Nora First Edition

第十四話

第14話 26

「まったく、素直じゃないですね。
心配なら、初めからそう言えばいいじゃないですか。

エグザスは、めんどくさいです。」

「ほう、お前が“めんどくさい”って意味を知っていたのだな。
よかったな、凄い成長じゃないか。」


カナがめんどくさそうにそう言うと、エグザスはシレッとそう言い返した。
カナは、後ろからウガーッと声をあげる。


ジュリが後ろをチラッと見ると、ほっぺたを膨らまして腕を振り回すカナの姿があった。



自分達を兵器などと呼んでいる2人のやり取りが、普通の人よりも人らしく仲の良い兄弟のようなやり取りをしているのを見ててジュリは自然と笑みを浮かべた。



そんな中、ジュリの右側の所が爆発する。
どうやらジュリが狙撃されたようだがエグザスの血の壁が防いだために爆破の余波すらもジュリには届けなかった。






「…カナ。」

「言われなくても、わかってます！」



“アクアショット”



カナは、左手に水を溜めてそれを狙撃先に向かって放つ。
溜めと出が早いこの技は、直ぐに狙撃した獣を貫いた。




エグザスも、血液を右手に溜めてコーティングする。
ゾンビのようなものではなく、真っ赤な膜で覆ったようなものだ。


そして、強く地面に踏み込み加速すると前方のほうで隠れていた獣を障害物ごと殴った。

エグザスの拳は、獣を貫いたが獣は少しだけ苦しそうにしているだけで目からは殺意が消える様子はない。



「っチ！
間風情ガ！

殺…ッァア！！」



獣がそう吠えたが、直ぐに表情が変わった。
苦しそうに悲鳴をあげると、ミイラのように干からびた姿に変わる。

エグザスは、悲鳴が途絶えると乱暴に腕を獣から引き抜き辺りを見回す。



「獣が一匹待ち伏せしているのなら、少なく見積もっても10匹以上はいるな。」

「一匹でも倒せば、エグザスは負けないでしょう。

臆することはありません。

エグザス、あそこのビルの下に逃げ遅れた方がいます。
救助をお願いします。」



エグザスは、それを聞くと直ぐにビルの下に移動する。
だが、途中で獣の罠によりビルが倒れていた。

ビルの下にいた男は敢えて、泳がしていたようだ。



エグザスは、舌打ちをすると左指の皮も噛みちぎり全身をコーテイングする。
ゾンビのような風貌になると、ビルの下にいた人の前に移動してビルを思い切り殴った。

爆弾が爆発したような音を響かせてビルはエグザスがいた所だけ粉々になっていく。



「エグザス君！！」



ジュリがエグザスの名前を呼ぶと、エグザスはビルの残骸から人に肩を貸して姿を現した。
エグザスが守り抜いたのだろう。

肩を貸した男には傷一つなかった。




男は意識を取り戻し、礼を言おうとエグザスの顔を見ると驚いた顔になり力いっぱい押し飛ばした。


突然の事で、エグザスは簡単に吹き飛ばされてしまう。
痛みは全くないが、男を静かに見ていた。



「触るな！
この…化け物！！」


ビルの倒壊の原因…獣の生物兵器だと思ったのだろう。
男はそう言い捨てると、エグザスとは逆方向に向かって走った。


エグザスからある程度離れた瞬間に、男の頭は吹き飛んで絶命する。



その様子をおとなしく見ていたエグザスだが、ジュリは男を狙撃した獣に向かってキーウェポンを向けた。


“技の1段”


ジュリの放った火の弾は、獣の頭を吹き飛ばし狙撃地点から落下させる。