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3章

47話 正ヒロインに教えるシンデレラストーリー

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転生当初は、どうにか主要キャラたちに関わらないで生きようと考えていたが、まったく人生とはわからないものだ。むしろ気づけば周りは主要キャラだらけになってている。

ついには本来の主人公・リーナとも知り合いになり、それ以来というもの、彼女はたまに私の屋敷を訪れるようになっていた。

他の人、たとえばエリゼオやヴィオラ、ラーラといった面々がくるタイミングは外して、お忍びでやってくる。

招いたティータイムの席にて

「もっと堂々と来てくれていいのに! なんなら直接馬車で乗り付けてもらっても構わないですよ」

と私が言えば、

「い、いえっ! それが外に漏れて、アニータさんのおうちの評判が落ちちゃったら大変ですし」

彼女は髪飾りのリボンの位置がずれるほど、強く首を振る。

「あは、そんなことを気にしてたのね。でも、大丈夫! うちの評判なんて、とうに地の底よ。主に私のせいでね。エリゼオ王子を色仕掛けで落としたとかなんとか、ありえない話でもちきりだもの」

私は一度カップをソーサーにおいて、言った。
こうして思うと、この世界の人って現世よりも、噂だとか都市伝説みたいなものに翻弄されやすいのかもしれない。

まあネットがない時代って考えれば、こんなものか。

「……え、あの噂は嘘だったんですか……」
「うん、まあね。少なくとも色仕掛けもしてないし、付き合っても落としてもないもの」
「そうなんですか……! 夢がある話だなあとは思ってましたけど。王子なんて、普通の貴族じゃ相手にもしてもらえないですから」

なにをおっしゃるやら。ラーラと同じようなことを言ってくれちゃって。

リーナ、あなたこそが真のヒロインであり、エリゼオ王子やその他面々と結ばれるべき存在なのよ。

どこも普通なんかじゃない。「主人公」という圧倒的な個性を持っている。

ちなみに、私こそが普通の代表だ。本来のゲオ無における出演シーンはたったのワンシーン、いじめられることだけが役目であるモブ中のモブ! そこのところ、よろしく!

……って、そう直接は言えないので、

「そんなことないわよ」

と当たり障りのない返事をする。

けれど、腹の中はと言えば違った。


リーナにこれから降りかかるだろう災難を除くため、それから真のヒロインであるリーナとエリゼオたちヒーローの距離を近づけるため。

もともとのストーリー展開を壊してしまったのが私なら、責任をもって対応するほかない。
そう考えて、新しいシナリオをすでに作成していたのだ。

あとはどうやって、それを実行に移すかの問題である。

すでに第一手は打っていた。

ティータイムが終わったのち、リーナとともに向かったのは、私の部屋だ。
使用人やお母さまの目がないことを確認してから、鍵をかける。
十中八九、知られたらいい顔をされないしね。
また妙なことをして! 年頃の令嬢がはしたない! というお叱りが頭に浮かぶ。

そんな私の行動は、はたから見たら怪しさ満点だったろう。だがリーナは、そんな行動すら疑うことはなかった。

どうやら誰かに対して心を開くという経験が乏しいことが影響して、過剰なくらいに信用してくれているらしかった。

ここまでいくと、かなり危なっかしい。
いつか妙な輩が近づいてこないとも限らない。というか、たしか悪人に騙されかける展開もゲーム本編にあったような気がする。

そんな純粋すぎる彼女を教育するにも、今回考案したシナリオは有効な作戦と言えた。
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