料理男子、恋をする

遠野まさみ

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恋をしよう

お味はいかが(3)-1

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翌々週、薫子の家を訪れると、もう買い物に行く準備は出来ていた。ゲームは電源が切られていて、コートも羽織っている。

「今日は何が食べたいですか?」

尋ねると、笑顔全開で、何でも! という元気な答えが返ってきた。それ、料理人が一番いやな答えだ。でも逆に料理人を信頼してくれているのだということもわかる。

「前回和風でしたから、今回は洋風にしましょうか? ジャーマンポテトなんてどうですか? ビールに合います」

佳亮は薫子の冷蔵庫にビールが入っているのを思い出して提案した。直ぐに薫子が了承する。

「ビールに合うご飯! いいね、理想的だね!」

「じゃあ。そうしましょう。野菜は、ピーマン類をさっと炒めたものにしましょうか。彩りを考えないと」

そう言いながらマンションを出る。佳亮の持ち物のエコバッグを持ってスーパーに出かけた。

買うものは、ソーセージとジャガイモ、アンチョビ、ニンニク、とろけるチーズ。それとピーマン、パプリカ、マイタケに塩昆布とごま油だ。

「二日食べられたほうが良いですよね。量は調節しますので」

「なんてできるコックさんなのかしら! お姉さん、花丸百点あげちゃう!」

嬉々として言う薫子を、まるで子供相手にしているみたいだなと思った。思えば(自称)お姉さんである薫子を、年上だと思えたことが出会ってから一度もない。まだ会うのは五回目だけど。

佳亮の横で上機嫌に歩く薫子を盗み見る。黒のコート、黒のタートルネック、黒のデニム。明るい茶色の髪にやはり黒のニット帽。此処まで黒づくめの人もなかなか居ないんじゃないだろうか。髪色が華を添えていると言えば聞こえがいいが、構わないファッションなのではないかと思う。

思えば薫子の部屋にも飾り気はなく、機能性重視のハンガーラックに今着ている黒のコートと二着ほどのジャケットとパンツスーツしか掛かっていなかった。ニットやスウェット類を収納するのであろう引き出しはラックの横に置いてあった。机はなく、部屋の真ん中にラグとテーブル。ベッドカバーも清潔感を求めたのかブルーの無地だ。

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