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第四話
第4話 4
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†都心ビル 入口ゲート†
「おい、ベルの連絡はまだか。」
「いえ、まだですわ。
でも、いくら手薄にしても時間はかかると思います。
焦らないでください。」
アイクとアンナは、背中を合わせるようにして戦っていた。
シオも、少しだけ離れていたが直ぐに背中を合わせるようにして戻り、三人は三角形になるように立つ。
「もう、ダメ。
ベルのゴーレムなしで、こんなたくさんの相手をしたことが無いんだもん。
こんな大軍を相手に無双できるのって、ハゲとエグザスくらいだよ。」
シオの視線は、ハゲ達にいっていた。
ハゲは、剣形態のキーウエポンを突き出して獣達に突進していく。
エグザスも、両手のキーウエポンを使って獣を斬っている。
「アイク、退路の事をそろそろ考えておけ。
最悪の事態に備えてな。」
エグザスは、アイクの前を横切りながらそう言った。
アンナとシオも不安な表情を浮かべてアイクを見ている。
「…ぁあ。
分かってる。」
「アイク、上だ!」
ハゲは、上を指差した。
上空からコンクリートで出来た球体がふってきた。
「嘘でしょ?」
アイク達は、散るようにして避けた。
違和感の塊である獣の首が生えた球体を見た瞬間に、全員の表情が綻んだ。
ベルは、生きている。
「あのバカに遅れをとるな!
退路の確保をしろ、全員…生きてかえるぞ!!」
「そろそろ、良い加減にしなヨ。」
安堵の声を打ち消すような声が響くと、獣の形で作った鎧をきた獣が現れた。
ビルから飛び降りたのか、ベルが落とした球体の上に着地して。
右手には、デコボコした鉄製の槍が握られていた。
「さて、起きなよフェムト。
このまま負けっぱなしは癪だロ?」
獣鎧は、槍を縦に一回転させてからベルの作った球体から降りる。
鎧が地面に着地すると、球体が割れて拘束されていたフェムトの身体が解放された。
「救援していただき、感謝すル。」
フェムトはフルフルと首を振って意識を元に戻すとハルバートを握り直して、金色と青の瞳でアイク達を睨む。
「…っ、今すぐ撤退だ!
こんな大軍の中で、得体の知れない鎧とバカみたいにタフな獣の相手なんかしてられるか!!」
アイクは、腰にある赤色の煙を吹き出す手榴弾を上空に投げた。
B.K達に知らせるために。
「逃がすカ!」
フェムトは、アイクに向かってハルバートを振り下ろす。
アイクもキーウエポンで、それを受け止めたが獣鎧がアイクの後ろに移動していた。
「背中が、がら空きダ。」
「…っ、周りくらい見たらどうだ!?」
エグザスは、獣鎧を斬り飛ばす。
鎧はかなり強固なようで、キーウエポンを当てた場所が少しヘコんだだけで中身には大したダメージは無さそうだ。
すると、フェムトの肩にコンクリートでできた鳥が止まった。
恐らくベルのゴーレムだろう。
フェムトの肩に止まるのと同時に、ゴーレムは風船のように破裂する。
「…!
ベルも脱出しているから、他で合流する。
今は俺たちの脱出に集中しろ!」
アイクは、ゴーレムの破裂によって怯んだフェムトを押し飛ばすとそう叫んだ。
速さだけに特化した鳥形のゴーレムの破裂は、緊急の脱出要請。
幸い、手榴弾の伝達が届いたお陰でB.Kの狙撃弾数が増えてきた。
チャンスは今だ。
シオとアンナ、ハゲは敵を蹴散らしながら退路を作っていてB.Kの0段で退路のキープをしている。
「エグザス、急ぐぞ。」
「待ッテ待ッテ。
ココニ眼鏡ヲシタ男ヲ見ナカッタ?」
無機質な声が聞こえたと思ったら、中世で良く見る鎧を纏った獣が表れた。
まるて初めからそこにいたような雰囲気で声をかけてきた。
恐らく、フェムトが落ちてきた穴から落ちてきたのだろう。
「…っ、そんな鎧は博物館でしか見たことがないぞ。
…生憎、目当ての奴はいないぜ。」
「アッハッハ、君モ彼ミタイナ事ヲ言ウンダ。
マァ、彼ト違ッテ質問ニハ答エテクレタケド。
目当テノモノヲ見ツケタヨウダカラ、君達ト合流シタト思ッタンダケド…ハテ、何処ニ行ッタノカネェ…。」
アイクは、楽しそうに笑う鎧の手に握る武器を見た。
光とも熱とも言えるエネルギーを纏ったその槍を危険だと思ったアイクは、直ぐに動けるように身を屈める。
アイクの経験と本能が叫ぶ。
コイツは、速いと。
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