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一章 かつての生徒が迎えにきて

22話 その男、ぼろ宿をも修復する。

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それから俺は、宿探しへと繰り出す。

もう日が変わっている。
この時間に受け付けてくれるところは、ほとんどなかった。そのため、格子状に作られた街の中を少しさまよう。
その末に、賑やかな表の通りから数本路地を入った小道で、一つの安宿を見つけた。

俺の財布にもどうにかなる良心的な価格だったことが、決め手だ。
まだ残業代が支払われていないため、貧乏そのものなのである。

「あの、本当にうちでいいんでしょうか……。最近はお客さんがほとんど来ないくらい、本当にぼろくて狭い部屋しか貸せないんですけど」

宿の見張り番をしていた二十代半ばごろと見られる女性が、控えめに言う。
が、それならばつい数日前まで住んでいた屋敷で慣れている。

「文句どころか、お礼を申し上げますよ。こんな時間に受け入れてありがとうございます」

俺は部屋の中へと案内してもらう。
すると、そこはたしかに年季が入った印象だった。

床の一部は毛羽立ち、扉の一部からは隙間風も吹きすさぶ。

「……本当にこんな場所でも?」

改めて聞いてくれるが、これくらいは問題ない。
俺は礼を言って、彼女が出ていったのち、指を握りこむ。

そうして魔術サークルを速記して使用したのは、【補修】の術だ。
不足しているものをスクリーニングして、それを補う各種魔素を自動で収集する魔術である。

完全に壊れたものを元に戻すことはできないし、高価なものも直せないが、木造の部屋には適応できた。

初級魔術の応用だ。
【鑑定】と【魔素収集】という、あらゆる術の基本になる式を魔術陣に組み込んである。

1000年前のかつては、多くの人が生活魔法として利用していたっけ。

やはり便利極まりない。
ブラック労働に従事していた頃の雑用も、魔術を使っていれば、かなり楽だったとは思う。
……まぁ万が一にも異端示唆されぬよう、完全に封印していたから、地道に直していたわけだが。

これで、あとはもう寝るだけだ。
そう思ったときにふと、後ろからがたりと音がした。

……どうやら、長旅の疲れでぬかったらしい。
ふり見れば扉が少し開いていて、その隙間から先ほどの女性に見られてしまっていたのだ。

「す、すいません……見るつもりはなくて……。本当にこんな部屋で大丈夫かなぁと思って、心配で、私……覗くつもりはなかったんですけど、どうしよ……」

そうだとしたら、責められるわけもない。
それに今回は癖で隠れて使おうとしてしまったが、よく考えればもう隠すこともないのだ。

これから、王国一ともいわれる魔法学校で指導しなくてはならないのだから。
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