ミナトさん旅行記 生ししゃもと温泉編

鷹美

文字の大きさ
上 下
12 / 15

第12話

しおりを挟む
結構な広さの為に、簡易なマップが壁に貼ってあった。
しかし冒険心高めのミナトはそんなものには、頼らない。


「それじゃ、しゅっぱーつ!!」


右手を挙げて前進するミナトは温泉の浅い所を直進して進む。
ちらっと彼女の視界に見えた温度は39℃、熱いお風呂に入る彼女はスタスタと何事もなく通り抜けられるが…オオダは違った。

瞬間移動を連想させる高速の横ステップを踏んで、温泉からでる。
後ろからバシャっと大きな水しぶきの音にびっくりしてミナトが振り返った先にはスンっとした表情のオオダがいた。



「おや、熱いの苦手だっけ?」

「いくらウチでも、いきなりこの温度はびっくりするわ。
この温度を平気な顔していけるのは、ミナトくらいでしょ。」


恨めしそうにミナトの背中をウリウリとボヤキながら拳でグリグリとする。
体に巻いたタオルが取れそうだなと考えながら不貞腐れている彼女を宥めるように後ろ向きの状態で手を回して、ミナトはオオダの頭を撫でた。


「ごめんて。」

「…部屋に戻ったら覚えてろよぉ…絶対に潰してやるからなぁ。」


そういうと機嫌を直してオオダが自分の背中を弄るの止めると再び歩き始める、木造の柱が立つ廊下のような所を進んでいく。
潰すと言うのは十中八九お酒のこと、しかしお酒を買った時点で彼女の計画は既に組み合がっているだろうから今更そんな事を言われても困ることはない。

スピリタスが来ない限りは大丈夫だろうし、後は水をこまめにとれば…などと考えていると大きな風呂が見えた。


「これ、大風呂と言うよりかプールやん。」


入りやすくするための金属の手すりに黒い大理石のような石でできた淵にそこはタイル。
リゾートのような雰囲気も相まって、見た目だけは完全にプールのようだ。

横には寝湯もあり、素材は同じ。


「露店風呂もあるし、一旦ここにはいろうか。」

「御意。」


ミナトの提案に武士のような返事で返すオオダ。
彼女自身が体育会系だからなのもあるが、小動物のようなオオダが武士のような言葉と使っていると彼女の将来が心配になる…人の事は言えないが。

来た道を振り返るような向きで温泉に浸かる2人、廊下を歩いている時は話に夢中で気がつかなかったが…途中でうたせ湯と壺湯が見える。



「あ、あっちにもあったのね。」

「ごめんね、私が肉食系なばかりに…。」


ミナトは視野の狭さを肉食獣の目の付き方に例えて良くそう言っている。
その意図に気が付いて綺麗な舌打ちを響かせるオオダ、女子力の低さと比例してこういうのは上手な彼女。
お前もお前でベタなやつだよ。


「…ミナト…いい?」


チラチラと見ながらそういうオオダ、小柄な彼女が体を小さく丸めてかわいく上目遣いでミナトを見ている。
スタイルと容姿、現在の恰好も相まって相手が男なら落ちないやつはいないだろう、いるとしたらホモか…よほど精神力の強い彼女持ちくらいだろうな。

周りには誰もいないし…プールみたいな見た目の大浴場…なるほど、きっと少しでもいいから泳いでみたいようだ。
ほかのホテルでプールの存在を感じてしまって少し火が火が付いたのかな?


「私の答えはわかっているでしょ?
逆の立場でもアンタは言うじゃない。」

「…御意。」


彼女もダメだとわかっていて聞いたのだろうが…ちょっと不満げな様子だ。
ブクブクと顔を半分沈めて息を吹き出している。

ここはきっとオオダに毒だ。


「ほら、他にもまだまだあるし次に行くよ。」


よしよしとオオダの頭を撫でた後にミナトは風呂から上がり次の場所に向かって歩く。














しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ミナトさんの日常 お引越しの手伝い編

鷹美
エッセイ・ノンフィクション
旅行好きな一般女性のミナト。 暇な友人を誘い旅にでるのが趣味でドライブ、温泉、美味しいものなど何でもござれ そんな彼女は今回は旅行から離れて、お世話になった上司のお引っ越しのお手伝いに呼ばれて手伝いに行ったお話 生ししゃもと温泉編から少し遡った時間帯の彼女のゆるふわな生活の始まり始まり ーーーーーーーー 今回も生ししゃも編と同じように長短編ものでお送りします はじめての旅行記、ファンタジーときてはじめての日常で緊張はしますがよろしくお願いします

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ミナトさん旅行記 登別編

鷹美
エッセイ・ノンフィクション
北海道に住むどこにでもいそうな一般女性ミナト。 レジャー、温泉、うまいものを求めて今回もまったり小旅行。 今回はレジャーが含む為に、財布に打撃を与えてしまうが関係なし。 彼女たちが巡る登別の旅がどうなるかはお楽しみ。 今回もまったりした旅行記のはじまりはじまり。 ーーーーーーー 今回も私の体験を元に超短編の旅行記を作成しました 今回はグルメの成分は薄く、レジャーな感じに仕上がると思います 是非、ミナト達の旅行を除いてやってください

ミナトさん旅行記 ニセコ編

鷹美
ライト文芸
北海道に住むどこにでもいる一般女性ミナト 今回はちょっと奮発した時の話 ニセコと言えば、スキーやカヌー、気球といった大型レジャーで有名だが温泉やワインも有名 娯楽の多いニセコでミナト達は何処をまわっていくのか? 今回もまったり旅行記のはじまりはじまり

アルファポリスでの『書籍化』はナニに魂を売ればデキる?

まみ夜
エッセイ・ノンフィクション
※夢多きお子様は、薄汚い大人にならないように、お読みにならないコトを推奨いたします。 ※個人の感想です。効果、効能を保証するモノでは、ございません。 ※転記は一切許可しておりません。また、引用には著作権法により厳密なルールが定められているので、ご注意ください。 自信満々に物語を書いて、早くも1500ポイント達成かと思っていたら、NEWが取れたら激減。 他の物語に負けないと思っていたのに、お気に入りも一桁、更新しても300ポイント以下。 では、「どうしたらいいか」を前向きに考察をするコラムです。 まずは、「1ページ目を読んでもらえるコトを目標」から始めましょう。 自分が書きたいことを好きに書いているダケで読まれなくていい、という方には無意味な駄文です。 書き手向けの内容ですが、読み専門の方には、より良い物語を探すヒントになる「かも」しれません。 表紙イラストは、lllust ACより、楠あかね様の「魔神」を使用させていただいております。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...