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三人の妃
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しおりを挟む後宮というところは、麗華が思っていたよりもうんと大きくて、うんと美しかった。庭や池には花が咲き乱れ、宮も、壁から建具から家具寝台に至るまで、贅を尽くされている。
麗華は初日に与えられた宮を見て、あんぐりと口を大きく開けたものだ。そんな麗華の田舎臭い仕草を女官たちが胡散臭そうな目で見ていたのを麗華は知っている。
ひそひそと、朱家も落ちたものだわ、とか、あの瞳では貰い手はあるまい、陛下の気まぐれに感謝しているだろうね、などと言われた。
花淑になりきるなら、もっと上品にして居なきゃ駄目だ、と思い、与えられた部屋で朱家で習ってきたことを復習したりした。その為、宮入りしてから三日間は与えられた部屋に閉じこもっていた。
その様子を見かねて声を掛けてくれたのが、女官の依林だった。依林はそれぞれの宮に居る妃は良い方ばかりですよ、と微笑んだ。
「まずはご挨拶からです、麗華さま。
今、後宮には三人の妃がいらっしゃいます。官吏である武郭さまのお嬢さまの美琪さまと、別の官吏の胡瑞博さまのお嬢さまの惠燕さま、それに五年前にいらっしゃった紫星羽さまです」
冷帝は政に熱心で、後宮に妃を入れることにあまり熱心ではないと言う。そういう中で後宮に召し上げられた人たちだから人格者ばかりだし、麗華も自信を持っていい、と依林に言われた。
「今丁度、美琪さまと惠燕 さまがご一緒にお茶をしていらっしゃいます。お二人とも仲が良くていらっしゃいますから、きっと麗華さまとも話が弾むと思います」
そう言って美琪の宮を一緒に訪れた。扉の向こうには二人の美女が居て、そのかんばせの美しさ、佇まい、身に着けるもの豪奢さに麗華は恐れおののいた。
(こ……、こんな美しい方たちがいらっしゃるのね……。流石の冷帝も、この方たちなら心を奪われるだろうな……)
「美琪さま、惠燕さま。この度後宮に上がられた朱麗華さまでございます。宮入りして三日が経ちましたが、身の回りが片付きましたので、先ずはご挨拶をと思い、訪問させて頂きました」
依林が淀みなく二人の妃に麗華を取り次ぐ。麗華は依林に続いてお辞儀をした。
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