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廻る、運命の輪
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しおりを挟む「老師! 大丈夫ですか!?」
「あたしゃ何ともないよ。なんたって毎日鍛えているからね。
それに、麗華はこんな脅しにのらなくたっていい。あの両親はあんたを見捨てたんだ。
今頃、売る恩もないのに恩着せがましいこと言ってきて、ずる賢いったらないよ。
おまけに都と言えば、ついこの前まで皇帝の座を争って諍いが続いていたばかりじゃないか。そんな場所に麗華を行かせられないよ」
確かに父からの手紙はそう読めるのかもしれない。しかし、姉からの手紙では、もしかして子威との婚約も解消してしまうのかもしれないと思うと、恋焦がれた相手だろうに、それは可哀想だと思う。
それに権力争いの真っ最中ならともかく、今は皇帝の座は冷帝で決まっている。権力争いに巻き込まれる可能性は低い。
麗華はこの町で周りの人にやさしく囲まれて、貧しくも幸せに育った。瞳の色のことを理解してくれると後ろ指を指す人も居なくなり、花淑のように陰口を叩かれることもなくなった。
親の愛には恵まれなかったけど、麗華はもしかしたら花淑よりも恵まれていたのかもしれない。
「でも、老師。このままだと花淑お姉さまは好きな人と結婚できなくなってしまうんです。そんな悲しいこと、私、我慢できません。
私は今までお姉さまに気遣ってもらったわ。手紙も文箱いっぱいになってしまうくらいに貰っているの。そ
れに対して私が返せたことはこれまで一つもなかった……。そう思うと、このお話は、私がお姉さまを助けるために、受けるべきだと思うの。
それに、お父さまもお母さまも、『役割』を果たそうとする私を少しは見直してくれるかもしれないじゃない?」
麗華が強い決意でそう言うと、老師は、本当に良いのかい? と問うた。
「少し……、噂の皇帝の話は怖いと思ってますけど、大きな間違いをしなければ命は助かるでしょうし、翠の目も、見飽きたら捨てられるだけです。
そうなったらまたこの店に戻ってきますから、その時はご恩返しの続きをさせてくださいね。もしうまく宮仕えが出来たら、老師の薬を売り込んで来るわ!」
麗華がにこりと微笑むと、老師は力なく笑った。
「あんたのその真っすぐな翠の瞳、あたしゃ好きだけどねえ……。あんたの性格と同じく」
老師の言葉に麗華は笑った。
「私も老師の事、大好きよ! また戻ってくるから、その時まで私の部屋は取っておいてね!」
老師にぎゅうっと抱き付くと、老師の手が麗華の背をぽんぽんと撫ぜた。それがあたたかくて、涙が出てしまいそうだった。
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