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第十二話
第12話 6
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時は少し遡り、シオの視点に入る。
「ジュリ姉ぇ…。」
「相変わらずだネ。
シーちゃん、同じ年なんだから姉も何もないでしョ?
それに…今の私は、アキ。
ノラではなくて、獣人ドーベルマンの一員!」
アキは、キーウェポンを銃形態にしてシオに狙撃。
シオは砦の弾除けを駆使してアキの狙撃を防ぐ。
なんでノラの一員ではないと言っているのに、自分の事を愛称で呼ぶのだろうか。
そんな悔しさに似た思いをギリッと噛み締めて堪えた後に、弾除けに寄り掛かかって壁越しでアキに背を向けた状態で銃形態にしたキーウェポンを構える。
“技の2段”
放たれた3発の風の弾は、別々の方向に広がった後にアキに向かって飛んでいく。
「相変わらず、型にはまらないホープだこト。」
“技の0段 赤(あか)”
アキがそう言うと鎧の隙間から赤い帯が出てきて壁のように集まり風の弾を防いだ。
見た感じだと赤い帯はエグザスと同質のものだろう。
隙間から赤い帯を見たシオはギョッとした表情になる。
「マぁ、エッくん程ではないけどちょっとした血の鎧とグラムじーちゃんが作ったこの鎧があるから…火力があまり強くないシーちゃんの攻撃くらいなら私には届かないと思うヨ。」
アキは、カナたちの方に視線を向ける。
丁度、カナがシュンを抑えた所だ。
だが、ひっかかる。
なんで、援護のサマーはマレばかりの相手をしているのか?
グレーズの能力なら隙を見ながら時おり、狙撃をしてサポートができた筈。
カナを相手にするなら、きっとサポートは欲しい 筈だがカナの相手をしているのはブルーマだけだ。
「…まさか、手を抜いているの?」
「ウん、正解。
今回は、見せしメ?
ノラの最大火力なんて、私達の敵ではないっテ。
他の人達には、人質とかいって揺さぶってここに来させようと思っているけド。」
アキはシオの答えに対して嬉しそうな声をあげて拍手を送る。
拍手の手を止めた後にアキは勿体ぶるような口調で話を始めた。
「…アイクは気がついているんじゃなイ?
私達獣人が、ここの場所を知りながら本気で攻め込んでいない事ヲ。
多分、シーちゃん達には“油断しているから”…なんて言っている筈。
確かに、それも間違いじゃないんだヨ?
実際、それでお星様になったおバカさんがいっぱいいたしシ。
デも、本当は認めたくなかったんだヨ。
…君達が、実験の為に飼われているモルモットって事を。」
シオは、金縛りにあったような感覚に襲われた。
確かに、覚えがない訳ではなかった。
獣人の代表格の一人であるグラムは、自分たちの事をモルモットと呼んでいた。
そして、アイクも積極的に戦力を集めようとしなかった。
仲間集めより、残存のメンバーの能力の底上げを重点においていた。
「私…達…は…獣の、兵器や武装の実験の為に…生かされていた?
飼いならした人間では、簡単に死ぬし思うような結果は得られない。
だったら、自分達がある程度手を抜くことで自分達で考えさせて自分達とは違う考え方やデータの記録をしていたの?」
壁越しでシオは体と声を震わせながらそう言った。
アキは、そんな震えるシオを壁越しだか指差して明るい声で返事を返す。
「セーかイ!
だって、ウチにだって本家獣人様のエースがいるんだヨ?
ダイル、ドレッド、レウス、変態、馬鹿英雄…そして最強のエース。
他には、隊長格を含めた量産型ドーベルマン。
次々に開発されている武装インフィニティ。
ソして…私達。」
指を折りながら楽しそうに話すアキの姿にシオは何も言えなかった。
アキのこの場に似付かわない声色を聞くたびにシオは頭の中が狂いそうになる位グチャグチャに思考が巡った。
自分達のしていた抵抗は、敵にとって想定内であり目的。
情報収集で命を自分達がかけていた行為も敵にとって脅威ではない。
精々、ネズミに機材を軽く噛まれた程度。
そして、なにより…命をかけた仲間達の死は…?
無駄。
「ジュリ姉ぇ…。」
「相変わらずだネ。
シーちゃん、同じ年なんだから姉も何もないでしョ?
それに…今の私は、アキ。
ノラではなくて、獣人ドーベルマンの一員!」
アキは、キーウェポンを銃形態にしてシオに狙撃。
シオは砦の弾除けを駆使してアキの狙撃を防ぐ。
なんでノラの一員ではないと言っているのに、自分の事を愛称で呼ぶのだろうか。
そんな悔しさに似た思いをギリッと噛み締めて堪えた後に、弾除けに寄り掛かかって壁越しでアキに背を向けた状態で銃形態にしたキーウェポンを構える。
“技の2段”
放たれた3発の風の弾は、別々の方向に広がった後にアキに向かって飛んでいく。
「相変わらず、型にはまらないホープだこト。」
“技の0段 赤(あか)”
アキがそう言うと鎧の隙間から赤い帯が出てきて壁のように集まり風の弾を防いだ。
見た感じだと赤い帯はエグザスと同質のものだろう。
隙間から赤い帯を見たシオはギョッとした表情になる。
「マぁ、エッくん程ではないけどちょっとした血の鎧とグラムじーちゃんが作ったこの鎧があるから…火力があまり強くないシーちゃんの攻撃くらいなら私には届かないと思うヨ。」
アキは、カナたちの方に視線を向ける。
丁度、カナがシュンを抑えた所だ。
だが、ひっかかる。
なんで、援護のサマーはマレばかりの相手をしているのか?
グレーズの能力なら隙を見ながら時おり、狙撃をしてサポートができた筈。
カナを相手にするなら、きっとサポートは欲しい 筈だがカナの相手をしているのはブルーマだけだ。
「…まさか、手を抜いているの?」
「ウん、正解。
今回は、見せしメ?
ノラの最大火力なんて、私達の敵ではないっテ。
他の人達には、人質とかいって揺さぶってここに来させようと思っているけド。」
アキはシオの答えに対して嬉しそうな声をあげて拍手を送る。
拍手の手を止めた後にアキは勿体ぶるような口調で話を始めた。
「…アイクは気がついているんじゃなイ?
私達獣人が、ここの場所を知りながら本気で攻め込んでいない事ヲ。
多分、シーちゃん達には“油断しているから”…なんて言っている筈。
確かに、それも間違いじゃないんだヨ?
実際、それでお星様になったおバカさんがいっぱいいたしシ。
デも、本当は認めたくなかったんだヨ。
…君達が、実験の為に飼われているモルモットって事を。」
シオは、金縛りにあったような感覚に襲われた。
確かに、覚えがない訳ではなかった。
獣人の代表格の一人であるグラムは、自分たちの事をモルモットと呼んでいた。
そして、アイクも積極的に戦力を集めようとしなかった。
仲間集めより、残存のメンバーの能力の底上げを重点においていた。
「私…達…は…獣の、兵器や武装の実験の為に…生かされていた?
飼いならした人間では、簡単に死ぬし思うような結果は得られない。
だったら、自分達がある程度手を抜くことで自分達で考えさせて自分達とは違う考え方やデータの記録をしていたの?」
壁越しでシオは体と声を震わせながらそう言った。
アキは、そんな震えるシオを壁越しだか指差して明るい声で返事を返す。
「セーかイ!
だって、ウチにだって本家獣人様のエースがいるんだヨ?
ダイル、ドレッド、レウス、変態、馬鹿英雄…そして最強のエース。
他には、隊長格を含めた量産型ドーベルマン。
次々に開発されている武装インフィニティ。
ソして…私達。」
指を折りながら楽しそうに話すアキの姿にシオは何も言えなかった。
アキのこの場に似付かわない声色を聞くたびにシオは頭の中が狂いそうになる位グチャグチャに思考が巡った。
自分達のしていた抵抗は、敵にとって想定内であり目的。
情報収集で命を自分達がかけていた行為も敵にとって脅威ではない。
精々、ネズミに機材を軽く噛まれた程度。
そして、なにより…命をかけた仲間達の死は…?
無駄。
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