15 / 18
二章 元パーティメンバーを救え?
第15話 【side:サンタナ】追放した側は、クエスト失敗が連続した末に、泥沼へとしての道をいく。
しおりを挟む
ヨシュアが新たな栄光の道を歩み始めた一方、『彗星の一団』は受難の時を迎えていた。
「……僕がこんなに任務を失敗するなんて、ありえない」
上級ギルドのラウンジ。
ホセ・サンタナは、顔をやりどころのない怒りに歪めて、拳を握りしめる。
連戦連敗が進行形で続いているのだから、無理もないことだった。
それも、不調は顕著なものだった。
クエストの対象魔物にたどりつくどころか、その序盤も序盤で阻まれるのだ。
原因不明。
サンタナはそう決め付けていたが、他のパーティーメンバーまでは、同じでなかった。
(…………ヨシュアくんがいないせいだ。うちらが勝ってたのは、影で守ってもらっていたから……)
とくに、ソフィアははっきり理由に気づいていた。
幼い頃から、ヨシュアのそばにいただけのことはある。
その超越的な強さは、身にしみて分かっていた。
けれど、言えばサンタナの気に触れるのは間違いない。
そう考えた末、なにも言い出せていなかった。
ちなみに、ルリは不在にしていた。
ヨシュアがいないことに不満を露わにして、打ち合わせをボイコットしたのだ。
それに、なにやら実家でイザコザがあったらしく、忙しそうにしていた。
「……だ、大丈夫さ。きっと次の任務はうまくいくに違いない! なにせ僕がいるんだ」
明らかに、パーティーの空気は淀んでいた。
このままでは、今に誰かが辞めると言いかねない。
サンタナは、それをひしひしと感じ取っていた。
「というか、うまくいかせないわけにはいかないだろ? 今残ってる二つの依頼は、ローズさんから貰ったんだから」
それゆえの、このセリフ。
ローズとは、『彗星の一団』を贔屓にしてくれている伯爵家の女性当主のことだ。
手製ポーションなどアイテムの支援もしてもらっており、頭が上がらない恩人である。
パーティーにとっては、裏切れない存在だ。
その名を出されたら、
「……それはそうだけど」
ソフィアは言葉を失わざるを得なかった。
ほとんど脅迫に近い形でしか繋ぎ止められないパーティー。
その時点で破綻しているのだが、サンタナはそれに気づけない。
「ならば、決まりだね。予定通り、クエストは執り行うことにしよう」
たとえ、パーティーのゆく先に大きな沼が待っていようとも、彼は気づかない。
こんな時に諭してくれたヨシュアは、もういないのだ。
♢
打ち合わせ終わり。
気まずい空気に耐えかねたか、サンタナはさっさとラウンジを後にしていた。
ソフィアは一人、残される。
上級冒険者専用のフロアだけあって、間取りは広く取られていた。
内装は豪華絢爛、今座っているソファも、見たところ高級な革製だ。
けれど、
「……落ち着かない」
もたれかかってみても、しっくりこない。静かすぎて、逆に不安になる。
落ち着かず、ポケットの中、くたびれたハンカチを握る。
猫の絵が描かれた柄物だ。いつか、ヨシュアにもらったものである。
今の『彗星の一団』に、上級ほどの実力がないのは察していた。
本当に自分がこの場所にいていいのか、そういう思いもあった。
近くに置いていた武器や防具といった荷物をまとめ、外へと移動する。
下位の冒険者ラウンジを、なんの気無しに覗いた時だ。
「知ってる? レンタル冒険者ってサービスがあってねぇ。Aランク冒険者のミリリさんと、凄腕って噂のヨシュアさんが二人でやってるんだって!」
「え~、なにそれっ! 私もレンタルしてみようかなぁ」
こんな会話が耳に飛び込んできた。
気づけば身体が動いて、
「…………そのお話、く、詳しく聞かせへっ」
ソフィアは、彼女らに声をかけていた。
突然の別れ以来、会っていないヨシュアの情報である。どうしても、知っておきたかった。
精一杯の勇気を、これでも振り絞ったのだ。
「……僕がこんなに任務を失敗するなんて、ありえない」
上級ギルドのラウンジ。
ホセ・サンタナは、顔をやりどころのない怒りに歪めて、拳を握りしめる。
連戦連敗が進行形で続いているのだから、無理もないことだった。
それも、不調は顕著なものだった。
クエストの対象魔物にたどりつくどころか、その序盤も序盤で阻まれるのだ。
原因不明。
サンタナはそう決め付けていたが、他のパーティーメンバーまでは、同じでなかった。
(…………ヨシュアくんがいないせいだ。うちらが勝ってたのは、影で守ってもらっていたから……)
とくに、ソフィアははっきり理由に気づいていた。
幼い頃から、ヨシュアのそばにいただけのことはある。
その超越的な強さは、身にしみて分かっていた。
けれど、言えばサンタナの気に触れるのは間違いない。
そう考えた末、なにも言い出せていなかった。
ちなみに、ルリは不在にしていた。
ヨシュアがいないことに不満を露わにして、打ち合わせをボイコットしたのだ。
それに、なにやら実家でイザコザがあったらしく、忙しそうにしていた。
「……だ、大丈夫さ。きっと次の任務はうまくいくに違いない! なにせ僕がいるんだ」
明らかに、パーティーの空気は淀んでいた。
このままでは、今に誰かが辞めると言いかねない。
サンタナは、それをひしひしと感じ取っていた。
「というか、うまくいかせないわけにはいかないだろ? 今残ってる二つの依頼は、ローズさんから貰ったんだから」
それゆえの、このセリフ。
ローズとは、『彗星の一団』を贔屓にしてくれている伯爵家の女性当主のことだ。
手製ポーションなどアイテムの支援もしてもらっており、頭が上がらない恩人である。
パーティーにとっては、裏切れない存在だ。
その名を出されたら、
「……それはそうだけど」
ソフィアは言葉を失わざるを得なかった。
ほとんど脅迫に近い形でしか繋ぎ止められないパーティー。
その時点で破綻しているのだが、サンタナはそれに気づけない。
「ならば、決まりだね。予定通り、クエストは執り行うことにしよう」
たとえ、パーティーのゆく先に大きな沼が待っていようとも、彼は気づかない。
こんな時に諭してくれたヨシュアは、もういないのだ。
♢
打ち合わせ終わり。
気まずい空気に耐えかねたか、サンタナはさっさとラウンジを後にしていた。
ソフィアは一人、残される。
上級冒険者専用のフロアだけあって、間取りは広く取られていた。
内装は豪華絢爛、今座っているソファも、見たところ高級な革製だ。
けれど、
「……落ち着かない」
もたれかかってみても、しっくりこない。静かすぎて、逆に不安になる。
落ち着かず、ポケットの中、くたびれたハンカチを握る。
猫の絵が描かれた柄物だ。いつか、ヨシュアにもらったものである。
今の『彗星の一団』に、上級ほどの実力がないのは察していた。
本当に自分がこの場所にいていいのか、そういう思いもあった。
近くに置いていた武器や防具といった荷物をまとめ、外へと移動する。
下位の冒険者ラウンジを、なんの気無しに覗いた時だ。
「知ってる? レンタル冒険者ってサービスがあってねぇ。Aランク冒険者のミリリさんと、凄腕って噂のヨシュアさんが二人でやってるんだって!」
「え~、なにそれっ! 私もレンタルしてみようかなぁ」
こんな会話が耳に飛び込んできた。
気づけば身体が動いて、
「…………そのお話、く、詳しく聞かせへっ」
ソフィアは、彼女らに声をかけていた。
突然の別れ以来、会っていないヨシュアの情報である。どうしても、知っておきたかった。
精一杯の勇気を、これでも振り絞ったのだ。
1
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
勇者召喚に巻き込まれたモブキャラの俺。女神の手違いで勇者が貰うはずのチートスキルを貰っていた。気づいたらモブの俺が世界を救っちゃってました。
つくも
ファンタジー
主人公——臼井影人(うすいかげと)は勉強も運動もできない、影の薄いどこにでもいる普通の高校生である。
そんな彼は、裏庭の掃除をしていた時に、影人とは対照的で、勉強もスポーツもできる上に生徒会長もしている——日向勇人(ひなたはやと)の勇者召喚に巻き込まれてしまった。
勇人は異世界に旅立つより前に、女神からチートスキルを付与される。そして、異世界に召喚されるのであった。
始まりの国。エスティーゼ王国で目覚める二人。当然のように、勇者ではなくモブキャラでしかない影人は用無しという事で、王国を追い出された。
だが、ステータスを開いた時に影人は気づいてしまう。影人が勇者が貰うはずだったチートスキルを全て貰い受けている事に。
これは勇者が貰うはずだったチートスキルを手違いで貰い受けたモブキャラが、世界を救う英雄譚である。
※他サイトでも公開
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください
幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
家の全仕事を請け負っていた私ですが「無能はいらない!」と追放されました。
水垣するめ
恋愛
主人公のミア・スコットは幼い頃から家の仕事をさせられていた。
兄と妹が優秀すぎたため、ミアは「無能」とレッテルが貼られていた。
しかし幼い頃から仕事を行ってきたミアは仕事の腕が鍛えられ、とても優秀になっていた。
それは公爵家の仕事を一人で回せるくらいに。
だが最初からミアを見下している両親や兄と妹はそれには気づかない。
そしてある日、とうとうミアを家から追い出してしまう。
自由になったミアは人生を謳歌し始める。
それと対象的に、ミアを追放したスコット家は仕事が回らなくなり没落していく……。
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる