「異端者だ」と追放された三十路男、実は転生最強【魔術師】！〜魔術の廃れた千年後を、美少女教え子とともにやり直す〜

二章 属性魔法学との対峙

46話 実技試験の最速記録を圧倒的に更新する。

そこから、魔法精度検査などいくつかの項目が課されるが、すべて魔術の応用で合格以上の成績を残すことに成功する。

そして、最後に待ち受けていたのは実技試験だ。

連れていかれたのは、試験用に設けているという特殊な戦闘場である。
ギルドの建物内にあるが、頑丈な石壁に覆われており、その壁には強い光属性の魔力が流され、厳重な結界が張られている。

ここまでする理由は簡単で――

「ほう、なかなかの魔物をつれてきたな」

この戦闘場では、特殊な施設による防護を前提として、実際に魔物と勝負をするのだ。

実際、ダンジョンへと出たら間違いなく、魔物と出くわすわけで。
その魔物とどう戦うかで判断するのは、単純明快で分かりやすい。

「ウォォォン！！！！」

相手は、ウルラートウルフという、中級ダンジョンにおいては上位クラス。かなりの力を有する素早さに特化した魔物であった。

たぶん、捕えられたことにより興奮しているのだろう。

開始の合図がなされ檻から解き放たれたそいつは、咆哮とともに風属性魔法の風球のようなものをいくつも連発でこちらへ放ってくる。

かつ牙を剥きだしにして、猛然とこちらへ向かって飛び上がってきた。

たしかに恐ろしい迫力なのだが……さきほどまでと違い、魔術を自由に使っていい以上、敵じゃない。


そこで俺が使ったのは、魔術サークルを速記のうえで繰り出したるは、【加重】の魔術だ。
【浮遊】の時には取り除いていた『重』の魔素を反対に同じ箇所に集結させることで、強制的に地面へと引き寄せる。

これにより、勝負は簡単に決まった。
ウルラートウルフは、突っ込んできた頭から地面に高速で激突する。そのまま戦闘不能状態になっていた。

俺は反対に魔素が薄くなった周囲の空気により、ふわり浮き上がるが、片膝をついてゆっくりと着地を決める。

「これで終わりでいいかな？」

そして横目で、レオナルドを含めた試験官らに尋ねた。

どういうわけか、しばらくはお互いに目を見合わせていた彼らであったが……

「すごい、なんだ今の魔法！　初めて見たよ、こんな戦い方！　なんなんだ、さっき空中に書いていた紋様は……」
「あぁ。武器を抜くことさえしなかったぜ。それに、これまでの記録もたどってみたが、圧倒的な速さだったよ。どんな魔法使いでも、こんなに簡単には倒せない敵だぞ！」
「ははは、すごいでしょう、俺の先生は。もっと褒めてください、みなさん」

それらはすぐに賞賛の嵐へと変わった。
レオナルドに関してはどういうわけか、誇らしげにそれを煽りだす。

少し呆れてその光景を見ているうち俺の登録試験は、幕を下ろしたのであった。


そして結果はといえば……

「大合格っすよ！！　もう、過去一番です、余裕で！！　タイムも成績も圧倒的でした。実力だけなら、このまま上級試験も余裕ですよ」

とのこと。レオナルドが興奮気味に告げてくれる。

「おいおい、あまり買いかぶらないでくれ。それに、上級試験は、いろいろと実績が必要だろう？」
「まぁ、そうですけど。それくらいの実力ってことっすよ。しかし、先生の魔術は本当に一級品ですね。俺が審査するまでもなかったっす」
「いいや、リオルくん。君のおかげで、時間外に試験を受けられたんだ。ほんとうに感謝するよ」

こうして、またしてもかつての生徒に助けられて、俺は無事にダンジョンへの入場権を手にしたのであった。