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二章 属性魔法学との対峙

48話 その男、生徒らに褒めそやされる

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ない。

「ルチアーノくん。もう【鑑定】はある程度使えるようになったんだったな?」
「うん、使えるよー。まぁ、まだ突き詰めきれてないけど」
「そうか、じゃあ今回は実践研修だ。鑑定対象は、このあたりの地面一帯。頼むよ」
「りょーかい」

ルチアは一つ頷き、ぽうっと人差し指に魔力の光を灯す。
そうして彼女が描き出したのは、鑑定の魔術陣と魔法式だ。

ついこの前までは線が少しよれる傾向があったが、あれから一週間。そのレベルは驚くほどに上達していた。

「本当にみるみるうまくなりますね……」

あの超成績優秀者であったリーナがこう驚くほど。
角のない綺麗な線で、魔術陣が描かれる。そうして、【鑑定】の術が発動された。

「魔素の流れが歪んでるかも……? なんかそんな感じはするけど」
「うん、だいたいは合ってるな。場所まではさすがに特定できないか」
「うーん、ちょっと分からないかも」
「恥じることはないよ。今は、魔素のゆがみが分かるだけでも十分すぎるさ」

本当に素晴らしい才能だ。
現時点で、さっきの教師2人より優れているのは間違いない。


俺は、そこでルチアにとって代わる。

魔術サークルを描いて、【鑑定】を開始した。
一本の糸をイメージして感覚を集中していく。

いっそう研ぎ澄まされた感覚に導かれて俺がたどり着いたのは、そびえていた崖の前だ。
そのくぼみへ短剣を突きさすと、もろくなっていたらしい壁面がぱりぱりと割れていく。

その裂け目は大きな揺れとともに徐々に大きくなり……、姿を表したのは立派な洞穴だった。

「先生、これって……」
「ダンジョン内ダンジョンらしいね。かなり珍しい事例だ」
「はい、聞いたことがありません。たぶん、先生でなければ、特定することもできていなかったのではないかと思います」
「あまり褒めすぎるのはやめてくれよ」

ダンジョンの中に、ダンジョンができる事例はそう多くない。
かつて、1000年前に読んだ文献では見たことがあるが、現世で遭遇するのははじめてのことだ。

できあがった洞穴は、人が十分に入れる大きさであった。
先は暗くよく見えないものの、ずっと奥まで続いている。そのため全容は分からず、未知の危険が潜んでいる可能性は否めないが……

「研究の目的を考えたら、ここからだよなぁ」
「そうですね。それに、アーマヅラが潜んでいる危険性を排除する意味でも、中を確認しないわけにはいきません」
「だな。よし、気を引き締めて行こうか」
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