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二章 属性魔法学との対峙
52話 その男、敵対されていたはずの属性魔法学の教授陣に感謝される
しおりを挟む「あ、あれ? あの植物魔物は――」
「それなら、もう退治しましたよ。心配は要りません」
俺は、大きな結晶となった『木霊の残滓』を彼に見せる。しかし、だ。
「お、お前はたしか新任の魔術学教授! なぜこんなところにいる⁉︎」
「それは、そもそも私たちが先に洞窟を見つけていたからですよ」
「な、なんだと!? 嘘をつくのも大概にしろ! どうせそれも偽物なんだろ!?」
……こんな時まで、俺は嫌われ者らしい。
助けてやったそばから、明らかに敵意を持って睨みつけられる。
しかしその尖った目角は、すぐに緩んでいった。
「あなた方は、アデル先生に救われたのですよ」
「り、リーナ・リナルディ理事…………!」
学校の教授からすれば、経営陣にあたる彼女が後ろにいると気づいたためだ。
「ど、どういうことですか。私たちがこの者に救われた……?」
「えぇ、あなた方を襲ったアーマヅラを倒したのも、あなた方に治療を施したのも、紛れもなくアデル先生です」
男はそれを聞き、訝しむように眉を寄せる。
「う、嘘です。ありえません! 六人がかりでも歯が立たなかった化け物を相手に一人でなんて……あっていいはずがない! それに、この者はろくに魔法も使えないと聞いております! 魔術ごときにそこまでのことができるわけがない!」
かなり強烈な先入観をもっているようだ。
受け入れてもらうのは、かなり難しそうだった。
俺は半ばあきらめかけていたのだが、
「…………いいや、すべてはアデル先生のおかげだよ」
目を覚ましていたらしい教授の方が、唐突に口を開いた。
「私はぎりぎりまで意識があったから、この目ではっきりと見ていた。見たこともない魔術円を駆使して、アーマヅラを翻弄していたよ。
まぎれもなく私たちは、彼に救われたんだ。彼の喪失魔術にね」
「……魔術なんて、雑用程度しかできない下級魔法だと思っていたのですが」
「私もそうだったさ。
だが一教授として、この目で彼の魔術を見て、その力に救われた以上、間違いを認めるほかないんだ。
彼がいなかったら、今頃私たちはこんな会話もできずに命を落としていただろうね」
その教授はそこまで言うと立ち上がり、
「大変助かりました、アデル先生」
わざわざ頭を下げる。
講師の方はしばらく呆然とそれを見ていたが、慌てて立ち上がり、それに倣った。
だが別に、頭を下げられて喜ぶ趣味もない。
「当然のことをしたまでですよ。少しでも魔術の有用性を理解してくれれば、それが一番です。気をつけてお帰りください」
こう残して、リーナとルチアとともに、その場を後にする。
その時にはすでに、頭のなかは切り替わっていた。
「……この木霊の残滓、いくらで買い取ってくれるだろうか」
「50はくだらないかと思いますよ。それもその大きさとくれば、かなりのレアアイテムです。もう少しはいくかもしれませんね」
「え、まじ? 万?」
「当然、万です。大まじですよ」
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