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一章 おいおい、サキュバスが襲来したんだが!?

第7話 サキュバスは学校に行く!?

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「いつもこんな時間に行かないじゃないですか。どうして」

急いで家を出て、僕と結愛が校門前についたのは、始業のたっぷり二時間前、まだ七時過ぎだった。

「万一でも、澄鈴と会ったらどうすんだよ」

家に一緒にいることを知られれば、それこそ告白どころではなくなる。
ラーメンの替え玉をせびるサキュバスを引きずって、ここまでやってきた。僕だっていつもなら、まだ二度寝に興じている時間だ。校門を通り抜けていくのは、朝練のある少数の生徒だけ。それを横目に、

「魔法は絶対に使うなよ。使ったら学校中が騒動になるから禁止だ」

僕は魔女に説法を施す。
言いつけておきたいことは、両手の指を折っても足りないくらいにはあった。そして気に掛かる確かめておきたいことも。

「ゲームから出てきた、とか僕が二週間で死ぬ、とか誰かに言うのももちろん厳禁だ。……ねぇそもそも、ゲームのキャラってばれないものなの? 他にあのパズルゲームを知ってる人もいるんじゃ」
「その点は大丈夫ですよ。こちらに出てきた時点で、私は一時的にゲームキャラではないので、ご主人様以外の方には、キャラクターという認識はありません。あ、髪の色も他の方には黒に見えるはずです。つまりは一般人にしか見えません♪」
「……ならいいけど」

いや、ゲームから出てきた時点でよくはないんだけど。
とにかく、僕は忠告を続けることにする。

「当然、僕の家にいることもばれないようにね。要は、僕とはなんの関係もないということにしよう」
「ふむふむ、二人の関係は二人だけの秘密ってやつですね、ラブっぽくていいじゃないですか!」

そんな甘いものではないが、まぁいい。

「だから僕に過度に接触するのもやめてほしい。その、昨日の氷みたいなのはなしだ」
「他の人にならやっても?」
「ダメに決まってるだろ! とにかく大人しくしてくれればいいから」

発してから、全てはこの一言に尽きるな、と思った。もう望むだけ無駄なのかもしれないけれど、できるだけ、つつがなく、ことなかれ。

「任せてください。言いつけは守りますよ」

結愛は、にこっと微笑む。
その次元を超越した美しすぎる笑みを、信用していいのかどうか。できるならまず彼女がここにいるこの状況を信用したくなかったのだが、

「なぁ甘利さん。ゲームに戻ってくれるってわけにはどうしてもいかないんだよね」
「甘利さんじゃなくて結愛です」
「えっと、ゆ……結愛」
「えぇ、そうです。告白が成功しないことには契約は完了しませんので」

それは今さら言ってどうにかなるものでもなさそうだった。契約は取り消せないらしいし、時計の針も元には戻らない。
 できる忠告も、打つ手もなくなった僕は校舎の方を見やる。嫌な予感が建物全体から立ち上ってくるように感じたが、このまま校門前に立ち止まっているわけにもいかない。

「……じゃあ行こうか、とりあえず転校生は職員室へ」
「はい、仰せのとおりに。ご主人様」
「あ、待って。それもやめて。別所さんで頼む」

今朝から何度目かのため息をついて、校門をくぐった。


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