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神部麗美の章
第11話 原罪(改)
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「はぁ、はぁ、はぁ……。」
少年が逝った瞬間、少年のおちんちんだけでなく、少年の身体自体が痙攣で激しくビクビクッと波打ち、少年は激しい息づかいをしたまま固まってしまいました。
少年は、いまだかつてないエクスタシーを感じてしまいました。それは、自分で手淫をする自慰行為では絶対に得られなかったほどの、今までで最高の、言葉では例えようもない、官能的な感覚でした。
それは少年だけでなく、おばさんも同じでした。彼女にとっては、その少年に対する感情が、紛れもなく『可愛い』ではなく『愛しい』という思いを、自らに強く自覚させるほどの感情的な満足感がありました。
おばさんは上体を起こすと少年を抱きしめ、二人とも同じく放心したかのようになって、しばらくの間、抱き合ったままの姿で固まってしまいました。
彼女は、自らの腕の中で息も絶え絶えに放心状態になっている少年の胸の鼓動を、自らの乳房に強く感じ、無上の至福にひたっているおのが心情に、ようやく気付かされました。
一方の少年も、大好きなおばさんの腕の中に抱かれて、このまま永遠に時が止まってしまえば良いのにと、心からそう願っていました。
**********
先に動いて体を離したのはおばさんでした。おばさんも少年とのこの時間の共有を永遠に望みながら、年長の者としての責務は理解していました。
我に返った彼女は、両手で少年の両肩を押さえて、自分の思いを振り切るように少年の体を自分から離しました。
今、落ち着いて冷静さを取り戻した彼女は、自分がとんでもない過ちを犯してしまったということを強く自覚していました。それは未成年者に対する年長者の淫行犯罪です。そして、それはどんな理由があろうと、法律上でも社会的にも道徳的にも絶対に許されないことです。
でも、彼女はそれを後悔はしていません。もし、少年が、女装オナニーを見られたことで、自分の意識の中に拭いきれない罪悪感や汚点を残すことが避けられないならば、彼女はそれ以上の十字架を自ら背負うことで、少年の心の負担を少しでも軽減できれば良いと考えました。
自分でも愚かな考えだと思います。でも、将来、少年にとっての悲しく恥ずかしい嫌な思い出となるであろうものを、そうならないようにしてあげたかった……確かに、やり過ぎではあったかも知れませんが。
もっとも、それもまた後付けのそれらしい理由付けです。あれは、ただ単に彼女が愛する少年にそうしてあげたかっただけのことです。あの時、彼女にとって少年は、単なる甥っ子ではなく、まさしく一人の男性だったのです。
彼女は、少年の両肩に手を置いたまま、そして、顔を真っ赤にしつつ、少年から目線を微妙に外しながら少年に語りかけました。
「今日だけだからね、しんちゃん。……こういうことは、しちゃいけないことだから。……しんちゃんも分かるよね。」
それは、少年に聞かせるとともに、自分に対して言い聞かせる言葉でもありました。そして、そう言われた少年も、言葉を返すかわりに、うなずくことでおばさんからの問いかけを肯定する返事をしたことになります。
「……それに、もう二度とお姉ちゃんの下着にイタズラしないこと。」
おばさんは、少年に対して満面の笑みでそう言いました。それは、少年が見とれてしまうほどの可愛く美しい微笑みでした。彼女は初めてそこで一番の肝心な話しをようやく切り出したのでした。
しかし、いかに笑顔で優しく言われようと、少年はやや顔をこわばらせました。少年にとってもそれが一番の後ろめたさであり、そうなるのは当然のことでした。だからこそ、おばさんはそこで更に言葉を続けたのです。
「……ううん、お姉ちゃんはしんちゃんが着た下着が嫌だなんて思わないし、しんちゃんがお姉ちゃんの下着を着ることだって、全然、構わないの。……それどころか、お姉ちゃんはとっても嬉しかった。」
笑顔で言ったおばさんは、そこで言葉を区切りました。少年は体全体をこわばらせたまま、じっとおばさんの話しを聞いています。
「でも、これからのしんちゃんのためには、変なクセがつかない方が良いと思う。……しんちゃん、約束してくれる? 」
最後のおばさんの言葉は、少年に返答を促す言葉でした。ですので、その時は、顔を赤くしながらも、彼女の視線は真っ直ぐに少年を見据えていました。もはや、少年は首肯くしかありませんでした。
でも、少年は、この時、下着へのイタズラを否定的に叱られたのではなく、これからの成長のためにはしない方が良いと言われたのでした。現在の行動の否定ではなく、おばさんは少年の未来を語ってくれたのでした。少年はこの優しい女神によって、またここでも救われたのです。
「分かってくれて、ありがとう、しんちゃん。……お姉ちゃんも、可愛い妹が出来たみたいで嬉しかったけど、……でも、やっぱりダメだよね。しんちゃんのためにも、きっとこういうことはやめた方が良いんだと思う。」
少年には、それが、おばさんの下着で自慰行為をすることなのか、おばさんとこんな関係を持ってしまったことなのか、どちらを意味することか良く分かりませんでした。でも、何となく言葉を続けることが出来ず、聞きそびれてしまいました。
「しんちゃんから大好きと言われて本当にお姉ちゃんは嬉しいの。だけど、女の子の下着を着るのはもうやめようね。しんちゃんのお母さんには内緒にしてあげるから、約束してくれる? 」
ここまではおばさんの予定通りだったかもしれません。しかし、その後の少年の反応は彼女の想定を超えるものでした。
「うん、……わかった。……でも。」
「ん? ……でも、なに? 」
少年はためらいがちに、言うべきかを迷っているような雰囲気でしたが、意を決したように話し始めました。
「……ぼく、……お姉ちゃんのこと、大好きだから。……ぼく、もう少し大人になったら、お姉ちゃんを……レミねぇを、ぼくのお嫁さんにほしい。」
予想もしていなかった少年からの申し出に、おばさんは、声を失うほど、びっくりしてしまいました。
しかし、少年は大真面目でした。自分の心の底からの真摯な願いを聞き届けてもらおうと、必死に言葉を続けます。
「……ぼく、大人になったら、一生懸命に働くから、……ずっとお姉ちゃんと一緒にいたい。ずっとお姉ちゃんのそばにいたい。」
少年は必死でした。今になっておばさんの下着にイタズラしたことの重大性に気づいたのです。もう、おばさんとは会えないのか?そんなことは絶対に嫌だ!その危機感が、少年に本当の自分の気持ちを気付かせたのでした。
自分はおばさんとずっと一緒に暮らしたい、おばさんがいない生活なんて考えられない、……今までおばさんがいる生活が当たり前だった少年は、初めて自分の夢や想いが具体性を帯びて頭の中に思い描かれたのでした。
最後に少年は愛する女性の目を見つめながら、しっかりと思いを伝えました。
「……お姉ちゃん、ぼくのお嫁さんになってくれませんか。お願いします。」
当のおばさんにすれば、中学1年生の甥っ子からの正面切っての正々堂々ストレートなプロポーズです。大好きな可愛い甥とは言え、おばさんとしては驚くのが当たり前です。まして、自分の本当の思いに気付いた今となっては、お互いの愛情が確認された瞬間なのです。
しかし、おばさんは社会的な分別をわきまえた大人でした。もちろん、彼女はびっくりしたような顔になりましたが、すぐにとても嬉しそうな顔をしました。
「ありがとう。しんちゃんがプロポーズしてくれるなんて、お姉ちゃん、すごく嬉しい。」
おばさんは本当に嬉しい気持ちを表しているかのように、再び、少年を抱きしめました。そして、そこまではまさに彼女にとって嘘いつわりのない本心でした。
「ほんと! ……じゃあ。」
少年は瞳をキラキラさせて嬉しそうです。そして、おばさんは身体を離して改めて少年に向き直り、更に言葉を続けます。
「しんちゃんがおっきくなった頃には、お姉ちゃん、お婆ちゃんになっちゃうから。……でも、それまで、誰もお姉ちゃんをお嫁さんにもらってくれなくて、しんちゃんも別の好きな人がまだいなかったら……、シワシワのお婆ちゃんで良かったら、しんちゃん、お姉ちゃんをお嫁さんにもらってくれる? 」
それは、少年をいたわる、おばさんの優しい気遣いの嘘でした。大人が子供を婉曲にだます、悲しい否定の言葉でした。
少年としても、うまくはぐらかされているような気持ちになったことは否めません。しかし、結婚したいくらいおばさんが大好きだとの思いを直接に伝えられたことで、少年の欲求の半分くらいは充足できたようです。
「うん、お姉ちゃんがぼくのお嫁さんになってくれるなら、ぼくもお姉ちゃんの下着を……その、イタズラなんか、もうしない。」
そう言って、少年は小指を突き出しました。
「ありがとう、しんちゃん。お姉ちゃんが誰にももらってもらえない時は、売れ残りのお婆ちゃんで悪いけど、お姉ちゃんをしんちゃんのお嫁さんにして。」
そう言って、おばさんも右手の小指を出して、少年の小指に自分の小指をからませました。子供の頃からの少年とおばさんの約束する時の決まりです。
「大丈夫、お姉ちゃんはお婆ちゃんなんかにはならない。ぼくには、ずっと綺麗で優しいお姉ちゃんのままだから。」
そしてふたりは、にこやかに見つめあって指切りをしました。スリップ姿のおばさんとスリップ姿の女装少年は、少年が小学生の時からよくそうしているように、腕を大きく振って指切りげんまんをしたのでした。
傍目には、ちょっとボーイッシュな妹と、歳の離れた美しい姉との、仲の良い姉妹が下着姿で指切りしているようにしか見えませんでした。
(しんちゃん、ありがとう。……今、わかったよ。お姉ちゃんも本当にしんちゃんを愛してるみたい。わたしも、しんちゃんとずっとずっと一緒に暮らしたい。……でも、きっとそれは許されないことだよね。)
少年は、とても嬉しいのでしたが、ふと気づくと、おばさんの目が潤んで少し赤くなっているのに気づきました。
「レミお姉ちゃん、なんで泣いているの? 」
おばさんの目尻に小さく光るものがあります。
「な、泣いてなんか、いないわよ。……しんちゃんからプロポーズされて、嬉しすぎちゃって、ちょっと……感激しちゃった。」
そう言って目尻を指で拭ったおばさんは、鼻もグスッグスッとしていました。
恐らく、半分はおばさんの言う通りでしょう。でも、半分は結果的に純粋な心根の少年を騙してやしないかという後悔と、決して結ばれてはいけない自分たちの運命に対する悲しみであったことでしょう。
しかし、今の少年には、おばさんとの二人だけの秘密の約束、なぜかそれがとても嬉しく感じられたのでした。
一方で、それと同時に半ば強制的に約束させられたことで、もう、おばさんのスリップを着てのひとり遊びが出来なくなるんだと、時間の経過とともに少年には悲しく思えてくることでしょう。
この時の少年は、まだ理解ができませんでした。……おばさんの本当の苦悩を。
それは少年の想像を超えていました。おばさんの犯した過ちに、おばさんがこれからひとり苦しめられることになろうとは、まだ中学1年生の13歳の少年には考え及ばないところでした。
少年が逝った瞬間、少年のおちんちんだけでなく、少年の身体自体が痙攣で激しくビクビクッと波打ち、少年は激しい息づかいをしたまま固まってしまいました。
少年は、いまだかつてないエクスタシーを感じてしまいました。それは、自分で手淫をする自慰行為では絶対に得られなかったほどの、今までで最高の、言葉では例えようもない、官能的な感覚でした。
それは少年だけでなく、おばさんも同じでした。彼女にとっては、その少年に対する感情が、紛れもなく『可愛い』ではなく『愛しい』という思いを、自らに強く自覚させるほどの感情的な満足感がありました。
おばさんは上体を起こすと少年を抱きしめ、二人とも同じく放心したかのようになって、しばらくの間、抱き合ったままの姿で固まってしまいました。
彼女は、自らの腕の中で息も絶え絶えに放心状態になっている少年の胸の鼓動を、自らの乳房に強く感じ、無上の至福にひたっているおのが心情に、ようやく気付かされました。
一方の少年も、大好きなおばさんの腕の中に抱かれて、このまま永遠に時が止まってしまえば良いのにと、心からそう願っていました。
**********
先に動いて体を離したのはおばさんでした。おばさんも少年とのこの時間の共有を永遠に望みながら、年長の者としての責務は理解していました。
我に返った彼女は、両手で少年の両肩を押さえて、自分の思いを振り切るように少年の体を自分から離しました。
今、落ち着いて冷静さを取り戻した彼女は、自分がとんでもない過ちを犯してしまったということを強く自覚していました。それは未成年者に対する年長者の淫行犯罪です。そして、それはどんな理由があろうと、法律上でも社会的にも道徳的にも絶対に許されないことです。
でも、彼女はそれを後悔はしていません。もし、少年が、女装オナニーを見られたことで、自分の意識の中に拭いきれない罪悪感や汚点を残すことが避けられないならば、彼女はそれ以上の十字架を自ら背負うことで、少年の心の負担を少しでも軽減できれば良いと考えました。
自分でも愚かな考えだと思います。でも、将来、少年にとっての悲しく恥ずかしい嫌な思い出となるであろうものを、そうならないようにしてあげたかった……確かに、やり過ぎではあったかも知れませんが。
もっとも、それもまた後付けのそれらしい理由付けです。あれは、ただ単に彼女が愛する少年にそうしてあげたかっただけのことです。あの時、彼女にとって少年は、単なる甥っ子ではなく、まさしく一人の男性だったのです。
彼女は、少年の両肩に手を置いたまま、そして、顔を真っ赤にしつつ、少年から目線を微妙に外しながら少年に語りかけました。
「今日だけだからね、しんちゃん。……こういうことは、しちゃいけないことだから。……しんちゃんも分かるよね。」
それは、少年に聞かせるとともに、自分に対して言い聞かせる言葉でもありました。そして、そう言われた少年も、言葉を返すかわりに、うなずくことでおばさんからの問いかけを肯定する返事をしたことになります。
「……それに、もう二度とお姉ちゃんの下着にイタズラしないこと。」
おばさんは、少年に対して満面の笑みでそう言いました。それは、少年が見とれてしまうほどの可愛く美しい微笑みでした。彼女は初めてそこで一番の肝心な話しをようやく切り出したのでした。
しかし、いかに笑顔で優しく言われようと、少年はやや顔をこわばらせました。少年にとってもそれが一番の後ろめたさであり、そうなるのは当然のことでした。だからこそ、おばさんはそこで更に言葉を続けたのです。
「……ううん、お姉ちゃんはしんちゃんが着た下着が嫌だなんて思わないし、しんちゃんがお姉ちゃんの下着を着ることだって、全然、構わないの。……それどころか、お姉ちゃんはとっても嬉しかった。」
笑顔で言ったおばさんは、そこで言葉を区切りました。少年は体全体をこわばらせたまま、じっとおばさんの話しを聞いています。
「でも、これからのしんちゃんのためには、変なクセがつかない方が良いと思う。……しんちゃん、約束してくれる? 」
最後のおばさんの言葉は、少年に返答を促す言葉でした。ですので、その時は、顔を赤くしながらも、彼女の視線は真っ直ぐに少年を見据えていました。もはや、少年は首肯くしかありませんでした。
でも、少年は、この時、下着へのイタズラを否定的に叱られたのではなく、これからの成長のためにはしない方が良いと言われたのでした。現在の行動の否定ではなく、おばさんは少年の未来を語ってくれたのでした。少年はこの優しい女神によって、またここでも救われたのです。
「分かってくれて、ありがとう、しんちゃん。……お姉ちゃんも、可愛い妹が出来たみたいで嬉しかったけど、……でも、やっぱりダメだよね。しんちゃんのためにも、きっとこういうことはやめた方が良いんだと思う。」
少年には、それが、おばさんの下着で自慰行為をすることなのか、おばさんとこんな関係を持ってしまったことなのか、どちらを意味することか良く分かりませんでした。でも、何となく言葉を続けることが出来ず、聞きそびれてしまいました。
「しんちゃんから大好きと言われて本当にお姉ちゃんは嬉しいの。だけど、女の子の下着を着るのはもうやめようね。しんちゃんのお母さんには内緒にしてあげるから、約束してくれる? 」
ここまではおばさんの予定通りだったかもしれません。しかし、その後の少年の反応は彼女の想定を超えるものでした。
「うん、……わかった。……でも。」
「ん? ……でも、なに? 」
少年はためらいがちに、言うべきかを迷っているような雰囲気でしたが、意を決したように話し始めました。
「……ぼく、……お姉ちゃんのこと、大好きだから。……ぼく、もう少し大人になったら、お姉ちゃんを……レミねぇを、ぼくのお嫁さんにほしい。」
予想もしていなかった少年からの申し出に、おばさんは、声を失うほど、びっくりしてしまいました。
しかし、少年は大真面目でした。自分の心の底からの真摯な願いを聞き届けてもらおうと、必死に言葉を続けます。
「……ぼく、大人になったら、一生懸命に働くから、……ずっとお姉ちゃんと一緒にいたい。ずっとお姉ちゃんのそばにいたい。」
少年は必死でした。今になっておばさんの下着にイタズラしたことの重大性に気づいたのです。もう、おばさんとは会えないのか?そんなことは絶対に嫌だ!その危機感が、少年に本当の自分の気持ちを気付かせたのでした。
自分はおばさんとずっと一緒に暮らしたい、おばさんがいない生活なんて考えられない、……今までおばさんがいる生活が当たり前だった少年は、初めて自分の夢や想いが具体性を帯びて頭の中に思い描かれたのでした。
最後に少年は愛する女性の目を見つめながら、しっかりと思いを伝えました。
「……お姉ちゃん、ぼくのお嫁さんになってくれませんか。お願いします。」
当のおばさんにすれば、中学1年生の甥っ子からの正面切っての正々堂々ストレートなプロポーズです。大好きな可愛い甥とは言え、おばさんとしては驚くのが当たり前です。まして、自分の本当の思いに気付いた今となっては、お互いの愛情が確認された瞬間なのです。
しかし、おばさんは社会的な分別をわきまえた大人でした。もちろん、彼女はびっくりしたような顔になりましたが、すぐにとても嬉しそうな顔をしました。
「ありがとう。しんちゃんがプロポーズしてくれるなんて、お姉ちゃん、すごく嬉しい。」
おばさんは本当に嬉しい気持ちを表しているかのように、再び、少年を抱きしめました。そして、そこまではまさに彼女にとって嘘いつわりのない本心でした。
「ほんと! ……じゃあ。」
少年は瞳をキラキラさせて嬉しそうです。そして、おばさんは身体を離して改めて少年に向き直り、更に言葉を続けます。
「しんちゃんがおっきくなった頃には、お姉ちゃん、お婆ちゃんになっちゃうから。……でも、それまで、誰もお姉ちゃんをお嫁さんにもらってくれなくて、しんちゃんも別の好きな人がまだいなかったら……、シワシワのお婆ちゃんで良かったら、しんちゃん、お姉ちゃんをお嫁さんにもらってくれる? 」
それは、少年をいたわる、おばさんの優しい気遣いの嘘でした。大人が子供を婉曲にだます、悲しい否定の言葉でした。
少年としても、うまくはぐらかされているような気持ちになったことは否めません。しかし、結婚したいくらいおばさんが大好きだとの思いを直接に伝えられたことで、少年の欲求の半分くらいは充足できたようです。
「うん、お姉ちゃんがぼくのお嫁さんになってくれるなら、ぼくもお姉ちゃんの下着を……その、イタズラなんか、もうしない。」
そう言って、少年は小指を突き出しました。
「ありがとう、しんちゃん。お姉ちゃんが誰にももらってもらえない時は、売れ残りのお婆ちゃんで悪いけど、お姉ちゃんをしんちゃんのお嫁さんにして。」
そう言って、おばさんも右手の小指を出して、少年の小指に自分の小指をからませました。子供の頃からの少年とおばさんの約束する時の決まりです。
「大丈夫、お姉ちゃんはお婆ちゃんなんかにはならない。ぼくには、ずっと綺麗で優しいお姉ちゃんのままだから。」
そしてふたりは、にこやかに見つめあって指切りをしました。スリップ姿のおばさんとスリップ姿の女装少年は、少年が小学生の時からよくそうしているように、腕を大きく振って指切りげんまんをしたのでした。
傍目には、ちょっとボーイッシュな妹と、歳の離れた美しい姉との、仲の良い姉妹が下着姿で指切りしているようにしか見えませんでした。
(しんちゃん、ありがとう。……今、わかったよ。お姉ちゃんも本当にしんちゃんを愛してるみたい。わたしも、しんちゃんとずっとずっと一緒に暮らしたい。……でも、きっとそれは許されないことだよね。)
少年は、とても嬉しいのでしたが、ふと気づくと、おばさんの目が潤んで少し赤くなっているのに気づきました。
「レミお姉ちゃん、なんで泣いているの? 」
おばさんの目尻に小さく光るものがあります。
「な、泣いてなんか、いないわよ。……しんちゃんからプロポーズされて、嬉しすぎちゃって、ちょっと……感激しちゃった。」
そう言って目尻を指で拭ったおばさんは、鼻もグスッグスッとしていました。
恐らく、半分はおばさんの言う通りでしょう。でも、半分は結果的に純粋な心根の少年を騙してやしないかという後悔と、決して結ばれてはいけない自分たちの運命に対する悲しみであったことでしょう。
しかし、今の少年には、おばさんとの二人だけの秘密の約束、なぜかそれがとても嬉しく感じられたのでした。
一方で、それと同時に半ば強制的に約束させられたことで、もう、おばさんのスリップを着てのひとり遊びが出来なくなるんだと、時間の経過とともに少年には悲しく思えてくることでしょう。
この時の少年は、まだ理解ができませんでした。……おばさんの本当の苦悩を。
それは少年の想像を超えていました。おばさんの犯した過ちに、おばさんがこれからひとり苦しめられることになろうとは、まだ中学1年生の13歳の少年には考え及ばないところでした。
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