星は五度、廻る

遠野まさみ

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三人の妃

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「いえ。このまま少し、お話をしましょう」

「え」

読書が好きな星羽が麗華の為に時間を割いてくれるの? それって凄く好意的な態度じゃない?

そう思っていたら、星羽は女官に命じてお茶を用意させる。本当に麗華と腰を据えて話をするつもりなんだ。麗華は勧められるままに椅子に座り、星羽と顔をつき合せた。

「貴女のその瞳、本当に美しいですね。まるで翡翠のよう。ご両親はさぞご自慢だったでしょう」

麗華は両親から自慢に思われたことはなかった。
花淑はどうだっただろう。手紙では両親と仲違いしたなどの言葉は出てこなかったけど、愛されているかどうかは書いてなかった。
両親が、武勲の証である翠の瞳に何を思っていたのか、聞いたことはなかった。そんな麗華に出来たのは、

「ありがとうございます……」

そう応えることだけだった。

それを察したのか、星羽は話を変えた。

「貴女、星を見ることはお好き?」

星空を眺めるのは好きだ。はい、と応えると、新月の夜にまたいらっしゃい、と言われた。

「この宮は北に窓が取られていて、北極星をはじめとした北の空が一望できるの。今は満月の頃だから、また半月後に此処にいらっしゃい」

後宮に来て、はしばしの視線から歓迎されていないことは分かっていた。そんな中、星羽は麗華とまたの約束をしてくれようとしている。嬉しくて大きく頷いた。

「半月後が楽しみね」

星羽はそう言って綺麗に笑った。化粧をしていなくても透明な笑みは美しく、麗華は後宮(ここ)でいい人に出会えてよかった、と初めて思った。

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