28 / 40
いけすの魚
第28話 駒形さんの実家から、依頼が?
しおりを挟む
一
とはいえ、気になるものが気にならなくなるかというと、そうではなかった。
仕事と私生活。そのラインは跨がないように、でも気にはなるので首だけは前に突き出して側耳を立ててしまう。
「この間食べたお寿司がさー」
なんて会話が客席から聞こえてこようものなら、つい駒形さんの方をちらり。
「ゴールデンウィーク後半ね、要の実家に行くことになったの」
最初の依頼人である加奈さんが、後日談を聞かせに来てくれたというのに、またちらり。
極めつけは、私のそんな境界線をめぐる葛藤を知らない駒形さんから。
「実家に帰省したりしないの? このお休み」
「はい、学校事務の仕事は平常どおりなので。お店やるなら行きますよ」
「やるつもりだよ。じゃあ来てもらおうかな、助かるよ。まぁこう長い連休だとみんな帰省して、少しお客さん減るんだけどね」
つい実家との関係は、と口が滑りそうになった。
こうして接していると、なんなく教えてくれそうなものなのだが、琴さんに指摘された時、駒形さんはたしかに私が立ち入るのを拒んだ。それを思えば、迂闊には言えない。
五月の初日、金曜日。長期休み前、最後の平日だった。
駒形さんが言うように、席はいつもより空いていて、宴会の予約も入っていなかった。
だからサボるのではなく、より丁寧な接客をするのが駒形さん。ちょっと時間ができると、客席にお呼ばれしたりして、なんやかんやのあとに注文を取ってくる。一人で営業役までを兼ねていた。
いざこざのことを気にしている場合ではない、私も見習わなければ。そう思って、新しく入ってきたお一人様の客に、私は愛想をなるたけよくして注文を伺いにいく。
「君、バイトの子か。悪いんだけど、聡いる?」
「はい、いますが……。えっと少し、お待ちください」
注文は、なんと駒形さんだった。
なんだか某ファストフード店の、スマイルサービスみたいだなと思う。一見若そうだが、よく見ると頬にはシワが刻まれている男の人だった。四十そこそこだろうか。
そう特徴を伝えると駒形さんは、やれやれといった表情になった。珍しい、二人にはなにかの縁があるようだ。
「岡本(おかもと)さん、なんの用ですか、しがない居酒屋に」
「十分立派だと思うぜ。聡が求めてるものは大概実現できてるんじゃないの、この店。それと岡本さんは冷たいぞ、昔は剛(つよし)兄ちゃんって呼んでくれてたのに。寿司だって一緒に握った仲じゃないか」
昔、寿司。そうこれば、駒形さんの実家の寿司屋さんに関係がある人なのかもしれない。私はつい聞き耳が大きくなる。
「いつの話をしてるんですか。それで、用件は」
「そう急ぐなよな。少しくらい、懐かしんで昔話に付き合ってくれてもいいだろ。聡、お前探偵みたいなことやってるらしいな。うちの若い衆がSNSで見つけたって言うんで、来てみたんだ」
「冷やかしに?」
「違うよ、依頼があるんだ。聞いてくれないか」
「お客さんの依頼だけ受けてるんです。用件があるなら、探偵事務所へどうぞ」
駒形さんはこうあしらうと、キッチンへ戻っていった。いよいよ珍しいなんてものじゃない、違う人の振る舞いを見ているかのようだった。
もしかすると、例の「いざこざ」が原因なのだろうか。私は今、引かれたラインの向こう側を覗いているのかもしれない。
置いてけぼりにされた岡本さんはちょっと苦笑すると、私を呼びつけた。
「注文、聞いてもらっていいかな。今日が終わるまで飲みたいから、弱いお酒、そうだな。カルーアミルクでいいよ。それとせっかくだから、刺身の盛り合わせを一つ」
こちらも、めげないつもりのようだ。
「しっかり食べて、しっかり料金を払ったんだから、これで客だろ?」
「わざわざ魚ものばっかり食べて、俺をテストでもしにきたんですか」
「いや、そんなことしてないっての。さすがの腕前だとは思ったが」
営業時間終わり、岡本さんは一部の照明を消したせい薄暗い店内に残っていた。
「……で、そうして居座られても困るんですが。今日の営業は終了しましたので帰ってもらえます?」
「おかしいなぁ。客には神対応だって、口コミ書かれてたんだけどなぁ」
旧交を温めるといったムードでもない。剣呑な雰囲気が、二人が挟んだカウンターの上には漂っている。
私は、入っていくタイミングを完全に逸していた。探偵の助手は仕事だが、話は私的なことが多分に混じってきそうな予感がある。まずもって、ここまで感情的な駒形さんは見たことがなかった。琴さんに対しての怒りとは、また別種のものに見える。そうこうしていたら、
「ん。君、たしか写真に写ってたなぁ。汐見さんって言うんだね」
「あっ、はい、よろしくお願いします」
話の水が急に私へ向けられて、びくっと肩が跳ねる。
「店長と違って丁寧だね。気に入った。俺、こいつの実家の寿司屋で働いてる岡本だ」
握手を求められ、私は弾かれたように手を差し出したのだが、
「いいですよ、握手なんて。依頼は受けませんから」
そっと駒形さんに払われた。
「神経質になりすぎだぜ聡。なにも彼女を奪おうってなんじゃないから」
「そういうことではありません。汐見さんは、俺のものでもないです」
「あー、もう面倒くさいな、お前も! そこはそうだって言っとけば引き下がるんだ」
押し問答にしかならない、と踏んだのだろう。岡本さんはため息をつくと、依頼は一つ、と一方的に話し出す。
「「鮨屋牡丹」にいけすがあるだろ? 今朝、そこに入れてたアジが一匹死んでてなぁ。その理由が知りたい。おやっさんが痛んでたものを仕入れたとは考えられないし、エアーポンプも壊れてなかった。昨日まではどうということはなかったんだが……」
「えっと、一匹でも大事になるものなんでしょうか」
駒形さんが返答をする様子がなかったので、私は素人意見を述べてみる。
「うん、もしその魚が病気だったりしたら他の魚もそうかもしれない。うちはそれなりに高いお店なんだ。間違ってもお客様に質の悪い魚を出すわけにはいかないから、一匹駄目になると、同じ水槽の魚はまず使えない。それに、原因がわからないまま放置というわけにもいかないだろ? だから、調べてほしいんだ」
高級店だけあって、随分厳しいようだ。そして厳しいといえば、駒形さんも。結局取りつく島もなく、折れたのは岡本さんの方だった。
「話聞いてくれる気になったら連絡くれな。なにも当てつけにきたわけじゃないんだ、ただ力を借りたい。これ一応、今の連絡先な。店に直接連絡しろとは言わねーよ」
胸ポケットから取り出したメモ帳にさらりと書きつけて、なぜか私に渡す。それきりで、岡本さんは店をあとにした。
「…………えっと」
妙な空気が充満していた。下手に突っ込めはしないが、いっさい触れないのもおかしいし……。おどおどとしていたら、
「僕らも帰りましょうか。それ、捨てておいてください」
駒形さんはいつものように明るく親しげに、私に笑いかけた。
照明の加減も相まって、少しだけ陰りがあるように見えた。
とはいえ、気になるものが気にならなくなるかというと、そうではなかった。
仕事と私生活。そのラインは跨がないように、でも気にはなるので首だけは前に突き出して側耳を立ててしまう。
「この間食べたお寿司がさー」
なんて会話が客席から聞こえてこようものなら、つい駒形さんの方をちらり。
「ゴールデンウィーク後半ね、要の実家に行くことになったの」
最初の依頼人である加奈さんが、後日談を聞かせに来てくれたというのに、またちらり。
極めつけは、私のそんな境界線をめぐる葛藤を知らない駒形さんから。
「実家に帰省したりしないの? このお休み」
「はい、学校事務の仕事は平常どおりなので。お店やるなら行きますよ」
「やるつもりだよ。じゃあ来てもらおうかな、助かるよ。まぁこう長い連休だとみんな帰省して、少しお客さん減るんだけどね」
つい実家との関係は、と口が滑りそうになった。
こうして接していると、なんなく教えてくれそうなものなのだが、琴さんに指摘された時、駒形さんはたしかに私が立ち入るのを拒んだ。それを思えば、迂闊には言えない。
五月の初日、金曜日。長期休み前、最後の平日だった。
駒形さんが言うように、席はいつもより空いていて、宴会の予約も入っていなかった。
だからサボるのではなく、より丁寧な接客をするのが駒形さん。ちょっと時間ができると、客席にお呼ばれしたりして、なんやかんやのあとに注文を取ってくる。一人で営業役までを兼ねていた。
いざこざのことを気にしている場合ではない、私も見習わなければ。そう思って、新しく入ってきたお一人様の客に、私は愛想をなるたけよくして注文を伺いにいく。
「君、バイトの子か。悪いんだけど、聡いる?」
「はい、いますが……。えっと少し、お待ちください」
注文は、なんと駒形さんだった。
なんだか某ファストフード店の、スマイルサービスみたいだなと思う。一見若そうだが、よく見ると頬にはシワが刻まれている男の人だった。四十そこそこだろうか。
そう特徴を伝えると駒形さんは、やれやれといった表情になった。珍しい、二人にはなにかの縁があるようだ。
「岡本(おかもと)さん、なんの用ですか、しがない居酒屋に」
「十分立派だと思うぜ。聡が求めてるものは大概実現できてるんじゃないの、この店。それと岡本さんは冷たいぞ、昔は剛(つよし)兄ちゃんって呼んでくれてたのに。寿司だって一緒に握った仲じゃないか」
昔、寿司。そうこれば、駒形さんの実家の寿司屋さんに関係がある人なのかもしれない。私はつい聞き耳が大きくなる。
「いつの話をしてるんですか。それで、用件は」
「そう急ぐなよな。少しくらい、懐かしんで昔話に付き合ってくれてもいいだろ。聡、お前探偵みたいなことやってるらしいな。うちの若い衆がSNSで見つけたって言うんで、来てみたんだ」
「冷やかしに?」
「違うよ、依頼があるんだ。聞いてくれないか」
「お客さんの依頼だけ受けてるんです。用件があるなら、探偵事務所へどうぞ」
駒形さんはこうあしらうと、キッチンへ戻っていった。いよいよ珍しいなんてものじゃない、違う人の振る舞いを見ているかのようだった。
もしかすると、例の「いざこざ」が原因なのだろうか。私は今、引かれたラインの向こう側を覗いているのかもしれない。
置いてけぼりにされた岡本さんはちょっと苦笑すると、私を呼びつけた。
「注文、聞いてもらっていいかな。今日が終わるまで飲みたいから、弱いお酒、そうだな。カルーアミルクでいいよ。それとせっかくだから、刺身の盛り合わせを一つ」
こちらも、めげないつもりのようだ。
「しっかり食べて、しっかり料金を払ったんだから、これで客だろ?」
「わざわざ魚ものばっかり食べて、俺をテストでもしにきたんですか」
「いや、そんなことしてないっての。さすがの腕前だとは思ったが」
営業時間終わり、岡本さんは一部の照明を消したせい薄暗い店内に残っていた。
「……で、そうして居座られても困るんですが。今日の営業は終了しましたので帰ってもらえます?」
「おかしいなぁ。客には神対応だって、口コミ書かれてたんだけどなぁ」
旧交を温めるといったムードでもない。剣呑な雰囲気が、二人が挟んだカウンターの上には漂っている。
私は、入っていくタイミングを完全に逸していた。探偵の助手は仕事だが、話は私的なことが多分に混じってきそうな予感がある。まずもって、ここまで感情的な駒形さんは見たことがなかった。琴さんに対しての怒りとは、また別種のものに見える。そうこうしていたら、
「ん。君、たしか写真に写ってたなぁ。汐見さんって言うんだね」
「あっ、はい、よろしくお願いします」
話の水が急に私へ向けられて、びくっと肩が跳ねる。
「店長と違って丁寧だね。気に入った。俺、こいつの実家の寿司屋で働いてる岡本だ」
握手を求められ、私は弾かれたように手を差し出したのだが、
「いいですよ、握手なんて。依頼は受けませんから」
そっと駒形さんに払われた。
「神経質になりすぎだぜ聡。なにも彼女を奪おうってなんじゃないから」
「そういうことではありません。汐見さんは、俺のものでもないです」
「あー、もう面倒くさいな、お前も! そこはそうだって言っとけば引き下がるんだ」
押し問答にしかならない、と踏んだのだろう。岡本さんはため息をつくと、依頼は一つ、と一方的に話し出す。
「「鮨屋牡丹」にいけすがあるだろ? 今朝、そこに入れてたアジが一匹死んでてなぁ。その理由が知りたい。おやっさんが痛んでたものを仕入れたとは考えられないし、エアーポンプも壊れてなかった。昨日まではどうということはなかったんだが……」
「えっと、一匹でも大事になるものなんでしょうか」
駒形さんが返答をする様子がなかったので、私は素人意見を述べてみる。
「うん、もしその魚が病気だったりしたら他の魚もそうかもしれない。うちはそれなりに高いお店なんだ。間違ってもお客様に質の悪い魚を出すわけにはいかないから、一匹駄目になると、同じ水槽の魚はまず使えない。それに、原因がわからないまま放置というわけにもいかないだろ? だから、調べてほしいんだ」
高級店だけあって、随分厳しいようだ。そして厳しいといえば、駒形さんも。結局取りつく島もなく、折れたのは岡本さんの方だった。
「話聞いてくれる気になったら連絡くれな。なにも当てつけにきたわけじゃないんだ、ただ力を借りたい。これ一応、今の連絡先な。店に直接連絡しろとは言わねーよ」
胸ポケットから取り出したメモ帳にさらりと書きつけて、なぜか私に渡す。それきりで、岡本さんは店をあとにした。
「…………えっと」
妙な空気が充満していた。下手に突っ込めはしないが、いっさい触れないのもおかしいし……。おどおどとしていたら、
「僕らも帰りましょうか。それ、捨てておいてください」
駒形さんはいつものように明るく親しげに、私に笑いかけた。
照明の加減も相まって、少しだけ陰りがあるように見えた。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
東大卒男と中退女~正反対な2人の恋愛譚~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ライト文芸
高校を中退して、不動産会社で働く笹川舞。
東大を出て、一流商社で働く新田明。
静かで穏やかな雰囲気流れる山あいの田舎で、これまで正反対の人生を歩んできた二人はおよそ最悪の出会いを果たす。
はじめは相容れることのなかった二人だが、どちらも引っ越してきたばかりで友達がいなかったことから、二人は仮の友人となることに。
そしてそのうち、お互いに欠けたものを持つ二人は、互いに惹かれあい補い合っていく。
その出会いにより、変わらないと思っていた平坦な日常が変わっていく。
もうしないと思っていた恋をする。
希望なんてないと思っていた日常に光がさす。
何歳になっても、青春は訪れる。
ほろ苦くも最後に甘くなる、大人のための社会人恋愛小説。
涙間違いなしです。
ライト文芸賞参加作品です。応援よろしくお願いします。
完結保証
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
溺愛彼氏は消防士!?
すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。
「別れよう。」
その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。
飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。
「男ならキスの先をは期待させないとな。」
「俺とこの先・・・してみない?」
「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」
私の身は持つの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。
※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
1ヶ月限定の恋人を買ってみた結果
こてこて
ライト文芸
「キレイさっぱり消えて、粉になる。粉は普通ごみで捨てられるから心配いらない」
俺の自慢の彼女、それは“ハニーパウダー”であった。
落ちこぼれ大学生の俺に対し、とことん冷たかった彼女。それでも俺たちは距離を縮めていき、恋心は深まっていく。
しかし、俺たちに待ち受けているものは、1ヶ月というタイムリミットだった。
そして彼女が辿った悲痛な運命を聞かされ、俺は立ち上がる。
これは1ヶ月限定の恋人と向き合う、落ちこぼれ大学生の物語。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる