17 / 46
恋をしよう
薫子の謎(1)-1
しおりを挟む
食事を作って欲しい、と薫子は言った。突拍子もない頼みに、佳亮は最初尻込みした。しかし、薫子は久しぶりに人の為に作った料理を喜んで食べてくれて、佳亮の気持ちを救ってくれた恩人でもある。平日は無理でも土日のどっちかなら月に二回程度何とかなる、と二つ返事でOKした。
そんなわけで、今日は薫子と都内の雑貨店に買い物に来ていた。薫子の家には、鍋がひとつと電気ポットがひとつしかない。かろうじて鍋がフッ素加工だったのは褒めてもいいだろう。しかし、これから佳亮が薫子の家で料理を作ろうとしたら、圧倒的に道具が足りない。今日はそれを買いに来たのだ。
「鍋とフライパンを大きさそれぞれひと揃え欲しいですね。あとは包丁と食器ですか」
「なんでもいいわ。佳亮くんに任せる」
自分の食事のことなのに投げやりな薫子に多少カチンときたが、料理を全くしないのであれば興味がわかないのも仕方ない。佳亮が品をチョイスすることにした。
「鍋類はそのまま冷蔵庫に入れられるように取っ手が取れるものが良いですよね。薫子さん、作り置きして欲しいでしょう」
「そりゃあ、勿論よ。美味しいご飯が食べられる日が何日もあるんだったら、それだけ幸せだわ」
フロアを探して鍋とフライパンを見繕っていく。佳亮が自宅で使っている大きさと同じ大きさの、フッ素加工の丁度いいものがあった。鍋もなるべく佳亮の家のものと大きさを揃える。自分が使いやすいようにだ。
食器も買った。作り置きをする用に、大きめのものが中心だ。小分けの皿などは薫子がもともと持っている物で足りるだろう。あとは調理アイテムだ。薫子の家には菜箸すらもなかった。お玉やフライ返し、大きな包丁など、勿論ない。カレーを作るときに使った包丁は果物を切るための小さな包丁だった。あれでは本格的に料理をするのに向かない。
そんなわけで、今日は薫子と都内の雑貨店に買い物に来ていた。薫子の家には、鍋がひとつと電気ポットがひとつしかない。かろうじて鍋がフッ素加工だったのは褒めてもいいだろう。しかし、これから佳亮が薫子の家で料理を作ろうとしたら、圧倒的に道具が足りない。今日はそれを買いに来たのだ。
「鍋とフライパンを大きさそれぞれひと揃え欲しいですね。あとは包丁と食器ですか」
「なんでもいいわ。佳亮くんに任せる」
自分の食事のことなのに投げやりな薫子に多少カチンときたが、料理を全くしないのであれば興味がわかないのも仕方ない。佳亮が品をチョイスすることにした。
「鍋類はそのまま冷蔵庫に入れられるように取っ手が取れるものが良いですよね。薫子さん、作り置きして欲しいでしょう」
「そりゃあ、勿論よ。美味しいご飯が食べられる日が何日もあるんだったら、それだけ幸せだわ」
フロアを探して鍋とフライパンを見繕っていく。佳亮が自宅で使っている大きさと同じ大きさの、フッ素加工の丁度いいものがあった。鍋もなるべく佳亮の家のものと大きさを揃える。自分が使いやすいようにだ。
食器も買った。作り置きをする用に、大きめのものが中心だ。小分けの皿などは薫子がもともと持っている物で足りるだろう。あとは調理アイテムだ。薫子の家には菜箸すらもなかった。お玉やフライ返し、大きな包丁など、勿論ない。カレーを作るときに使った包丁は果物を切るための小さな包丁だった。あれでは本格的に料理をするのに向かない。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる