「異端者だ」と追放された三十路男、実は転生最強【魔術師】!〜魔術の廃れた千年後を、美少女教え子とともにやり直す〜

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二章 属性魔法学との対峙

56話 その男、学会にて属性魔法学教授らと対峙する。

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『惑いの森林』で植物魔物・アーマヅラを退治してから、数週間ののち。
俺は、リーナとともに王城へと召喚されていた。

「5年ぶりにきたけど、やっぱり慣れないな」
「ふふ、先生は今注目の的ですからね。ですが、落ち着いてください。私もおりますよ」

場違い極まりない場所だと自分でも思う。
待機室すら、かなりの広さをしており、普段俺が暮らしている宿の数倍以上の広さをしていた。

そんななか、リーナと隣り合わせに座っているから、スペースがやたらと余っている、

なぜ俺がこんなところにいるかといえば……

「まさか、あの論文がここまでの大事になるとはね。貴族の方々へ向けて、発表・説明する機会がこうも早く訪れるとは思わなかったよ」
「そうですか? 私は確信しておりました。ダンジョンに本来よりランクの高い魔物が現れる件は、大きな問題となっていたうえ、誰も解き明かせなかった。
それを先生があっさり究明してしまったのですから、評価されて然るべきです」
「リーナは気が早いな。評価されるかどうかは、今日次第だろう?」

説明会には、王立第一魔法学校の他の教授陣も参加する。妙な言いがかりをつけられて、むしろ信じてもらえない可能性もありうる。

が、リーナにはいっさいの不安もないらしい。

隣の席に座っていた彼女は、俺が膝の上に置いていた手の上に、指を重ねてくる。

「心配いりませんよ。必ずうまく行きます。二人いれば、敵はいませんよ」

なんて微笑むものだから、またどきりとさせられた。

どうやら調子が狂っているらしい。
少し前、泥酔した彼女を介抱したときから、妙に意識をしてしまうようになったのだ。

「……先生、どうかされましたか?」
「いいや、なんにもないよ」

俺はそう言い切る。
少なくとも今は、そんなことに集中力を割かれている場合でない。今日次第で、今後の魔術学の行方が左右されることだって考えうる。

気を取り直して、論文発表の流れを再確認していると、ついにお呼びがかかった。


発表の場は、大きなホールであった。
座席には、貴族の方々、魔法学校の教授陣、ギルドの重鎮など。さまざまな関係各位が一堂に会している。

そして、なにより。
一番高いところには玉座があり、そこにはグランデ国王が鎮座していた。

お歳をめしてこそいるが、立派に蓄えた髭も、長い白髪も、なかなか雰囲気のある佇まいだ。

なんて思っていたら、声がかかった。
その注目の的である前方のステージにリーナとともに出ていけば、まばらな拍手と冷たい視線に出迎えられる。


予想通りと言っていい反応だ。
属性魔法を中心に研究している教授陣が多い以上、こうなるに決まっている。

だから、どんな反応であっても、動じないことは決めていた。

「これから、論文の発表をさせてもらいます。アデル・オルラドでございます。喪失魔術学を専門としております。どうぞ、よろしくお願いいたします」

講演台の前に立ち、堂々と挨拶をする。
リーナも、それに続いた。

静まり返る空気の中、さっそく発表へと入っていく。

「手元にお配りしている資料をご参考に、前をご覧ください」

こんな場面でも使えるのが、魔術の利点だ。
使った魔術は、【投影】という生活魔術。

空気中にある光の魔素を操ることで、手元にある資料を拡大表示して、背後の壁に映し出したのである。
これだけで一部からは感嘆の声が漏れ聞こえてきたのだから驚きだ。

リーナと、軽い笑みを交わす。
これは二人で考えて実施した、聴衆の心を掴むためのある種のパフォーマンスでもあったが、功を奏してくれたようだ。

おかげで、変に先入観を持っていない貴族の方々などは興味を持って話を聞いてくれる。

「魔術において、『魔素』の種類はいわゆる5属性のみではありません。より多岐にわたる魔素が存在し、今回はその流れが乱れておりました」
「でたらめを言うな!! お前は自分がなにを言っているか分かっているのか!」

……が、魔法学校の教授陣はそうはいかない。

ことあるごとに、こうして野次のような批判意見をとばしてくる。
それに、「そうだ、そうだ」と意見を飛ばしてくる連中のほうへと目をやれば、その最後方に目を瞑って大股を広げて鎮座している男がいた。

シモーニ・エレンスト。
かつて俺を追放へと追いやった、魔術学界隈の権威たる老爺だ。

大方、説明会の妨害を企んで、若手教授陣を引き連れて、やってきたのだろう。

俺は思わず、彼のほうを睨みつける。
そこでリーナが俺の袖を軽く引いた。

「先生、とにかく次に行きましょう」
「……あぁ、そうだな」

生徒に諭されるとは思わなかったが、たしかに正しい。
そんなものにいちいち反応していては、話が全く先に進まない。


それに、理解してもらうための秘策は、まだまだ用意してあった。

俺はリーナのほうに一つ頷いて、合図を出す。
そうして彼女に用意してもらったのは、手のひらサイズの透明なガラス製の箱だ。

そこには、あのときダンジョンで採取していた瘴気魔石を入れてある。

「これが瘴気の源になる石なのはみなさんご存じでしょう。瘴気魔石です。これが集まると、空気中に瘴気を垂れ流し、他の魔石等の物質と混ざり合うことで、魔物が発生するとされています。ここに、さきほど述べた五属性以外の元素。「膨」という、膨張の特徴がある魔素を混ぜると――」

そして、説明をしながら俺は【選別】の魔術を利用して、空気中にわずかに存在する「膨」の魔素のみをその箱の中へと入れて、箱の蓋を閉じ込める。

すると、どうだ。
その内側では、魔石が肥大化していくのが見て取れる。
ここでは、おぉという声が集まった聴衆から上がった。
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