201 / 253
第十四話
第14話 15
しおりを挟む
ークロ saidー
転移されたクロは、慣れた様子で本拠地に自力で帰還した。
自身の持つ緊急用の薬でサヤの応急処置を施していたようで米俵のように肩に担いで親玉のグラムの報告から戻っている途中だった。
「クロ隊長!
それが、人間側の英雄ですカ!?」
「あぁ、そうダ。」
近くを通りがかった獣人達もサヤを見て笑みを浮かべていた。
その後ろから、白毛の獣が現れる。
「よう、クロ。」
「よう、シロ。」
二人は、ヘラッと笑いながらそう言った。
白毛の獣〝シロ〟は、サヤを品定めするように眺める。
「お前が人間風情に負けるとは思ってなかったが…珍しくインフィニティを使ったのカ。」
「まぁナ。
使わなかったら、俺も無事では済まなかったナ。
“血脈[けつみゃく]”まで使ったし、一歩間違えれば死んでたヨ。」
シロは、サヤから流れるようにクロの腰にある刀を見た。
一目で発動痕を見つける所をみると隊長と呼ばれることはある。
「んデ?
そのメスはどうするんダ?
中々の上物だし、能力はお前と戦って確認済…才能あふれる子供ができそうダ。
お前には、苗床がいないし丁度いいんじゃないカ?」
「んや…苗床にしなイ。
勿論、実験体にもしなイ。
…公開処刑すル。」
嬉しそうに話すシロに対して、クロはあっさりと死刑宣告をした。
流石に他の獣も驚いた様子だった。
「何故でス!?
殺す位なら…私が貰いまス!!
仲間を沢山殺られたんだ、そのくら…。」
その瞬間に、その獣の周囲に四属性の柱の結晶が複数刺さる。
獣も話の途中だが、クロの攻撃を見ると怯えた様子で話を止めた。
「意義や異論は、認めなイ。
仲間を殺されたなら、尚更ダ。
俺たちの仲間は、実験動物に殺されたのカ?
子供を産むために作ったメスに殺されたのカ?
…違うだロ!?
俺たちの仲間は、自分や仲間の力を信じプライドと信念を持って戦っタ。
人間側には、そうじゃない奴もいるが…少なくともこの女は違ウ。
俺の話に対して最大の力と敬意を払っタ。
だから、俺はその敬意を無下にせず…敵兵の将として然るべき対応をさせてもらウ。」
「俺の決定ダ。
お前も異論はないよな…シロ!」
「クロの決定ダ。
俺に異論はないサ。
まぁ、人間側にも処刑を見せれば人間側の士気を大きく削れるし…何よりこっち側の士気は上がる。
メリットはある…惜しい気もするがナ。」
シロは、ピリピリとしているクロの肩をポンポンと叩き軽くウインクした。
それに頭が冷えたのか、フゥーっと深く息を吐きだして先ほど出した結晶柱を消す。
「グラムじーさんには、好きにしろって言われたからこれから牢獄に突っ込んでくル。
見張りは、俺がやル。
雑魚じゃ、逃亡されるし…何より自分で決めたことだしナ。」
「…そうカ。
なら、当分はお別れダ。
公開処刑が終わったら、一杯やろうヤ。」
シロはそう言うと、手をパタパタさせてクロの元を離れていった。
クロも、先程の獣にやり過ぎたと軽く謝罪して牢獄に向かう。
ついた牢獄は、苗床や奴隷を捕獲するような場所ではなく…禁忌を犯した獣などが入れられる強固なものだった。
「ほら、ついたゾ。
いつまで意識を失ったフリをしてるんダ?」
「…あっはっは。
バレちゃった?」
クロは、誰も居ないのを確認するとサヤに話しかけた。
サヤも軽く笑っている。
その様子を見るとサヤの怪我も殆ど治っているようだ。
人間の癖に思ったより頑丈な体だ。
呆れたように息を吐き出したクロは、牢屋の中にゆっくりと担いでいたサヤを下ろすと牢の外に出て鍵を閉めた後に側にある椅子に座る。
「気分はどうダ?」
「随分と物好きな獣だねぇ。
サヤさんの体調は良好だよ。」
サヤは牢の中をウロウロして過ごしやすい環境を作り始めた。
「獣じゃない、獣人ダ。」
「ふーん。
クロ…だっけ?
なんで、サヤさんの監視を志願したの?
確かにキーウエポンを引き寄せられるけど…色欲でサヤさんの力を封じてるから別に雑兵でも問題ないじゃない。」
名前は覚えてるんだな。
そうボヤくように椅子の背もたれに寄りかかる。
そして、ゆっくりと口を開いた。
転移されたクロは、慣れた様子で本拠地に自力で帰還した。
自身の持つ緊急用の薬でサヤの応急処置を施していたようで米俵のように肩に担いで親玉のグラムの報告から戻っている途中だった。
「クロ隊長!
それが、人間側の英雄ですカ!?」
「あぁ、そうダ。」
近くを通りがかった獣人達もサヤを見て笑みを浮かべていた。
その後ろから、白毛の獣が現れる。
「よう、クロ。」
「よう、シロ。」
二人は、ヘラッと笑いながらそう言った。
白毛の獣〝シロ〟は、サヤを品定めするように眺める。
「お前が人間風情に負けるとは思ってなかったが…珍しくインフィニティを使ったのカ。」
「まぁナ。
使わなかったら、俺も無事では済まなかったナ。
“血脈[けつみゃく]”まで使ったし、一歩間違えれば死んでたヨ。」
シロは、サヤから流れるようにクロの腰にある刀を見た。
一目で発動痕を見つける所をみると隊長と呼ばれることはある。
「んデ?
そのメスはどうするんダ?
中々の上物だし、能力はお前と戦って確認済…才能あふれる子供ができそうダ。
お前には、苗床がいないし丁度いいんじゃないカ?」
「んや…苗床にしなイ。
勿論、実験体にもしなイ。
…公開処刑すル。」
嬉しそうに話すシロに対して、クロはあっさりと死刑宣告をした。
流石に他の獣も驚いた様子だった。
「何故でス!?
殺す位なら…私が貰いまス!!
仲間を沢山殺られたんだ、そのくら…。」
その瞬間に、その獣の周囲に四属性の柱の結晶が複数刺さる。
獣も話の途中だが、クロの攻撃を見ると怯えた様子で話を止めた。
「意義や異論は、認めなイ。
仲間を殺されたなら、尚更ダ。
俺たちの仲間は、実験動物に殺されたのカ?
子供を産むために作ったメスに殺されたのカ?
…違うだロ!?
俺たちの仲間は、自分や仲間の力を信じプライドと信念を持って戦っタ。
人間側には、そうじゃない奴もいるが…少なくともこの女は違ウ。
俺の話に対して最大の力と敬意を払っタ。
だから、俺はその敬意を無下にせず…敵兵の将として然るべき対応をさせてもらウ。」
「俺の決定ダ。
お前も異論はないよな…シロ!」
「クロの決定ダ。
俺に異論はないサ。
まぁ、人間側にも処刑を見せれば人間側の士気を大きく削れるし…何よりこっち側の士気は上がる。
メリットはある…惜しい気もするがナ。」
シロは、ピリピリとしているクロの肩をポンポンと叩き軽くウインクした。
それに頭が冷えたのか、フゥーっと深く息を吐きだして先ほど出した結晶柱を消す。
「グラムじーさんには、好きにしろって言われたからこれから牢獄に突っ込んでくル。
見張りは、俺がやル。
雑魚じゃ、逃亡されるし…何より自分で決めたことだしナ。」
「…そうカ。
なら、当分はお別れダ。
公開処刑が終わったら、一杯やろうヤ。」
シロはそう言うと、手をパタパタさせてクロの元を離れていった。
クロも、先程の獣にやり過ぎたと軽く謝罪して牢獄に向かう。
ついた牢獄は、苗床や奴隷を捕獲するような場所ではなく…禁忌を犯した獣などが入れられる強固なものだった。
「ほら、ついたゾ。
いつまで意識を失ったフリをしてるんダ?」
「…あっはっは。
バレちゃった?」
クロは、誰も居ないのを確認するとサヤに話しかけた。
サヤも軽く笑っている。
その様子を見るとサヤの怪我も殆ど治っているようだ。
人間の癖に思ったより頑丈な体だ。
呆れたように息を吐き出したクロは、牢屋の中にゆっくりと担いでいたサヤを下ろすと牢の外に出て鍵を閉めた後に側にある椅子に座る。
「気分はどうダ?」
「随分と物好きな獣だねぇ。
サヤさんの体調は良好だよ。」
サヤは牢の中をウロウロして過ごしやすい環境を作り始めた。
「獣じゃない、獣人ダ。」
「ふーん。
クロ…だっけ?
なんで、サヤさんの監視を志願したの?
確かにキーウエポンを引き寄せられるけど…色欲でサヤさんの力を封じてるから別に雑兵でも問題ないじゃない。」
名前は覚えてるんだな。
そうボヤくように椅子の背もたれに寄りかかる。
そして、ゆっくりと口を開いた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
薔薇園に咲く呪われ姫は、王宮を棄てて微笑む ~もうあなたの愛など欲しくない~
昼から山猫
恋愛
王宮で「優雅な花嫁」として育てられながらも、婚約者である王太子は宮廷魔術師の娘に心奪われ、彼女を側妃に迎えるため主人公を冷遇する。
追放同然で古城へ送られた主人公は呪われた薔薇園で不思議な騎士と出会い、静かな暮らしを始める。
だが王宮が魔物の襲来で危機に瀕したとき、彼女は美しき薔薇の魔力を解き放ち、世界を救う。
今さら涙を流す王太子に彼女は告げる。
「もう遅いのですわ」
【完結】聖女ディアの処刑
大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。
枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。
「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」
聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。
そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。
ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが――
※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・)
※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・)
★追記
※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。
※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。
※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。
廻れマワれ
大山 たろう
ファンタジー
教会に『勇者』として小さいころから教育を受けた「私」。
教会に命じられるまま、「私」は戦いに身を投じた。
真実を知らぬまま、何も知らぬままに。
※小説家になろう様、カクヨム様にも投稿しています。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
悪役令嬢に転生したおばさんは憧れの辺境伯と結ばれたい
ゆうゆう
恋愛
王子の婚約者だった侯爵令嬢はある時前世の記憶がよみがえる。
よみがえった記憶の中に今の自分が出てくる物語があったことを思い出す。
その中の自分はまさかの悪役令嬢?!
自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。/自称悪役令嬢な妻の観察記録。
しき
ファンタジー
優秀すぎて人生イージーモードの王太子セシル。退屈な日々を過ごしていたある日、宰相の娘バーティア嬢と婚約することになったのだけれど――。「セシル殿下! 私は悪役令嬢ですの!!」。彼女の口から飛び出す言葉は、理解不能なことばかり。なんでもバーティア嬢には前世の記憶があり、『乙女ゲーム』なるものの『悪役令嬢』なのだという。そんな彼女の目的は、立派な悪役になって婚約破棄されること。そのために様々な悪事を企むバーティアだが、いつも空回りばかりで……。婚約者殿は、一流の悪の華を目指して迷走中? ネットで大人気! 異色のラブ(?)ファンタジー開幕!
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる