Nora First Edition

鷹美

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第十四話

第14話 31

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アイクが目にしたものは、アイクにとってあまりにも残酷なものだった。

暗い部屋で顔は見えないものの長い赤髪をした小柄な女性が全裸の状態で壁に手をついて屈んでいる。
その後ろには、白い獣が愉快そうに腰を振っていた。


リズミカルな音と悲痛な声が部屋に響いていた。



「狂い桜はいいねェ。

さっきまで、勇ましかった女も今じゃ…雌ブタだヨ。
薬が回るまでの苦しい声も捨て難いが…やっぱりこれだよなァ。

そう思わないカ?
なぁ…人間。」


白い獣がそう言うと、白い獣と赤髪の女は一緒に体を震わせると動きを止めて少しして白い獣が女から離れた。

白い獣は服装を整えながらフリーズするアイクに向かい部屋の明かりで自分が照らされた所で足を止める。



「随分と愉快な顔をしているなァ。

新婚だったかァ?
ハハハ、ご馳走さン。

お前のメス、俺が貰うから…安心して死んでくレ。」



アイクは、何も考えていなかった。
いや、考えられなかった。

燃え上がるくらい頭が熱くなり、真っ白になる。


気がついた考えるよりも早く、キーウエポンを起動させて体をかける。



“体の7段”



振り下ろされたキーウエポンを白い獣は、それを腕でいなす。


白い獣の両手には手甲がつけられていた。


「俺は“シロ”。
新米だが隊長の1人ダ。

そして、お前から全てを奪い…殺す男の名前ダ。」


「俺は、アイク。
別に覚えなくていい。

直ぐに意味がなくなる!」



“技の1段”



マシンガンのように連続で放たれる火の玉をシロは両手の手甲で素早く弾いていく。




「あいおいおイ!!

でかい口を開いて、その程度カ?
笑わせる、戦士より芸人目指した方が向いてるんじゃないのかァ!?」



“技の2段”


アイクは、氷の大きな弾を放つ。
シロはそれを、右ストレートで殴ったがシロが砕いた弾は爆弾のように炸裂すると細かい粒子になってシロに追撃をする形で襲いかかる。




シロは咄嗟に下がり、腕を交差させて防ぐがダメージを完全に防ぐ事はできなかった。



そして、アイクは攻撃の手を休めない。


“技の3段”



アイクは、地面に向かって風の弾を撃つとサヤと同じように風を纏い進む。



“技の4段 インパクト”

“技の4段”


キーウエポンの銃口に雷を溜めてそれでシロを殴った。
手甲のガードなんて無意味。

感電して力が抜けた所を追い撃ち。


放たれた3発の雷の弾は、シロを正確に撃ち抜く。


だが、流石の隊長と言ったところだろう。
直ぐに体勢を整えて、アイクに向かってきた。


「…威力が足りんか。」


アイクは、銃形態のキーウエポンの銃口に素早く強化パーツを装填。


“技の一段”


すると、グレーズのような砲弾がシロを包んだ。
シロは手甲でガードしたようだが裏目に出てしまっている。


そして、強化パーツを外して剣形態にキーウエポンを変型させ、攻撃を防いだ反動で隙だらけのシロを貫く。


シロは、直ぐにアイクを蹴り飛ばして息を整えた。



「…はぁ…はぁ…、ハハハ。
こんな事なら、ジーさんに傲慢を返さなちゃ良かったナ。

死にそうになるのは、久しぶりダ。」

「死にそうじゃない。
死ぬんだよ…お前は!!」


アイクは走り出したが、急に動きが止まる。
いや、動けなくなった。



体は動かなくても視線は動く。



「体の神経を麻痺させる毒ガスダ。

吸いすぎると、体が硬直し…最終的には硬直が脳にまで到達して死亡。

面白い事に獣人には効果ないし、中毒者も毒ガスが無いところにいると簡単に自然治癒する上副作用とかないんだとヨ。」



クロはそう言うとスタスタと、出口まで移動する。
そして、入口でクルッと周りアイクに向き合う。


そして、カプセル状の薬を飲み込むと凄い勢いで怪我を治癒した。


そしてゆっくりとアイクに手を振る。



「遊びとはいえ、俺に深手を負わせたのは褒めてやル。
だから、ご褒美ダ。

妻は返してやるヨ。
…あの世で幸せに暮らせよナ。
じゃあな…“アイク”。」



シロはそう言うと、何かのスイッチを押してスタスタと部屋を離れていく。
ゴリゴリとゆっくりと、部屋の天井が落ちてきた。



ゆっくり降りているのは、悪趣味な拷問の為なのか…それとも建物の構造のせいなのか…。
動けない事に内心焦りながら、辺りを見回す。


そんな簡単に対処策は見つかる訳もなく、天井がアイクの頭にぶつかりそうになった時にアイクは後ろから押されて部屋に投げ出された。



何とか後ろの方を見ると先ほどの赤髪の間だった。
サヤではない。
ずっと暮らしていたのだ、顔が見えなくともそれは分かった。


体は動かないが、女性の姿が見えるような体制になる。
女性が動けたのだ、自分も動けるはずと必死に体を動かそうとするがアイクの体が動く気配はなかった。


今目の前の女性を助けることができない事がサヤの救出に失敗した時に際に起こる未来を突きつけられているようで…アイクの心境は穏やかなものではなかった。
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