Nora First Edition

鷹美

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第九話

第9話 8

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ー砦 SAIDー


「ブルーマって奴がヤバイのは知っている。
ダが、俺は仲間の判断を信じる事にしたんだ。」

「うふフ。
相変わらずなんだかんだで優しいんだから“エッくん”。」



エグザスがそう話した時だ。
アキの兜が完全に砕けた。


その素顔は、忘れもしないものだった。



「ジュリ…なのか?」

「半分、正解!!」


アキは、思い切りエグザスを蹴り上げてその場を離れる。
アキの素顔を見たエグザスは完全に無防備になってしまい容易く飛ばされてしまった。

それどころか、倒れたまま硬直状態で小声で“嘘だ”と連呼している。


「なら、ネタバラしだネ。」


シュンがそういうと、シュンとサマーは2体とも兜を外して素顔を見せる。



シュンがコーダ。

サマーがグレーズ。

それが、ドーベルマン・プロトの正体だった。
この流れだと、ブルーマの正体も聞かなくてもわかった。


「ブルーマは、ベルか…。
新しい素材とか言ってたからな、間違いないだろう。」


「…ッ!!

何故でス!!
何故…我々の敵になったのですカ!!

生きてて…自分達がどれだけ嬉しかった事か…貴方達は知っている筈でス!」


カナは、力の限りそう叫んだ。
少しだけ大気が震え、カナも瞳に涙を溜めそして顔を真っ赤にしている。

カナが叫んだ後に少しの静寂がくると、枯れたような声が響く。



「答えは簡単ダ。

彼らは、もう…先に出た名前の人間ではなくなったからダ。」




“エックス”



声の正体は、グラムだった。
空間の歪みからゆっくりと歩いて出てくる。

後ろで両手を組み、猫背にして。


「どういうことだ?」

「人間が理解できるように話すと…健康な肉体に別の魂を入れたというこダ。
植物状態になって空っぽになった魂と器に人工的に作った獣人の意識を埋め込んだのだヨ。

シュンの腕など、手間はかかったが繋げられたし…サマーも重症を負ったが何でことはなイ。

だが、アキは大変だっタ。
大事な臓器が損傷していたから、我々の技術でもほぼ賭けみたいなものだったが…無事に成功タ。

ブルーマは、特に神経を使っタ。

瀕死の一歩手前まで追い込んで、麻酔弾で捕獲。
魂が元気な状態で無理矢理、植物にして獣人の意思を入れタ。

おかげで、誰よりも上手く事が運んダ。」


「つまりベルは、生きたまま実験されたのだな。
…意識があるなか…実験されたんだな!!」



アイクは、鬼のような表情になりグラムに向かっていく。

勿論、アキラは許してはくれないようでアイクの前に立ち塞がったが…アイクには関係ない。
複数のキーウェポンを彼に向かわせる。

感覚を開けてではない。
ほぼ同時の360度攻撃。


彼はしゃがんで、体をできる限り小さくし剣と銃を盾にする。
その防ぎ方は正解で、アイクのキーウェポン達が絡まって殆どがアキラに届いていない。

届いている奴は、しっかりと受け止められている。





「その受け止め方は正解だが、次は回避できるか?」


アイクは、キーウェポンの束をより絡ませてアキラを持ち上げそして投げ飛ばした。

怪我を負わせる程の勢いではなかった為、受身をとって直ぐに向かおうとしたら今度はアリエスがアキラの前を遮る。



「行かせはしないよ。
彼の痛みは…もう限界なんだ。
“サヤ”の時からずっと…耐え続けている。
だからここで発散させて貰わないと、我々が困る。」


アリエスは、強い闘志を宿した瞳でアキラを睨み大鎌を向ける。


マレとハゲとシオは、アキラの後ろに立ってアリエスと挟み撃ちのような形で立っていた。



「…めんどうな事になった。」



アキラは、心底呆れたように項垂れたが直ぐに武器を持ち直してアリエスに向かっていった。
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