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第十四話
第14話 5
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「アリス!」
「ごきげんよう、サヤ。」
ベルを担いだまま、アリエスは爽やかに挨拶した。
森羅万象を使っているとはいえやや小柄な美人の女性が同じくらいの体格の男を軽々と担いでいる様子は、かなりシュールだ。
「ありがとう、助かったよ!」
「なに、礼なら風に言ってくれ。
風が私に教えてくれたのだから。
今、風にお願いしている所なのだが…潜伏している獣らしき人物が活発になっているみたいだ。
さっきの奴らが良い例だろう。」
アリエスがチラリとサヤが倒した獣達を見る。
そして、ベルをゆっくりと下ろす。
「なんか、色々と奪われた気分…。」
「アホな事言ってないで、周囲を警戒しなくちゃ。
タダでさえ、ベルはホープを使えないんだから。」
『コレヨリ、コノ街ヲ制圧シマス。
先月ノ仕上ゲニナリマス。
復唱ハイマシマセン。
降伏シナイ場合ハ…ドウナッテモ一切ノ責任ハ負ワナイノデ、ゴ理解シテクダサイ。』
片言のアナウンスが街全体に響く。
その瞬間に、アリエスは青ざめながら独り言を呟いた。。
放送局は、街の中枢…もしかしたらっと。
「すまない、私は一人で放送局に向かう。
…素敵ハウスで落ち合おう。」
“エックス”
アリエスはそう言うと、転移を始めた。
その瞬間に、街の中枢から雷の柱が空に向かって伸びていく。雷は、そのまま街全体を覆うように広がっていく。
「なん…っ!」
サヤは話を中断した。
身体中の力が一気に抜ける感覚。
「体が…解除された?
それどころか、ホープも使えない?」
「…色欲が獣の手に渡ったのか…。」
ベルは、苦い表情を見せると雷の柱を見る。
色欲と言うワードを聞いたサヤは、ベルのの肩を掴む。
「まって!
そしたら、アリスは?」
「慌てたって変わらないよ。
放送局に向かわないと手掛かりがないからどうにもできない。
少なくともアリエスさんは、森羅万象は使えなかなっている筈。
サヤ姉ぇ達もホープは使えな…。」
ベルは言葉を止める。
シオは普通に使っているのだから。
ベルは、直ぐに閃く。
ホープは、シオ自身の血の力だ。
コピーであるアイク達の能力を資料で把握していたとしても…今も全てが解明していないシオの力を理解するのは不可能。
サヤは、キーウエポンが起動したままなのを確認するとライフルの形態に変形させてもしもの時の為の実弾をキーウエポンに込める。
「…そしたら、シオが先陣を切ってサヤさんが補佐。
放送局は、ナツと回ったから地理は頭にあるよね?
ベルは、地形把握能力が高いから誘導をお願い。」
2人は静かに頷くと、放送局まで3人は向かった。
アリエスの予想通り、放送局は完全に制圧されていた。
もう、隠す気がないのだろう。
姿を隠す様子もなく、武装した獣達は放送局の入り口を警備している。
「あ、駄目だこりゃ。」
「ベル、そんな事は言わない。
…ねぇ、ナツの遺したゲートってあれだけ?」
サヤの質問にベルはうーんと考えた後に口を開く。
「試作で…1体。
献上用で5体。
そして…あの研究所にあった1体。
試作の奴は軍の試運転で壊され、研究所にあったゲートは、あの戦いで壊れたし…後は…国の倉庫や一部の研究所に行けばあるかもね。」
「結構…詳しいんだね。」
サヤは、驚いた顔を見せたがベルは苦笑いを浮かべる。
左手を頭の横らへんまで上げて、プラプラして口を開く。
「そりゃー、入り浸ってましたもの。
ほら、ナツって放っておくと常に一人だからさ。
心優しー俺様は、手伝いっつー名目で研究にも参加してましたから。」
「それじゃ、獣の手に渡る前に…。」
サヤがそう言おうとした瞬間に獣達の話し声が聞こえる。
かなり深刻そうな表情を浮かべていた。
「人間の科学者が作ったゲートとやらが、何物かによって破壊されていル。
恐らく…アリエスか…森羅万象を使う人間の騎士団がやったのだろウ。
破壊痕が新しイ。
色欲を発動させたから、潜伏している筈ダ。
見つけ次第、拘束か駆除をしろとのことらしイ。
伝言は伝えからナ。」
伝達係の獣は、そう言うと放送局内に入っていった。
「ごきげんよう、サヤ。」
ベルを担いだまま、アリエスは爽やかに挨拶した。
森羅万象を使っているとはいえやや小柄な美人の女性が同じくらいの体格の男を軽々と担いでいる様子は、かなりシュールだ。
「ありがとう、助かったよ!」
「なに、礼なら風に言ってくれ。
風が私に教えてくれたのだから。
今、風にお願いしている所なのだが…潜伏している獣らしき人物が活発になっているみたいだ。
さっきの奴らが良い例だろう。」
アリエスがチラリとサヤが倒した獣達を見る。
そして、ベルをゆっくりと下ろす。
「なんか、色々と奪われた気分…。」
「アホな事言ってないで、周囲を警戒しなくちゃ。
タダでさえ、ベルはホープを使えないんだから。」
『コレヨリ、コノ街ヲ制圧シマス。
先月ノ仕上ゲニナリマス。
復唱ハイマシマセン。
降伏シナイ場合ハ…ドウナッテモ一切ノ責任ハ負ワナイノデ、ゴ理解シテクダサイ。』
片言のアナウンスが街全体に響く。
その瞬間に、アリエスは青ざめながら独り言を呟いた。。
放送局は、街の中枢…もしかしたらっと。
「すまない、私は一人で放送局に向かう。
…素敵ハウスで落ち合おう。」
“エックス”
アリエスはそう言うと、転移を始めた。
その瞬間に、街の中枢から雷の柱が空に向かって伸びていく。雷は、そのまま街全体を覆うように広がっていく。
「なん…っ!」
サヤは話を中断した。
身体中の力が一気に抜ける感覚。
「体が…解除された?
それどころか、ホープも使えない?」
「…色欲が獣の手に渡ったのか…。」
ベルは、苦い表情を見せると雷の柱を見る。
色欲と言うワードを聞いたサヤは、ベルのの肩を掴む。
「まって!
そしたら、アリスは?」
「慌てたって変わらないよ。
放送局に向かわないと手掛かりがないからどうにもできない。
少なくともアリエスさんは、森羅万象は使えなかなっている筈。
サヤ姉ぇ達もホープは使えな…。」
ベルは言葉を止める。
シオは普通に使っているのだから。
ベルは、直ぐに閃く。
ホープは、シオ自身の血の力だ。
コピーであるアイク達の能力を資料で把握していたとしても…今も全てが解明していないシオの力を理解するのは不可能。
サヤは、キーウエポンが起動したままなのを確認するとライフルの形態に変形させてもしもの時の為の実弾をキーウエポンに込める。
「…そしたら、シオが先陣を切ってサヤさんが補佐。
放送局は、ナツと回ったから地理は頭にあるよね?
ベルは、地形把握能力が高いから誘導をお願い。」
2人は静かに頷くと、放送局まで3人は向かった。
アリエスの予想通り、放送局は完全に制圧されていた。
もう、隠す気がないのだろう。
姿を隠す様子もなく、武装した獣達は放送局の入り口を警備している。
「あ、駄目だこりゃ。」
「ベル、そんな事は言わない。
…ねぇ、ナツの遺したゲートってあれだけ?」
サヤの質問にベルはうーんと考えた後に口を開く。
「試作で…1体。
献上用で5体。
そして…あの研究所にあった1体。
試作の奴は軍の試運転で壊され、研究所にあったゲートは、あの戦いで壊れたし…後は…国の倉庫や一部の研究所に行けばあるかもね。」
「結構…詳しいんだね。」
サヤは、驚いた顔を見せたがベルは苦笑いを浮かべる。
左手を頭の横らへんまで上げて、プラプラして口を開く。
「そりゃー、入り浸ってましたもの。
ほら、ナツって放っておくと常に一人だからさ。
心優しー俺様は、手伝いっつー名目で研究にも参加してましたから。」
「それじゃ、獣の手に渡る前に…。」
サヤがそう言おうとした瞬間に獣達の話し声が聞こえる。
かなり深刻そうな表情を浮かべていた。
「人間の科学者が作ったゲートとやらが、何物かによって破壊されていル。
恐らく…アリエスか…森羅万象を使う人間の騎士団がやったのだろウ。
破壊痕が新しイ。
色欲を発動させたから、潜伏している筈ダ。
見つけ次第、拘束か駆除をしろとのことらしイ。
伝言は伝えからナ。」
伝達係の獣は、そう言うと放送局内に入っていった。
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