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3章

44話【side】一方、偽レンタル冒険者を名乗り出したサンタナは、依頼に舞い上がり、その傲慢さゆえに町を追放される

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ーーーー遡ること、数日前。

『レンタル冒険者』を騙る一人の男が、ヤマタウンの隣町を訪れていた。

ホセ・サンタナ、その人である。

自らの実力を過信し、傲り高ぶった挙句に、私欲からヨシュアをパーティー追放。

以来、落ちぶれる一方だった彼は、拠点だったライトシティを逃れ、田舎町を転々としていた。

その折である。

「サンタナ様とお見受けします。少し、お話がありまして」

一人の男に声をかけられた。
小綺麗な身なりをしていた。

話を聞けば、あたりを治めている男爵家からの使者だという。

「それで、僕になんの用事だい?」
「はっ。我が当主からの依頼を受けていただきたいのです」
「嫌だね。なぜなら僕は子爵家出身だ」

格下からの依頼など受けるまい。ふん、と鼻で笑う。
が、使者は食い下がってきた。

「最近、この辺りの町で疫病が多発しています。どうにか、その原因の調査をしてほしいのです」

事実上の丸投げ、責任の押し付けであった。
男爵家当主は、疫病騒ぎをどうしても自分で対処したくなかった。

だが、サンタナがそんな意図に気づけるわけもなく。

「どうか、お願いいたします。あなた様を一流の冒険者と見込んで、なにとぞ」

甘い文句の誘惑であった。
自尊心の強いサンタナは、その言葉で一気に悦に入る。

「そういうことなら、やってあげなくもないよ。僕に任せておくといいさ。この『レンタル冒険者様』にね」

よく考えれば、うまい話だなとほくそ笑む。

男爵家とはいえ、一応は貴族。

この依頼をこなせば、自分の株を上げられるうえ、いい噂が伝播すれば、また都市での冒険者活動を再開できるやもしれない。

都合のいいことしか浮かばぬ頭は、そんな答えを出していた。





そして、サンタナは依頼をこなすため、まずは麓の町へと足を向ける。

そこは、ヨシュアたちのいるヤマタウンの隣町であった。
道中からして、様子はおかしかった。

「……………なんで。こんなところに、こいつらが!!」

魔物は、瘴気に満ちたダンジョン付近にしか基本的には現れない。

だというのに、その近くには魔物がわんさかいた。
サンタナはこっぴどくやられ、逃走をはかる。

「くそ、昔はあんなの敵じゃなかったんだ…………!」

思考も、現実逃避をしていた。

ヨシュアに頼りきりだったことがはっきり判明して、『彗星の一団』が瓦解してなお、彼は自分の無能力さを否定し続けていた。

命辛々、またしても防具やら剣をずたずたにされながら町まで逃げ込む。

「あぁ、あなたは……?」

たまたま、外を出歩いていた町民に出会った。
情けなさを隠すようにして、ふんと威張る。

「君たちを助けにきてやったのさ。一流のレンタル冒険者としてね」

なにもかも、嘘の塊であった。

真実は、

「虚栄心のために、三流の冒険者が魔物から逃げてきた」

といったところだろう。

だが、その町民はそれを信じてしまった。
既に隣町を訪れたという、『レンタル冒険者』の噂をおぼろげに耳にしていたためだ。
おぼろげに、というのが不味かった。

サンタナは家に迎え入れられ、厚遇を受けることとなる。

「もっといいものを食わせろ。まずい飯ばかり用意するんじゃない」
「そこの町娘。今夜は僕の相手をしろ」

しかし、サンタナはより高度な接待を求めた。
お客様扱いを受けたことにより、彼の傲慢さに火がついてしまったのである。

無茶苦茶な要求を繰り返し、断られたら、剣を抜き、脅す始末。

そういった横暴な行為の果てに、その町人はまだ病にかかっていなかった住人たちの連合へと助けを求める。


その中には冒険者を引退した元実力者もいて、

「なにがレンタル冒険者だ! ふざけるな、出ていけ!」
「なっ、僕は子爵家の出なんだぞ!?」
「そんなことはどうでもいい!!」

サンタナはあえなく、町を追放されたのであった。
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