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平穏な暮らし
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「老師、今日摘んできた薬草です」
麗華はそう言って、籠いっぱいに摘んできた薬草を干し網に並べて庭に干した。乾燥させたら薬箱に保管し、処方するときに薬碾(やくてん)ですりつぶして必要な薬草と調合して販売する。
「ありがとうよ、麗華。じゃあ、桂枝湯芍薬を調合してくれんか。前のお客さんで甘草を切らしてしまっていたんだよ」
「はあい」
麗華は返事をして作業台に向かった。
麗華が世話になっている老師は星読みで薬売りだ。若い頃は星読みだけで生計を立てていたらしいが、そのうちにこの詞華国に内乱が起こり、傷付いた兵士に薬草を塗ってやったら大層喜ばれたとかで、それ以来薬も作るようになったそうだ。
その時は主に外用薬を調合していたらしいが、内乱が収まって世が平和になった頃合いに、人から預かった麗華に老師が教えた星読みで老師の星を読ませたら、「この先老師の星に追随する吉星が出てくる。それが老師と麗華を助ける星になる」と出て、それ以来人の『未来』を占う星読みの仕事の傍ら、人を『今』内面から助ける薬売りの仕事を始めた。
今思えば、子供の麗華に自分の人生を読ませて信じてくれた老師は懐が深い。はじめは内服薬の薬草も手探りで集め始めて上手くいかないこともあった。それなのに老師は麗華を責めたりせずに、むしろ星を読むときにはこうするんだよ、と言って、星読みのコツを教えてくれたりした。
時には自分に近しい星読みの客の仕事を麗華にやらせたりしてくれた。麗華も老師に教えてもらったように、上手く読めなさそうなときはその人に近い持ち物や、時には遺品に手で触れて、その物からさえもその人の星の巡りを読むことを心掛けて来た。
薬草の調合は、どの店でも同じ調合のものもあれば、店ごとにまったく秘密の調合をしているものもあり、老師の店では今では薬の種類を増やし、手広く人々を癒す薬を作っている。
麗華が忙しい老師の代わりに遠くまで薬草を取りに行けるようになったので、結果として老師の薬目当てで店に来る人には星読みを、星読み目当てで来る人には薬を勧めることが出来て商売上々だった。
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