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2章

34話 悪事の事後処理

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「……こいつは、ぼろぼろになっちまったな」

技に耐えきれなかったようだ。
刀の刃が溢れて、ヒビが入ってしまっていた。

けれど、お飾りに近いナマクラにしてはよく持った方だ。
黙祷を捧げて、腰の鞘へとしまう。

代わりの刀は、新たに打ってもらえばいい。
さっき手に入れた『不燃の氷』を素材にすれば、かなり上質なものができるだろう。

「ヨシュア、すごい音したけど、大丈夫!? …………って、ピンピンしてるね?」

少し遅れて、ミリリがこちらへ走り寄ってくる。
魔法杖を構えていたが、すぐに降ろした。
わなわな、震え始める。

「ち、ちがうよ? ヨシュアの勝利を信じてなかった、ってわけじゃなくて! 万が一、ううん億が一、えっとその上はなんだっけ……」
「俺が言うのもなんだけどさ、せめて兆ぐらい覚えとけよ」

「むぅ。って、そこはどーでもいいのっ! とにかくね。もしかしたら、が私は怖くて……」
「分かってるよ。伝わってるから。心配してくれてありがとうな」

ミリリの機嫌が上昇に転じたのが、目に見えて分かった。

「えへへっ、ヨシュアこそ。守ってくれてありがとうねっ」
「なんか、ありがとうの応酬だな?」
「だね。でもさ、何回言ってもいい言葉だね」

……ミリリらしいフレーズだ。
ただ明るいだけではなく、彼女の芯の強さを感じる。

「よし、帰ろうか」
「うんっ。帰っても大忙しだよ? とりあえずまず、あの男の人突き出さなきゃ」





帰り道は、男子と女子、それぞれ分かれて歩いた。

襲われたソフィア、ルリに配慮してのことだ。
サンタナは心底嫌そうな顔をしていたが、知ったことではあるまい。暴れるほどの魔力も残っていなかったようだ。

ライトシティに帰り着く。
俺たちは、すぐにギルドへと足を運んだ。

普段の犯罪ならば、街にいる警備隊の管轄だが、冒険者関連はギルドに一任されているためである。

事のあらましを、受付に立っていたサーニャにまずは伝えた。

「えっ、えっと、すぐ偉い人を呼んできます!」

少し慌てさせてしまった。
ペンやら紙やらがカウンターの奥で舞い飛ぶ。

さらには、それを踏んづけてすってんころりん。

まだ入って一月程度の新人さんである。
こういった事件の応対は初めてだったらしい。

「ホセ・サンタナ、貴殿の身柄を拘束させていただきます」

その少しあと、屈強そうな職員が数人現れる。
一生お世話になりたくないでお馴染みの、尋問官だ。

「……くそが。見てんじゃねぇよ」

サンタナは、両腕を拘束され、首を前へ突き出されながら、こう短く呟いた。

最後に、ぎろりと睨まれるがそれだけ。
重い鉄扉の奥へと、連れ去られていった。
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