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2章

35話 元所属パーティーは崩壊。俺たちには新たな仲間が増えるようです。

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軽い事情聴取などを受けたのち、俺はミリリたち三人と合流する。

そのまま、カフェでのささやかな打ち上げとあいなった。

まさかの形でこそあれ、パーティーリーダーが罪を犯し勾留されたのだから、『パーティーをやめる』というソフィアの依頼は無事に達成されていた。

和気藹々として会が進んだ頃、

「それで、これから二人はどうするんだ?」

俺は単刀直入に尋ねる。

避けてもいい話だったが、それでは上辺を撫でているようで、落ち着かない。

あえて踏み込んだ。

ルリが、盛大なため息とともに、手にしていたフォークを置く。

「ヨシュっちと冒険っ! って言いたいけど、実はルリ。実家に帰らなきゃいけなくなったんだぁ。山に囲まれた田舎町の、ヤマタウン。
 どーしてもヒーラーの手を借りたい、って言われて断れなくて」
「……そっか。大変そうだな、大丈夫か、ルリ」
「行きたくないけどさぁ、ママの言うことだから無視できないし。ルリのヒールで治る人がいるなら、って思うことにした」

うん。ルリらしくて、いい決断だ。
彼女は、どこででもやっていけるだろう。

俺と違って、繕わないそのままの彼女で、だ。
ドジっ子なのが心配だが、そこは魔法をかけたお守りでも持たせておけばいい。

「また会ってね? また二人でお喋りしようね、ヨシュっち。約束だからねっ!!」

無理やり、小指を絡ませられる。ぷくぷくしていて、やわっこい。

周りからジト目が注がれるが……。別に犯罪ではないよ?

見た目はともかく、ルリは一つ下の十七歳だ。

「……約束なんてしなくても会うっての」
「そうそう、それから困ったことがあれば、いつでもレンタルしにきてねっ!」
「ヨシュっち、ミリリさんっ! ありがとうっ!!」

ルリは、俺とミリリの言葉に感激しきりであった。

ソフィアは、まるで姉のよう。それを、暖かい微笑みで見守る。

「で、ソフィアはどうなんだ。なにか決まってるのか?」
「うちは…………。とくに決まってないけど」

彼女は、俺と同郷だ。
実家はこの町から遠く、宿を借りて一人で暮らしている。

「じゃあ、レンタル冒険者やってみない? みる? みるよねっ?」

ミリリの目が、採用担当のそれへと変化していた。

「でも、うち、ヨシュアくんみたいに強くないし、いろんな役割果たせない。
 ミリリさんみたいに、明るくもないし……」
「初めは誰だってそうだよー。だから、ソフィアちゃんは新入冒険者だよっ!
 一から丁寧に教育するぜ~っ! ってどうかな、ヨシュア。今思いついたんだけど」

いや、思いつきかよ!

できればノータイムで突っ込みたかったが、ソフィアが俺を窺っているのに気付いて、彼女と目を合わせる。

「……ヨシュアくんは、うちがいても迷惑じゃない?」
「そんなわけがないだろ」

即答できる質問だった。

「ま、ミリリの言う通りだな。やるって言うなら、俺も訓練つけるくらいやるよ」
「……! ヨシュアくんが、うちの先生……」

頬下をほんのり染めて数秒、ソフィアは小さく首を振る。

「ほんとにいい? しばらくは何にも役に立たないかもしれない。……会計とか、庶務なら得意だけど」
「おぉっ、それやってほしいかもっ! 事務系、苦手なんだよぉ~。レンタルの割り当て担当とかもいいかもっ」

ミリリは、妄想を熱弁する。
その後、最初に俺へやったのと同じく、ガイダンスを始めた。

こうして、『彗星の一団』は崩壊。
俺たちには、新たな仲間が増えたのだった。



ーーそして、一方のサンタナは。
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