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第十三話
第13話 13
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「んで、今日のご飯はすき焼きでしたー。」
「…え…何が?」
サヤは、両手を広げて嬉しそうにそういった。
“んで”の前の意味がよく分からないナツは、パーティ帽子を被らされて中心に座らせらせている。
サヤも腕を組んで胸を張り始めた。
「サヤさんの情報網を舐めては困る。
今日は、ナツの誕生日でしょ?
すき焼きが好きだって聞いたから、こうして祝いにきたのだよ!」
「いや、別にすき焼きが好きな訳じゃないよ?
単にプロフィールで好きな物を聞かれて適当に答えただけ。」
ナツはサラリとそう言うと、面倒くさい程にショックを受けていた。
困った笑みを浮かべたジュリは、サヤの手を引いて自分の隣に座らせる。
一応、向いはナツだ。
「まぁ、祝いたいって気持ちは本当だから楽しんでよ?
好きではないけど、嫌いでは無いんでしょう?」
「…そうだね…。
ありがとう。」
ジュリはニコリと笑って、そういう時ナツは穏やかな顔でそう返事をした。
フォローをいれるのは、本来ならサヤがするべきなのでは?
普段のナツなら一言二言余計な事を言うのに素直に礼を言うのは相当消耗しているようだ。
グレーズは、パンパンと手を叩いて声を出す。
「よーし。
そうと決まったら、酒だ。
あ、クソガキ共はオレンジジュースでも我慢してな。」
「そうさせて貰うよ、オッさん。」
グレーズはビール瓶を開け少しバカにするように未成年組…特にシオを見ながらそう言い、それに対してシオは口をイーっとしてオレンジジュースを口に運んだ。
「てか、酒を飲めるのは3人だけか。」
アイクもグレーズが注いでくれたビールを口にして言う。
成人しているのはアイク、グレーズ、サヤの3人だけ。
「んじゃ、カンパーイ!」
「おっさん、肝臓に気をつけなよ。」
「やかましい。」
サヤの一声でグラスが、掲げられた。
コーダとグレーズのそんなやりとりから会話が始まり、あっという間に時間が過ぎた。
食べた後の回復感が凄い、食事も甘くみてはいけないなぁ。
久しぶりに沢山の野菜や肉を食べたナツは、そんな事を考えながらご馳走様と手を合わせた。
解散の時になりチラリとグレーズをみると酔い潰れており起こしても起きる気配がなかった。
お酒が入ってないコーダとベルが運ぼうとしたが、ナツは珍しく静止する。
「別に、僕の部屋に人を泊めた事が無かったわけじゃないから大丈夫だよ。
まぁ、布団を用意する気は全く無いから風邪をひいても知らないけどね。」
ナツはクスッと笑った。
ゾロゾロと皆が帰るのを確認すると、居間の方に戻っていく。
すると、寝ていた筈のグレーズが起きていた。
「おや、寝ていたのでは?」
「んや、二人で話したい事があってなぁ。
あぁ、勘違いするなよ。
オッさんは、ノーマルだからな。」
グレーズは、座っている状態で手を組んで天井に向かって伸ばす。
ナツは、話したい事と聞かれて首を傾げた後にグレーズの向かいの椅子に座る。
話を聞く姿勢になるのを確認したグレーズは頭をポリポリと掻いて口を開く。
「…あくまで噂だ。
だが、火のない所に煙は立たないって言うからな。
変に話が拡大した状態でお前さんの耳に届くのは嫌だから言わせて貰う。
…ハルが死んだのは意図的なものなのかも知れない。」
「…そんな物は良く聞く噂だ。
そんなのを間に受ける程、まだ僕は疲弊していない。
それでも僕に伝えたいその心は?」
ナツが余裕そうな表情を浮かべるとグレーズは、目つきを鋭くさせる。
この先、一切の冗談や嘘をつかないという現れなのだろう。
「理由は、簡単だ。
…妬みだ。
ここ最近で、お前さんは大分明るくなった。
ベルのしつこい訪問と、姐さん達との交友でな。
本当に良い事なのだが、全ての人間がそれを良く思う訳がない。
…お前さんも知っていると思うが、人間つーのは醜い生き物だ。
自分が知る知識以上の事は知らないし、実感できない。
尚且つ、主観に囚われやすく被害妄想なんて少なくはないんだ。
学者としての地位、能力、そして人間関係。
全てが上手くいっていると思われているお前さんが羨ましいのさ。
そして比較する。
どうして、頑張っている自分とはこんなに違うのか?…っと。
そこから行き着く狂気なんて知れてるよな?
そいつを落とし入れて不幸にすればいいと。」
「…え…何が?」
サヤは、両手を広げて嬉しそうにそういった。
“んで”の前の意味がよく分からないナツは、パーティ帽子を被らされて中心に座らせらせている。
サヤも腕を組んで胸を張り始めた。
「サヤさんの情報網を舐めては困る。
今日は、ナツの誕生日でしょ?
すき焼きが好きだって聞いたから、こうして祝いにきたのだよ!」
「いや、別にすき焼きが好きな訳じゃないよ?
単にプロフィールで好きな物を聞かれて適当に答えただけ。」
ナツはサラリとそう言うと、面倒くさい程にショックを受けていた。
困った笑みを浮かべたジュリは、サヤの手を引いて自分の隣に座らせる。
一応、向いはナツだ。
「まぁ、祝いたいって気持ちは本当だから楽しんでよ?
好きではないけど、嫌いでは無いんでしょう?」
「…そうだね…。
ありがとう。」
ジュリはニコリと笑って、そういう時ナツは穏やかな顔でそう返事をした。
フォローをいれるのは、本来ならサヤがするべきなのでは?
普段のナツなら一言二言余計な事を言うのに素直に礼を言うのは相当消耗しているようだ。
グレーズは、パンパンと手を叩いて声を出す。
「よーし。
そうと決まったら、酒だ。
あ、クソガキ共はオレンジジュースでも我慢してな。」
「そうさせて貰うよ、オッさん。」
グレーズはビール瓶を開け少しバカにするように未成年組…特にシオを見ながらそう言い、それに対してシオは口をイーっとしてオレンジジュースを口に運んだ。
「てか、酒を飲めるのは3人だけか。」
アイクもグレーズが注いでくれたビールを口にして言う。
成人しているのはアイク、グレーズ、サヤの3人だけ。
「んじゃ、カンパーイ!」
「おっさん、肝臓に気をつけなよ。」
「やかましい。」
サヤの一声でグラスが、掲げられた。
コーダとグレーズのそんなやりとりから会話が始まり、あっという間に時間が過ぎた。
食べた後の回復感が凄い、食事も甘くみてはいけないなぁ。
久しぶりに沢山の野菜や肉を食べたナツは、そんな事を考えながらご馳走様と手を合わせた。
解散の時になりチラリとグレーズをみると酔い潰れており起こしても起きる気配がなかった。
お酒が入ってないコーダとベルが運ぼうとしたが、ナツは珍しく静止する。
「別に、僕の部屋に人を泊めた事が無かったわけじゃないから大丈夫だよ。
まぁ、布団を用意する気は全く無いから風邪をひいても知らないけどね。」
ナツはクスッと笑った。
ゾロゾロと皆が帰るのを確認すると、居間の方に戻っていく。
すると、寝ていた筈のグレーズが起きていた。
「おや、寝ていたのでは?」
「んや、二人で話したい事があってなぁ。
あぁ、勘違いするなよ。
オッさんは、ノーマルだからな。」
グレーズは、座っている状態で手を組んで天井に向かって伸ばす。
ナツは、話したい事と聞かれて首を傾げた後にグレーズの向かいの椅子に座る。
話を聞く姿勢になるのを確認したグレーズは頭をポリポリと掻いて口を開く。
「…あくまで噂だ。
だが、火のない所に煙は立たないって言うからな。
変に話が拡大した状態でお前さんの耳に届くのは嫌だから言わせて貰う。
…ハルが死んだのは意図的なものなのかも知れない。」
「…そんな物は良く聞く噂だ。
そんなのを間に受ける程、まだ僕は疲弊していない。
それでも僕に伝えたいその心は?」
ナツが余裕そうな表情を浮かべるとグレーズは、目つきを鋭くさせる。
この先、一切の冗談や嘘をつかないという現れなのだろう。
「理由は、簡単だ。
…妬みだ。
ここ最近で、お前さんは大分明るくなった。
ベルのしつこい訪問と、姐さん達との交友でな。
本当に良い事なのだが、全ての人間がそれを良く思う訳がない。
…お前さんも知っていると思うが、人間つーのは醜い生き物だ。
自分が知る知識以上の事は知らないし、実感できない。
尚且つ、主観に囚われやすく被害妄想なんて少なくはないんだ。
学者としての地位、能力、そして人間関係。
全てが上手くいっていると思われているお前さんが羨ましいのさ。
そして比較する。
どうして、頑張っている自分とはこんなに違うのか?…っと。
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