【完結保証】幼なじみに恋する僕のもとに現れたサキュバスが、死の宣告とともに、僕に色仕掛けをしてくるんだが!?

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】

文字の大きさ
上 下
6 / 40
一章 おいおい、サキュバスが襲来したんだが!?

第6話 サキュバスの三分クッキング!

しおりを挟む
  三


翌朝、僕が目を覚ましたのは、カーテンから漏れる光に誘われてのことだった。

爽やかな朝だった。普段ならここからぐずつくのだが、もう頭が冴えている。やっぱり昨日の出来事は全て悪い夢だったんじゃないか。
身体を起こして伸びをせんとして、

「まさか」

下半身に嫌な感じを覚えた。
なにか、温かいものがうごめく。ひらりと布団をめくって出てきたのは、艶めく紫色の髪、そして魅惑の肉体。

「ん、起きたんですか~」

甘利結愛だった。
僕は素っ頓狂な声を上げて、ベッドから跳ね起きる。部屋の端へと床を這って逃れた。

「な、なんで!」
「昨日は寒かったですから暖を取ろうと」
「はぁ、寒いわけないだろ、もう五月だぞ、むしろ蒸してるわ、葉っぱむんむんだわ」

色気もだけど。
なにせ寝巻きの胸元が、ちょうど見えそうで見えないラインまではだけている。僕がまくし立てるのには答えず、彼女はめくれた布団を被りなおす。

「んー……私、朝は弱いんです。あんまり騒がないでくださいよ~」

篭った声がその内側から聞こえてきた。

「その、ごめん」

いや、なんで謝ってるんだろう僕。なにならパーソナルスペースに踏み込まれた被害者とさえ言えるのに。
昨日の出来事は、寝て起きても現実らしかった。朝一に突きつけてくるあたり、容赦もない。
ということは、だ。

「なぁ昨日の僕が死ぬっていうやつも本当なの」

いくら待っても、答えはなかった。寝息だけがすこやかに立つ。
僕はため息をひとつ吐く。立ち上がって、部屋を出ることにした。一階に降りて、リビングでいそいそと登校の支度を始める。

「よし、もう今日告白すればいいんだ、うん」

たとえば、この馬鹿みたいな死の契約が本当だとして、そうすれば終わりなのだ。ならば今日決めてやればいい。そもそも邪魔が入らなければ、昨日終わっていた話かもしれないのだ。
そうとなったら、まずは用意である。リビングで一人、一ヶ月かけて作成した告白文句を連ねた原稿を見ながらリハーサルをしていたら、

「おはようございます~、まだ眠いです」

結愛が目をこすりながらやってきた。なぜか、制服を着て。

「…………えーっと」
「朝ごはん、なんですかー。なんでもいいですけど、味の濃いやつが食べたいです、ふへへ」
「そんなもんは後だ! なんで制服着てるの!!」
「ふぇ? 眠いんですから、騒がないでください。そんなの、私も学校行くからに決まってるじゃないですか」
「そうじゃなくて、どうして!」
「私も十六って設定なので高校生なんです~。それに、サポートするには学校一緒の方がいいかなぁって」

ちなみにちゃんと同じクラスですよ、と絶望感の増す補足がある。

「そんなことより、朝ごはんの話です。なんですか、パンですか米ですか」
「……朝は食べない派なんだよ、ブランチ派」

僕は軽く失神しそうになりつつ、返事をする。ご飯のことなんて、二の次、三の次である。

「えー。でも私、朝食べないとずーっとふにゃんふにゃんです」
「もうそれでいいんじゃないの」
「私寝ぼけて魔法でよからぬこと引き起こしちゃうかもしれませんよ~。澄鈴さんに迷惑かかっても知りませんからね~、わっるいことしちゃいますよーだ」

くっ! 言葉遣いがゆるいだけで、煽りのパワーは一切落ちていないとは。なんとしても澄鈴に下手に絡まれるのは避けなければならない。

とはいえ、僕の調理スキルはゼロ。当然、自炊もしないので、冷蔵庫の食材もないに等しい。食パン一切れさえない。

「じゃあこれでも食べておいたら!」

僕が投げやりに突き出したのは、カップ麺だった。とんこつ醤油味の中華そば。OLがいたなら悲鳴を上げる、サイテーブレックファースト。僕とて試したことはない。
だがサキュバスは、なぜか目を輝かせていて。
湯を入れて三分、一口含んでから、豪快に啜り出す。朝の六時には、相応しくない音と匂いだった。

「これ美味しいですね! 目、覚めてきました! あ、でももうちょっと塩っけがあればもっと」

なんだ、この味覚バグ魔は。緊張感があるんだか、ないんだか。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。  後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。  しかし、そこに香奈が現れる。  成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……  オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕! ※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。 「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。 【今後の大まかな流れ】 第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。 第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません! 本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに! また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます! ※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。 少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

令和の中学生がファミコンやってみた

矢木羽研
青春
令和5年度の新中学生男子が、ファミコン好きの同級生女子と中古屋で遭遇。レトロゲーム×(ボーイミーツガール + 友情 + 家族愛) 。懐かしくも新鮮なゲーム体験をあなたに。ファミコン世代もそうでない世代も楽しめる、みずみずしく優しい青春物語です!  第一部・完! 今後の展開にご期待ください。カクヨムにも同時掲載。

処理中です...