいた。
守護者の修行を経て立派な守護者か兵士になる自分の姿。
失敗して没落する自分の姿。
はたまた、実は騙されていてそのまま殺される自分の姿。
そんなイメージが頭でグルグルと回っていると、椿が自分の左手を握ってくる。
嫌なわけではないが、自分だって幼子ではない。
やんわりと断っているのだけど…。
「籐麻は、生まれた場所の思い出とかあるの?
金髪だから…実はエルトリアだったりする?」
椿は、楽しげにそう言う。
籐麻はウーンと考えたが、思い出せない。
思い出して出てくるのは、風除けとかない物置き以下の部屋に放り込んだ男達や。
盗みを働くように指示を出す女達。
そして、今回のように侍や兵士の身分をにやると言ってきた身なりの良い人たち。
ロクな思い出はない。
「特にないかな…、物心ついた時からこんな生活だった気がする。」
いらん事を聞いてしまった。
そんな事を思ってしまった椿は、しまったと言う表情を浮かべる。
そこに豪快に笑う剛が右手で籐麻を左手で椿の頭をグリグリと撫でる。
「優から聞いているぞ、籐麻は四大を使えるそうではないか。
籐麻のあの脚力は間違いなく肉体特性。
エルトリア人は四大が使えんし、肉体特性がないから籐麻は立派な我が同胞よ。
それに昔の思い出も、本人が覚えとらんなら大したものでもなかろう。
これからの思い出を大切にするといい。
それに金髪はいいぞぉ。
強者は大体…金色だからなぁ。」
すごいいい話をしてる筈なのに、最後の発言で台無しだな。
人の不安に敏感で素早くフォローができるのに、締まらないのは剛の悪いところか…。
そんな話を背中で聞いていた護は、呆れたように笑った。
「おいおい、東野から和国は短いとはいえ気を抜くでないぞ。
東野で結構痛い目に見ておるのだからな。
…って優は聞いてあるのかの?」
蓮は、はしゃぐ剛と子供達にそう言った後に優の方を見た。
彼は、満足そうに一冊の本を見ている。
東野で土産を見ることができなかった優に対して、東が代わりに渡したものだ。
エルトリアの本。
衣類に関するものらしい。
昔、岬が東を訓練から遠ざける為に片っ端から買った本の一つらしく…本でよければ譲ると言われて優が見つけたものだ。
エルトリアの文化や技術に関心のある娘にとっては、最高のお土産になるだろう。
「聞いているさ、周囲の警戒は怠ってないよ。
しかも、ほらもう…関所がみえる。」
優は、視線を本から離し目の前を指さした。
木と煉瓦と多少の粘土で作った昔ながらの堅牢な関所が見える。
抜け目のない男だ。
蓮は、少し老けたような気持ちで優の言葉を耳にいれる。
名前や役職、和国の民としての身分を手に入れた藤麻は今後起こることに期待と不安が混じったような気持ちでいた。
守護者の修行を経て立派な守護者か兵士になる自分の姿。
失敗して没落する自分の姿。
はたまた、実は騙されていてそのまま殺される自分の姿。
そんなイメージが頭でグルグルと回っていると、椿が自分の左手を握ってくる。
嫌なわけではないが、自分だって幼子ではない。
やんわりと断っているのだけど…。
「籐麻は、生まれた場所の思い出とかあるの?
金髪だから…実はエルトリアだったりする?」
椿は、楽しげにそう言う。
籐麻はウーンと考えたが、思い出せない。
思い出して出てくるのは、風除けとかない物置き以下の部屋に放り込んだ男達や。
盗みを働くように指示を出す女達。
そして、今回のように侍や兵士の身分をにやると言ってきた身なりの良い人たち。
ロクな思い出はない。
「特にないかな…、物心ついた時からこんな生活だった気がする。」
いらん事を聞いてしまった。
そんな事を思ってしまった椿は、しまったと言う表情を浮かべる。
そこに豪快に笑う剛が右手で籐麻を左手で椿の頭をグリグリと撫でる。
「優から聞いているぞ、籐麻は四大を使えるそうではないか。
籐麻のあの脚力は間違いなく肉体特性。
エルトリア人は四大が使えんし、肉体特性がないから籐麻は立派な我が同胞よ。
それに昔の思い出も、本人が覚えとらんなら大したものでもなかろう。
これからの思い出を大切にするといい。
それに金髪はいいぞぉ。
強者は大体…金色だからなぁ。」
すごいいい話をしてる筈なのに、最後の発言で台無しだな。
人の不安に敏感で素早くフォローができるのに、締まらないのは剛の悪いところか…。
そんな話を背中で聞いていた護は、呆れたように笑った。
「おいおい、東野から和国は短いとはいえ気を抜くでないぞ。
東野で結構痛い目に見ておるのだからな。
…って優は聞いてあるのかの?」
蓮は、はしゃぐ剛と子供達にそう言った後に優の方を見た。
彼は、満足そうに一冊の本を見ている。
東野で土産を見ることができなかった優に対して、東が代わりに渡したものだ。
エルトリアの本。
衣類に関するものらしい。
昔、岬が東を訓練から遠ざける為に片っ端から買った本の一つらしく…本でよければ譲ると言われて優が見つけたものだ。
エルトリアの文化や技術に関心のある娘にとっては、最高のお土産になるだろう。
「聞いているさ、周囲の警戒は怠ってないよ。
しかも、ほらもう…関所がみえる。」
優は、視線を本から離し目の前を指さした。
木と煉瓦と多少の粘土で作った昔ながらの堅牢な関所が見える。
抜け目のない男だ。
蓮は、少し老けたような気持ちで優の言葉を耳にいれる。
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