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3章

45話 【side】サンタナ 魔物だと早とちりして、神獣をメッタ斬りにする。

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「愚かな平民だったな、全く。僕にちょっとよくしておけば、簡単に疫病など鎮めてやったというのに」

負け惜しみは、止まらなかった。

町での蛮行を咎められ、追い出されるようにしてサンタナは夜道を歩く。

地理感の一切ない土地だ。
当然、どこをどう歩いているかもすぐに分からなくなる。

山道を彷徨い歩くサンタナ。
あれよのうちに、どんどん暗闇はその深さを増していく。

勾配の上下も掴めず、いよいよ遭難しかかっていた。

「……なんだって言うんだ。こうなったら山でも燃やしてやろうか」

どうにも、むしゃくしゃとした。

怒りにより魔力のコントロールが乱れる。
灯りがわりだった火属性魔法の勢いが、勝手に増した。

蠢くものが、視界に入る。

「な、なんだ……!」

ぼんやりと、その姿は揺らめいていた。
サンタナは恐れ慄き、足を木の根にひっかけこける。

絶望感を覚えつつも、その蠢く物体を見やった。

実に、厳しい見た目をしていた。
大きな二本の角が頭からは立派に伸び、たっぷりの白髭を蓄えた、獣。

それそのものが、不安定に弱々しく光っている。
見たことのない風体だった。

本来ならここで、様々な可能性を考えるべきところだが…………
サンタナは、すぐさま決めつけた。

「珍しい魔物、か。ちょうどいい。こいつが疫病の原因だったことにして、町に戻ろう。
 はっは、これで僕は一躍英雄に返り咲きというわけだな」

その獣は、すでにかなり弱っていた。
幸運だとばかり、めったぎりにする。

しかしなかなか倒れなかったため、角だけを刈り取る。

道が分からず、朝を待ってから町へ降りた。

「はは、みろ、凡人ども! 僕が、恐ろしい魔物を退治してやったぞ!!」

大歓待を受けるはずだ。今度こそ、あの町娘だって、ものにできる。

そうほくそ笑むサンタナだったが、

「な、な、な、なんてことを!!!」

町民の反応は期待とは真逆のものだった。
シワだらけの顔にさらに彫りを刻み、老人がしわがれた声で嘆く。

「その角は、神獣・白老狼(はくろうろう)さまのものじゃないか!? 森を司っている神だと言われているのじゃぞ!」
「は、は、神獣?」

そんなこと、知る由もないサンタナである。
言われてみれば、魔物より神々しく、神聖さがあった気がするが…………。

いや、認めてなるものか! あれは魔物に違いない!

「ふ、ふさげるな! 僕は善意で倒してやったんだぞ!」
「誰が頼んだというんじゃ!」

老人の憤慨は、もっともだった。

「白老狼さまが瀕死の状態となると、さらなる災いが起きるぞ……………! 水は汚れ、大地に瘴気が満ちかねん。なにせ、山は白老狼さまの命と結びついておる……。
 えぇい、皆のもの! ひとまずこの者を捕らえよ!」
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