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一章 かつての生徒が迎えにきて
32話 その男、解けないはずの古代魔術を解き明かす
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生徒に当り散らした末に、特別指導と称して研究室に呼びつけ、今度は単位で脅して言う事を聞かせる。
レイブル。教師の風上にも置けない人間だ。
「あの噂、マジだったってこと? うわ、どうしよ、寒気してきた。単位は欲しいけど……それはまじで勘弁してほしいかも」
ルチアは顔を青くして、身体を一つ震わせる。
噂の真偽はともかく、今の彼女を安心させてやるには、特別指導を回避させてやるほかない。
「ルチアーノくん。この紙、少し貸しといてくれるか? すぐに返すよ」
「え? どうするの。だって先生、今の知識じゃほとんど解けないって……」
おっと、無意識だったが、それはとんだ失言だ。
俺が転生者であることは、伏せておかねばならない。少し自分の中で反省をしながら、彼女には笑顔を返しておく。
「ほとんど、と言っただろう? 可能性はあるさ」
俺はそこから、魔術式を解きにかかった。
まずは式を別の用紙に書き写していく。
「先生、もしかして読めるの?」
「まあ少しだけね」
本当はすべて読むことができるけれど、そこは伏せておく。
まずはペンを走らせていたのだが……そこで見つけた一つの項目に、式を写していた手が止まる。
『アデル・オースティンのみが発動可』
そんな文言が記されていたのだ。
どうやらこの魔術式は、かつての俺が作成したものらしかった。だが、そんな記憶はない。
こうなったらば、解き明かさない手はない。
俺は本腰を入れて、魔術式の分解を始める。そうして、少し。空欄に入るべきものの答えを無事に導き出すことができた。
そりゃあまぁ作った記憶がないとはいえ、かつて自分が作っただろう式だ。
自然と答えを導き出すことができた。
俺は式の一部に、欠けていた一文である『複合魔素による降霊術である』旨の一文を書き加える。その外周に、魔術サークルを結んだ。
すると、どうだ。
書き入れていたノートが白く発光しはじめたではないか。
この現象は、これまで見たことがない。
「先生、なにしたの⁉」
おおいに驚くルチアを横目に、俺へ唐突に襲い来るのはいつか味わったような頭痛だ。
そう、それこそ前世の記憶が戻ったときに味わったものに近い。
痛みがひどく、俺は椅子のうえで頭を抱え込む。
同時、つい唸り声をあげてしまった。
「アデル先生、大丈夫⁉ 嘘でしょ、この式のせい⁉ もしかして、あの変態レイブルの奴が仕込んでたの? もう、ありえない……!」
ルチアが盛大な勘違いをしているから、俺はどうにか首を横に振る。
しばらくすると発光はだんだんと収まり、痛みも同時に引いていった。
俺は切れた息を整えて、やっと平常を取り戻した。
レイブル。教師の風上にも置けない人間だ。
「あの噂、マジだったってこと? うわ、どうしよ、寒気してきた。単位は欲しいけど……それはまじで勘弁してほしいかも」
ルチアは顔を青くして、身体を一つ震わせる。
噂の真偽はともかく、今の彼女を安心させてやるには、特別指導を回避させてやるほかない。
「ルチアーノくん。この紙、少し貸しといてくれるか? すぐに返すよ」
「え? どうするの。だって先生、今の知識じゃほとんど解けないって……」
おっと、無意識だったが、それはとんだ失言だ。
俺が転生者であることは、伏せておかねばならない。少し自分の中で反省をしながら、彼女には笑顔を返しておく。
「ほとんど、と言っただろう? 可能性はあるさ」
俺はそこから、魔術式を解きにかかった。
まずは式を別の用紙に書き写していく。
「先生、もしかして読めるの?」
「まあ少しだけね」
本当はすべて読むことができるけれど、そこは伏せておく。
まずはペンを走らせていたのだが……そこで見つけた一つの項目に、式を写していた手が止まる。
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そんな文言が記されていたのだ。
どうやらこの魔術式は、かつての俺が作成したものらしかった。だが、そんな記憶はない。
こうなったらば、解き明かさない手はない。
俺は本腰を入れて、魔術式の分解を始める。そうして、少し。空欄に入るべきものの答えを無事に導き出すことができた。
そりゃあまぁ作った記憶がないとはいえ、かつて自分が作っただろう式だ。
自然と答えを導き出すことができた。
俺は式の一部に、欠けていた一文である『複合魔素による降霊術である』旨の一文を書き加える。その外周に、魔術サークルを結んだ。
すると、どうだ。
書き入れていたノートが白く発光しはじめたではないか。
この現象は、これまで見たことがない。
「先生、なにしたの⁉」
おおいに驚くルチアを横目に、俺へ唐突に襲い来るのはいつか味わったような頭痛だ。
そう、それこそ前世の記憶が戻ったときに味わったものに近い。
痛みがひどく、俺は椅子のうえで頭を抱え込む。
同時、つい唸り声をあげてしまった。
「アデル先生、大丈夫⁉ 嘘でしょ、この式のせい⁉ もしかして、あの変態レイブルの奴が仕込んでたの? もう、ありえない……!」
ルチアが盛大な勘違いをしているから、俺はどうにか首を横に振る。
しばらくすると発光はだんだんと収まり、痛みも同時に引いていった。
俺は切れた息を整えて、やっと平常を取り戻した。
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