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第十四話
第14話 25
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ージュリsideー
アイクと別れたジュリ達は、ビルとビルの間を跳ぶように移動している。
「ジュリ殿。
自分が先生を背負いますか?」
「私より、カナちゃんの方が火力があるから、私が運ぶよ。
何かあったら、頼りにしてるよ?」
ジュリがそう言うと、カナは頬を真っ赤に染めて喜びジュリより先に進む。
“炎生む鉄”
炎で大剣を作り少しだけ振り向く。
「自分にお任せを!
先生やアイク殿、サヤ殿に頂いた“カナ”の名前に賭けて必ずやお守りしましょう!」
自分の事を兵器と言わなかった。
その百点満点の答えに、ジュリは自然と笑みを浮かべていた。
兵器などではなく、大切な1人の友達の為の笑顔を。
「あれは…エグザス。」
カナは途中で、下にいる人間に目をやる。
どんな人にも“殿”をつけるカナを見慣れているせいか、ジュリはソレに違和感を感じた。
視界には捕らえられるとはいえ、かなりの距離があるにも関わらず今の声でエグザスはジュリ達に気がつく。
「…カナか。
1人は知らんが、背負われているのは…アリエスだったか?
お前を預かっている人間だったよな。」
エグザスは、そう言うと高く跳躍して二人がいるビルまで移動する。
途中で二回だけビルの壁を蹴って上昇していたが、超人と呼ぶには十分だった。
「エグザスは、何を?」
「偵察だ。
出来損ないの未完でも、それ位はできる。
逃げ遅れたり、隠れている人間の捜索をしていた。」
出来損ないの未完。
エグザスの正体について知るには充分な言葉だった。
「…君も自分の事をそう言うんだ。」
「事実を言っただけだ。
何も問題はない。
お前も、自分の事を学生と名乗る事があるたろう?
…それと同じだ。
必要以上に喚くな…不愉快だ。」
エグザスは、そう言うとジュリをギロリと睨んだ。
するとカナはわざとらしく大きくあーあっと声を上げた。
「そこまでにしましょう。
エグザスが未完でも蜜柑でも、どちらでもいいので先生をどうにかしなければ。
エグザス、偵察が一通り終わったのなら手伝ってください。」
「分かった。
丁度、引き上げる所だった。
俺が先じ…前をいく。
カナ、お前はしんが…後ろを頼む。」
エグザスは、途中で分かりやすいように言い直すと体を掛けたジュリに負けない位の速度で走り出す。
ジュリも置いていかれないようにエグザスの後を追う。
一方、ポカーンとしていたカナはハッとした表情になるとムスッとした表情になった。
「こら!
自分がわからないと思って言い直したでしょ!
シンガリ位わかります!」
そう言うと、カナも2人の後を追った。
エグザスが速度を落とす様子はない。
エグザスとカナが余裕の表情でいるなか、ジュリは少しずつ苦悶の表情になっていく。
「そこの女。
俺は、アリエスを一切担ぐ気はない。
アリエスとお前は人類の切り札だろうが…俺の知った事ではない。」
「大丈夫だよ。
自分で選んだんだもの、最後まで成し遂げるわ。」
ジュリの事を心配しているのか後ろでハラハラとしているカナをよそに、ジュリは額に汗を流しながらも笑顔で口を開く。
エグザスは、それを見ると再び前を見た。
「ならいい。
お前が自分のやるべき事をわかっているのであればな。」
エグザスがそう言うと、親指の皮を噛みちぎり血を流すと帯のように固形化させて周囲に漂わせた。
噛みちぎった場所は血で固めて止血をしている。
アイクと別れたジュリ達は、ビルとビルの間を跳ぶように移動している。
「ジュリ殿。
自分が先生を背負いますか?」
「私より、カナちゃんの方が火力があるから、私が運ぶよ。
何かあったら、頼りにしてるよ?」
ジュリがそう言うと、カナは頬を真っ赤に染めて喜びジュリより先に進む。
“炎生む鉄”
炎で大剣を作り少しだけ振り向く。
「自分にお任せを!
先生やアイク殿、サヤ殿に頂いた“カナ”の名前に賭けて必ずやお守りしましょう!」
自分の事を兵器と言わなかった。
その百点満点の答えに、ジュリは自然と笑みを浮かべていた。
兵器などではなく、大切な1人の友達の為の笑顔を。
「あれは…エグザス。」
カナは途中で、下にいる人間に目をやる。
どんな人にも“殿”をつけるカナを見慣れているせいか、ジュリはソレに違和感を感じた。
視界には捕らえられるとはいえ、かなりの距離があるにも関わらず今の声でエグザスはジュリ達に気がつく。
「…カナか。
1人は知らんが、背負われているのは…アリエスだったか?
お前を預かっている人間だったよな。」
エグザスは、そう言うと高く跳躍して二人がいるビルまで移動する。
途中で二回だけビルの壁を蹴って上昇していたが、超人と呼ぶには十分だった。
「エグザスは、何を?」
「偵察だ。
出来損ないの未完でも、それ位はできる。
逃げ遅れたり、隠れている人間の捜索をしていた。」
出来損ないの未完。
エグザスの正体について知るには充分な言葉だった。
「…君も自分の事をそう言うんだ。」
「事実を言っただけだ。
何も問題はない。
お前も、自分の事を学生と名乗る事があるたろう?
…それと同じだ。
必要以上に喚くな…不愉快だ。」
エグザスは、そう言うとジュリをギロリと睨んだ。
するとカナはわざとらしく大きくあーあっと声を上げた。
「そこまでにしましょう。
エグザスが未完でも蜜柑でも、どちらでもいいので先生をどうにかしなければ。
エグザス、偵察が一通り終わったのなら手伝ってください。」
「分かった。
丁度、引き上げる所だった。
俺が先じ…前をいく。
カナ、お前はしんが…後ろを頼む。」
エグザスは、途中で分かりやすいように言い直すと体を掛けたジュリに負けない位の速度で走り出す。
ジュリも置いていかれないようにエグザスの後を追う。
一方、ポカーンとしていたカナはハッとした表情になるとムスッとした表情になった。
「こら!
自分がわからないと思って言い直したでしょ!
シンガリ位わかります!」
そう言うと、カナも2人の後を追った。
エグザスが速度を落とす様子はない。
エグザスとカナが余裕の表情でいるなか、ジュリは少しずつ苦悶の表情になっていく。
「そこの女。
俺は、アリエスを一切担ぐ気はない。
アリエスとお前は人類の切り札だろうが…俺の知った事ではない。」
「大丈夫だよ。
自分で選んだんだもの、最後まで成し遂げるわ。」
ジュリの事を心配しているのか後ろでハラハラとしているカナをよそに、ジュリは額に汗を流しながらも笑顔で口を開く。
エグザスは、それを見ると再び前を見た。
「ならいい。
お前が自分のやるべき事をわかっているのであればな。」
エグザスがそう言うと、親指の皮を噛みちぎり血を流すと帯のように固形化させて周囲に漂わせた。
噛みちぎった場所は血で固めて止血をしている。
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