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外伝 東野
外典 東野10
しおりを挟む東は、仲間の反対を押し切るような形で城の正面に向かう。
東を守るように左近、後ろには大介、そして左側には右京が立っている。
1番ゴネていた右京は、敵が構える場所が見えると覚悟を決めたように頬を叩く。
「やっと覚悟を決めたのか?」
「ほっとけ、兄者と比べて俺は慎重なの。」
揶揄うように笑う左近に、唸るように右京は言った。
左近も右京も軽口なやりとりをしていたが…周囲の警戒は怠ってはいない。
「余だ。
帰ってきた、扉を開け。」
覇気のある声を東が響かせると、城の入り口がゆっくりと開き兵士が出てきた。
兵士は普段通りに東を領主の部屋まで案内する。
領主の部屋には、小次郎が立っていた。
侍の誇りである髷とやや膨よかな体、岬から貰った刀に水を入れている小さな瓶が腰にぶら下がっている。
「おぉ、ご無事でしたか東様。」
わざとらしく、小次郎はそう言った。
彼は大介や左近達と違い、跪くこともなく手を広げている。
まるで自分は対等な立場だと言わんばかりの態度だ。
右京、大介はともかく冷静で落ち着いている左近もその姿にピクりと苛立ち混じりで眉を動かしている。
「ぁあ、この者達のおかげでな。
何やら謀反が起きたそうじゃないか?
戦えない使用人達は無事か?」
「ぇえ、無事ですとも。
兵に守られながら、客間にて避難させています。
あとは、この争いの元を抑えるのみ。」
小次郎がパンパンと手を叩くと、小次郎に従う侍が3人現れた。
完全に従っている者がこの3人だけだったのか、それとも領主の座を奪ったときに配置する守護者を指しているのか。
そんなのは、東にとってどうでも良く寧ろ知りたかった結果が知れて良かったとさえ思っていた。
「お前、父上の死をしっているな?」
「ぇえ、知っていますとも。
ついでに貴方も亡くなってくれていたらもっと楽だったのですが…。」
小次郎のその一言に我慢が出来なかったようで、大介が無礼者と大きく叫んだ。
その様子を小馬鹿にしたように笑った小次郎は、ゆっくりと刀を抜く。
あくまでも自分が優位だと信じているようだ。
「まずは、邪魔な周りの人間を排除しろ。
東は…ワシが相手する。」
小次郎にそう命令された侍達は、大介達に向かって行った。
大介達は、心配そうに東を見たが…東が応戦するように指示を出すと東から少し離れるような形で小次郎の侍達の相手を始める。
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