星は五度、廻る

遠野まさみ

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清泉皇帝

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あんなことがあったからなのか、それともそれ以前からそうだったのか。麗華は寝ても覚めても星羽のことを考えるようになった。

美琪や惠燕とは違って権力への欲のない様子、勉強家なところ、麗華のことを受け入れてくれているところ、何時も透明な黒の瞳に笑みを浮かべていること。そしてその瞳が、麗華を見ると嬉しそうに細められること。

麗華には決して女知音の気はなかったつもりだった。それがあの一瞬だけでこんなにかわってしまうなんて! 麗華は胸に手を当てて己の心を考えた。

今日も星羽の誘いを受けてお茶を飲みに来ている。ゆったりとした服装から垣間見える手首や指は白くて長い。茶碗に口を付けていた星羽が麗華の視線に気が付いて、どうかしましたか? と尋ねてきた。

「い……、いいえ! なんでも!」

慌てて目を逸らすが、頬が熱いので赤くなっているのは丸わかりだろう。星羽が変に思わなければいいが……。

「ふふ。麗華さまは元気なのが一番ですよ」

そう言ってまたお茶に口を付ける星羽は麗華の心を分かってて言ってるんだろうか。ちょっと問い詰めてやろうか、と思った時に、宮の外から騒ぎが聞こえた。

「た……、大変だあ! 陛下がお亡くなりになっている……っ!!」

「なんですってっ!?」

「……っ!!」

麗華と星羽はガタンと椅子から立ち上がり、扉の外に右往左往する宦官たちの一人を引き留めた。

「陛下がお亡くなりにって、一体どういうことですかっ!?」

「分かりませんっ! 美琪さまと惠燕さまも同じお部屋で息が浅くなっておられて……っ!」

言われたことが理解できない。

(どういうこと? 美琪さまや惠燕さまと同じ部屋で?)

やはり子を成したのは美琪か惠燕だったのだろうか。親子ともども殺されてしまうとは、きな臭い。嫌な予感がする。
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