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第十五話
第15話 10
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「…どちらに?」
「…再び身を潜める。
ただ、それだけだよ…ティア君。」
ニースは、そう言うと王座のような形をした鍾乳洞にドシンと座る。
ティアは、駆け足でニースの側までいく。
「どうしたんです!?
傷が癒えたのなら、行動しましょう?
貴方は、人間側の最大戦力の一人で希望なんですよ?
人類最大の砦じゃないんですか!?」
「それは、昔の話と言うものだよティア君。
今は…獣の呪いを受けて力の一部を封じられている。
色欲なんて可愛いものではない。」
ニースは、力なく手を開く。
そして、疲れ切った笑みでティアを見る。
「能力の行使する事自体は、なんら問題はない。
ただ…何も感じなくなるのだ。
前も後ろも見えない。
先程感じていた温度も、汗が流れる感覚も。
気配ですら、何も掴めないし…音も聞こえない。
集中すればするほど、私の感覚は闇に消えていく。
短期決戦であればと、私も考えた。
だが…近くにいる仲間が私をかばい、死んでいく。
助けを呼ぶ声も、仲間が死ぬその直前もわからず…。
守れるものだっていただろう…。
私を守らなかったら生きれたものもいただろう。
今では…仲間も僅かだ。
仲間…と呼ぶには、相応しくないかもしれないがな。
私は、疲れたのだ。」
「そうやって、無駄に時間を潰しているのさ。
この男はな。」
声がする方を見ると、騎士団の鎧を着た男がいた。
兜まですっぽりかぶって素顔は見えない。
水の探知では確かに人間なのだが…騎士団の人間が王に対してする言葉づかいではない。
「貴方は?」
怪訝そうな表情で、ティアは男を見る。
男は、肩を竦めて笑う。
「美人のその表情もまた、堪らないが…。
まぁ、いいや。
今の俺には名前がない。
変態とスケベ以外でなら、好きに呼んでくれ。」
「…じゃぁ、不審者。」
不審者と呼ばれた男は、がっくりと肩を落とした。
その発想はなかったと。
そして、ティアは直ぐに手を伸ばした。
勿論、男はそれを阻止するように仮面を抑える。
「…ねぇ、その兜を外して。
もし、私たちの味方だというのなら。」
「断る、前の戦いで負った怪我のせいで人に見せられる顔ではなくなんたもんでね。
コンプレックスなんだ、勘弁してくれ。」
不審者の言葉に渋々だったが手を離した。
敵だったら、油断などせず気がつく前に攻撃を仕掛けているだろうと。
そして急に抱きしめられて、移動させられたかと思うとそこには武器を振り下ろしていたカナがいた。
「みんなは…自分が…護る!!」
ニースが肉体を回復させたせいだろう。
脳が疲労して考えが定まっていないようだ。
ティアが不審者を睨んでいた事もあり敵だと思ってしまったのだろう。
「なーに寝ぼけてるんだか。」
そして、ティアを抱えたまま高く後ろに跳躍して避ける。
「…え、この感じ…。」
「風よ。」
“エアショット”
不審者は、右手を振って風の弾を放つ。
カナは、それをキーウエポンで弾くとキーウエポンを合わせる。
「動け、インフィニティ!」
その動作から、一瞬だった。
不審者は、カナがインフィニティを完全に起動させる前に後ろに回り込んでいる。
抱かれていたティアも気がついていない。
そして、右手でカナの首の裏を掴んで微弱な雷を流した。
「…まぁ、スタンガンみたいなものだよ。
怪我はしてないら治癒は必要ないさ、また変に暴れられても面倒だしね。」
「…再び身を潜める。
ただ、それだけだよ…ティア君。」
ニースは、そう言うと王座のような形をした鍾乳洞にドシンと座る。
ティアは、駆け足でニースの側までいく。
「どうしたんです!?
傷が癒えたのなら、行動しましょう?
貴方は、人間側の最大戦力の一人で希望なんですよ?
人類最大の砦じゃないんですか!?」
「それは、昔の話と言うものだよティア君。
今は…獣の呪いを受けて力の一部を封じられている。
色欲なんて可愛いものではない。」
ニースは、力なく手を開く。
そして、疲れ切った笑みでティアを見る。
「能力の行使する事自体は、なんら問題はない。
ただ…何も感じなくなるのだ。
前も後ろも見えない。
先程感じていた温度も、汗が流れる感覚も。
気配ですら、何も掴めないし…音も聞こえない。
集中すればするほど、私の感覚は闇に消えていく。
短期決戦であればと、私も考えた。
だが…近くにいる仲間が私をかばい、死んでいく。
助けを呼ぶ声も、仲間が死ぬその直前もわからず…。
守れるものだっていただろう…。
私を守らなかったら生きれたものもいただろう。
今では…仲間も僅かだ。
仲間…と呼ぶには、相応しくないかもしれないがな。
私は、疲れたのだ。」
「そうやって、無駄に時間を潰しているのさ。
この男はな。」
声がする方を見ると、騎士団の鎧を着た男がいた。
兜まですっぽりかぶって素顔は見えない。
水の探知では確かに人間なのだが…騎士団の人間が王に対してする言葉づかいではない。
「貴方は?」
怪訝そうな表情で、ティアは男を見る。
男は、肩を竦めて笑う。
「美人のその表情もまた、堪らないが…。
まぁ、いいや。
今の俺には名前がない。
変態とスケベ以外でなら、好きに呼んでくれ。」
「…じゃぁ、不審者。」
不審者と呼ばれた男は、がっくりと肩を落とした。
その発想はなかったと。
そして、ティアは直ぐに手を伸ばした。
勿論、男はそれを阻止するように仮面を抑える。
「…ねぇ、その兜を外して。
もし、私たちの味方だというのなら。」
「断る、前の戦いで負った怪我のせいで人に見せられる顔ではなくなんたもんでね。
コンプレックスなんだ、勘弁してくれ。」
不審者の言葉に渋々だったが手を離した。
敵だったら、油断などせず気がつく前に攻撃を仕掛けているだろうと。
そして急に抱きしめられて、移動させられたかと思うとそこには武器を振り下ろしていたカナがいた。
「みんなは…自分が…護る!!」
ニースが肉体を回復させたせいだろう。
脳が疲労して考えが定まっていないようだ。
ティアが不審者を睨んでいた事もあり敵だと思ってしまったのだろう。
「なーに寝ぼけてるんだか。」
そして、ティアを抱えたまま高く後ろに跳躍して避ける。
「…え、この感じ…。」
「風よ。」
“エアショット”
不審者は、右手を振って風の弾を放つ。
カナは、それをキーウエポンで弾くとキーウエポンを合わせる。
「動け、インフィニティ!」
その動作から、一瞬だった。
不審者は、カナがインフィニティを完全に起動させる前に後ろに回り込んでいる。
抱かれていたティアも気がついていない。
そして、右手でカナの首の裏を掴んで微弱な雷を流した。
「…まぁ、スタンガンみたいなものだよ。
怪我はしてないら治癒は必要ないさ、また変に暴れられても面倒だしね。」
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