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3章

43話 猛毒さえも治癒します!

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それから四日ほど。

俺たちは治癒に追われることとなった。

近隣までも、「凄腕のヒーラーレンタル冒険者がいるらしい」なんて噂が流布していたのだ。

治療すること自体は構わなかったのだが、中々どうして原因調査に充てる時間がとれずにいた。

そんな、昼食時のことだ。

「ルリママさんの料理ってほんとなんでも美味しいから、嫌いなものでも食べられちゃうかも!」

なにも変わらぬ、いつもどおりの風景だった。
俺の隣、ミリリが大皿にフォークを伸ばし、真っ先にそれを咥えた時。

「…………これはー……。あれ、なんか、視界がふわって」

フォークが力なく落ちて、皿をかちゃんと鳴らす。
だらんと、首が背もたれへ垂れた。

「おい、ミリリ? ミリリ!」
「えっ、私の料理が何かあったの……?」
「今はいいですから!」

なにが起こったのか、考えるより先に体は動いていた。

俺は、慌てて、名前を呼びかける。

しかし返事はない。息はあるようだったが、正常なものとはいえず、荒い。

「ど、ど、どうしよう、まじ、なんで!? ヒールを……! って、あぁ魔力練り直さないと」

ルリが慌ててこちらへ回る。
二人がかりで床へ寝かせてから、ヒールをかけはじめた。

ルリママも、ソフィアも、ポーションやらの用意に駆け回ってくれる。
俺もヒールに加勢するのだが、手を尽くせど、一向に目を覚ます気配はない。

思いっきり唇を噛み締めるしかなかった。鉄っぽい苦みが舌に広がる。

「…………隣にいる、って約束したばっかりだろ」

ミリリの開かぬまぶたを、俺はしかめ面で見つめる。

まだ、出会って短い。
これで終わりなんて、ありえない。どうにか、彼女を救わなければ。

俺をこうして導いてくれた彼女を助けられなくて、なにがレンタル冒険者だ。

不特定多数の他の誰かより、今は彼女を救いたい。
そう強く願い、魔力を振り絞る。

ーーその時だった。
俺の手を包んでいた光が、ふと光沢を帯びた緑色へと変わる。

「……ヨシュっち、それ! ヒールの上位スキル…………!」

それが、ミリリの身体を包むでなく、胸上に止まり、火のように灯った。
やがて薄れて、吸い込まれていく。

「…………あれ、私、なにを」

ミリリが、片目を薄く開いた。
それを確認して、一気に身体全部から力が抜けた。

ギフト【無限変化】が、俺の願いに応えてくれたようだ。

ミリリが、上半身を起き上がらせる。

「ヨシュア? 私、たしか、ご飯食べてたはずじゃ…………」
「ミリリ、一口目で倒れたの。それをヨシュアとルリが助けた」

ソフィアがそばに屈んで、説明してくれる。

「そうだ、私……」

口に手を当てて、ミリリは目を見開いていた。

「二人とも、ありがとうっ!!」

うるうる瞳を揺らし、俺とルリにがばっと抱きつく。
ほどくのが難しいほど、ちゃんと力が入っていた。

俺は、ステータスをチェックする。

_____________

冒険者 ヨシュア・エンリケ

レベル 375

使用可能魔法属性

火、水、風、土、雷、光

特殊スキル

俊敏(高)、持久(高)、打撃(高)、魔力保有(大)、広範探知(高)、目利き(高)、隠密(中)、
【ランクアップ!!】治癒・解毒(高)

ギフト
【無限変化】
あらゆる武器や魔法への適性を有する。
一定以上の条件が揃うと、スキルを習得可能。

武器別習熟度
短剣 SS
長剣 A
大剣 B
弓  B
ランス C
魔法杖 B
……etc

_____________

『治癒(中)』が進化した、スキル・解毒。

その文字列に、思考回路が一気に走りはじめた。

「ルリママさん、この料理……。昨日までとなにか変わった点は?」
「今、それを考えてたんだけど。お野菜もチーズも同じものを使ってたの」

ルリママは料理に目を落とし、少し目をしかめる。

「使ってる水を変えたぐらいかしら。今日新しく井戸から汲んできたから」

間違いなく、それだ。
思い起こされるは、はじめにヒールを行った老婦人の言葉。

俺が魔法で生成した水を、「久しぶりに美味しかった」と評していた。
裏を返せば、普段の水は、味が劣化していたことになる。

「水が、今回の疫病騒ぎの根源ってことか……」
「ねぇヨシュっち。でもさ、料理でちょっと使ったくらいで、すぐバタリっておかしくない? 
 ほら、お年寄りの人でもちゃんと歩いて、ルリの家まで来てたのに」
「たぶん、水がさらに劣化してるんだ。今日新しく汲んだ水が、よくなかったんだよ」

……それって、とソフィアは胸の前で手を握り込む。

「一刻も早く、水を使うのをやめてもらわなきゃな。
 それから、調査すべきは、すぐ上の山だな」
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