12 / 82
一章 かつての生徒が迎えにきて
12話 その男、なんでも言うことを聞く権利を美女から条件提示される
しおりを挟む
「……あの、そもそも誰なんだ、君は」
「あぁ、そうだった。申し訳ありません、自己紹介が遅れました。ぼくは、エリ・エルスター。年は23、冒険者をしている者です」
おいおい、と俺は内心おののく。
……その名前と華々しい実績は、5年間田舎で暮らし、情報に疎い俺でも知っていた。
数いる冒険者の中でもトップクラスの実力を誇り、一人で上級ダンジョンをも踏破したことのある実力者にして、『疾風の剣聖』とまで呼ばれる女性だ。
容姿の美しさもさることながら、その実力は折り紙付き。
誰もに求められる冒険者で、一人で億ベル以上を一年で稼ぐとも聞いたことがある。
となれば、不思議な点だらけだった。
「な、なんで、あなたのような人が俺を勧誘するんです? それこそ一人でも十分なんでは……」
「ぼくは、より強くなりたい。未曽有の敵に遭遇しても、立ち向かえる力がほしい。そのためには、さらなる進化が必要になります……。色々な手を尽くしてきましたが、その一つとして喪失魔術の習得が近道であると考えたのです」
それが五年前、まだ俺が教授をしていた頃のこと。
いつか教えを乞おうと機会を窺っていたところ、俺が追放されてしまったそうだ。
それからというもの。
エリは冒険と鍛錬で全国を行脚するかたわらで常に俺を探していたらしい。
そして今回なぜここへ来たのかといえば……
「ヒュドラを誰にも気づかず倒せる人間は、そうはいません。ぼくにもまずできない。となれば、あなたしかいないかと」
「またそれかよ。君らなんなの、ほんと」
普通、それだけで俺だと分かる人間は、そういないはずなのだが。
これでもう2人目ときていた。
こんなの謎の英雄でもなんでもない。ばればれじゃねぇか……!
一人、がっくりとくる俺に、
「それで、どうでしょうか。ぼくとともにこれから北方のダンジョンへ行くというのは。
今受けている依頼から、加わってもらいたい」
エリは長いまつ毛を伏せながら、こう投げかける。
そんな突然の申し出に答えたのは、俺ではなくリーナであった。
「残念ですね、エリさん。もう遅いです。私が先に勧誘したんです。
あなたのような一流冒険者相手でも、今回は引けません。先生には、王立第一魔法学校に来ていただきます」
「まだサインをしたわけではないのだろう? ならば、ぼくにも誘う権利があると思うが? 今ならそうだな……賞金の山分け、家の保証、それから……ぼくがなんでも言うことを聞く権利もつけますが」
いや、なにその子供じみた権利は。
「あぁ、そうだった。申し訳ありません、自己紹介が遅れました。ぼくは、エリ・エルスター。年は23、冒険者をしている者です」
おいおい、と俺は内心おののく。
……その名前と華々しい実績は、5年間田舎で暮らし、情報に疎い俺でも知っていた。
数いる冒険者の中でもトップクラスの実力を誇り、一人で上級ダンジョンをも踏破したことのある実力者にして、『疾風の剣聖』とまで呼ばれる女性だ。
容姿の美しさもさることながら、その実力は折り紙付き。
誰もに求められる冒険者で、一人で億ベル以上を一年で稼ぐとも聞いたことがある。
となれば、不思議な点だらけだった。
「な、なんで、あなたのような人が俺を勧誘するんです? それこそ一人でも十分なんでは……」
「ぼくは、より強くなりたい。未曽有の敵に遭遇しても、立ち向かえる力がほしい。そのためには、さらなる進化が必要になります……。色々な手を尽くしてきましたが、その一つとして喪失魔術の習得が近道であると考えたのです」
それが五年前、まだ俺が教授をしていた頃のこと。
いつか教えを乞おうと機会を窺っていたところ、俺が追放されてしまったそうだ。
それからというもの。
エリは冒険と鍛錬で全国を行脚するかたわらで常に俺を探していたらしい。
そして今回なぜここへ来たのかといえば……
「ヒュドラを誰にも気づかず倒せる人間は、そうはいません。ぼくにもまずできない。となれば、あなたしかいないかと」
「またそれかよ。君らなんなの、ほんと」
普通、それだけで俺だと分かる人間は、そういないはずなのだが。
これでもう2人目ときていた。
こんなの謎の英雄でもなんでもない。ばればれじゃねぇか……!
一人、がっくりとくる俺に、
「それで、どうでしょうか。ぼくとともにこれから北方のダンジョンへ行くというのは。
今受けている依頼から、加わってもらいたい」
エリは長いまつ毛を伏せながら、こう投げかける。
そんな突然の申し出に答えたのは、俺ではなくリーナであった。
「残念ですね、エリさん。もう遅いです。私が先に勧誘したんです。
あなたのような一流冒険者相手でも、今回は引けません。先生には、王立第一魔法学校に来ていただきます」
「まだサインをしたわけではないのだろう? ならば、ぼくにも誘う権利があると思うが? 今ならそうだな……賞金の山分け、家の保証、それから……ぼくがなんでも言うことを聞く権利もつけますが」
いや、なにその子供じみた権利は。
122
お気に入りに追加
570
あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!
世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。
美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。
忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。
そこでひどい仕打ちを受けることになる。
しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。
魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。
彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。
感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。
深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。
一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。
さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。
彼らはどん底へと沈んでいく……。
フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》
魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます
こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。
こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。
えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる