平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
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2章
19話 元パーティーメンバーからの依頼は、えっ、やめたい?
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「……えっ、ソフィアからの依頼?」
正式に『レンタル冒険者』としての活動を始め、少しののち。
その依頼は、俺にしてみれば寝耳に水の話だった。
「そうだねー、もぐもぐ、うん、もぐもぐ、ソフィア・シュルツちゃん! もぐもぐ、同い年だって!」
「……食べるか喋るかどっちかにしたら?」
ミリリは無言で頷く。
手にしたフォークに刺さるは、ベイクドチーズケーキ。
なんと、ホールで頼んでいた。
ギルド内にある喫茶の、名物メニューらしいけれど、一人で食べる量ではない。
両頬をリスみたく膨らませるミリリ。もにゅんもにゅん噛んで、ごくん、と飲み下す音がした。
可愛い。
「えっへへ、味わいすぎちゃった。依頼の話だよね? そう、ソフィアちゃん。知り合いだったりするの?」
「知り合いもなにも……」
少し躊躇って、でも正直に言うべきだなと思った。
なにせ俺の新たなパートナーは、ミリリなのだ。
もう下手な隠し事は、しないほうがいい。
「俺が追放されたパーティー『彗星の一団』の弓士だよ」
「…………それ、ほんと?」
「うん。むしろ知らなかったのかよ。俺のことはともかく、ソフィアは結構有名だと思うんだけど」
言うまでもなく、その美貌ゆえにである。
「私、そういう噂ほんと疎いんだよ~。
ごめんね、ほんと。でも、今ならまだ断れるよ。
ちゃんとヨシュアに相談してから、って思って、まだ正式に受けてはないから」
ふぬけきった顔でチーズケーキを貪っていたところから翻って、ミリリは真剣な目をこちらへ向ける。
別に同情してほしいわけでもない。
俺はつとめて、普段通りに返した。
「ちなみに。どんな依頼内容なんだ?」
単に気になる話だ。
不要とされ、たもとを分かったとはいえ、パーティーメンバーである以前に幼馴染み。
追放されたのだからもう関係ない。そんなふうに、簡単には割り切れていなかった。
「えっと、じゃあ言うね? 依頼内容がちょっと変わってるんだよね、これが。
なんでもね。パーティーをやめたいんだってさ。リーダーをどうしても許せないみたいで」
「…………!」
これは驚いた。
俺が追放されたあとの『彗星の一団』はどうやら、うまくいっていないらしい。
サンタナが指揮をとっていると思えば、必然の話かもしれないが。
また独りよがりな、身勝手な行動を繰り返したのだろう。
「うん。そう言ってたよ。噛み噛みだったけど、頑張って聞き取ったから間違いないよ。
詳しく教えてもらったらね。なんかもう、リーダーさんについていけないんだって。
明らかに無茶なクエストを受けてきて、抱えてる任務が終わらないらしいの。でも、恩人からの依頼だから断れないって」
ローズさんのことだろうか。
たしかに、それならば放り出しにくいわけだ。
彼女には、パーティーとしてかなりお世話になっている。
「最近、大事な人が減った、って言ってたけど、ヨシュアのことだったんだね?」
「…………大事な、か」
「嘘をついてる感じはしなかったよ。私の直感は、占い師より当たるので間違いなし♪
もしかしたら、ヨシュアのことを憎んでたのは、そのリーダーだけだったのかもね」
ミリリは、紅茶の入ったマグに少し口をつけて言う。
だったら俺に直接依頼をくれればよかったものを。
そう思いつつも、こうなったら調べないわけにはいかなくなる。
俺としては、長年の時を共に過ごした幼馴染を、やはりどこかでは信じたい気持ちもあった。
「受けよう、その依頼」
「いいんだね? 分かった。私は、ヨシュアの意思を尊重しますっ」
正式に『レンタル冒険者』としての活動を始め、少しののち。
その依頼は、俺にしてみれば寝耳に水の話だった。
「そうだねー、もぐもぐ、うん、もぐもぐ、ソフィア・シュルツちゃん! もぐもぐ、同い年だって!」
「……食べるか喋るかどっちかにしたら?」
ミリリは無言で頷く。
手にしたフォークに刺さるは、ベイクドチーズケーキ。
なんと、ホールで頼んでいた。
ギルド内にある喫茶の、名物メニューらしいけれど、一人で食べる量ではない。
両頬をリスみたく膨らませるミリリ。もにゅんもにゅん噛んで、ごくん、と飲み下す音がした。
可愛い。
「えっへへ、味わいすぎちゃった。依頼の話だよね? そう、ソフィアちゃん。知り合いだったりするの?」
「知り合いもなにも……」
少し躊躇って、でも正直に言うべきだなと思った。
なにせ俺の新たなパートナーは、ミリリなのだ。
もう下手な隠し事は、しないほうがいい。
「俺が追放されたパーティー『彗星の一団』の弓士だよ」
「…………それ、ほんと?」
「うん。むしろ知らなかったのかよ。俺のことはともかく、ソフィアは結構有名だと思うんだけど」
言うまでもなく、その美貌ゆえにである。
「私、そういう噂ほんと疎いんだよ~。
ごめんね、ほんと。でも、今ならまだ断れるよ。
ちゃんとヨシュアに相談してから、って思って、まだ正式に受けてはないから」
ふぬけきった顔でチーズケーキを貪っていたところから翻って、ミリリは真剣な目をこちらへ向ける。
別に同情してほしいわけでもない。
俺はつとめて、普段通りに返した。
「ちなみに。どんな依頼内容なんだ?」
単に気になる話だ。
不要とされ、たもとを分かったとはいえ、パーティーメンバーである以前に幼馴染み。
追放されたのだからもう関係ない。そんなふうに、簡単には割り切れていなかった。
「えっと、じゃあ言うね? 依頼内容がちょっと変わってるんだよね、これが。
なんでもね。パーティーをやめたいんだってさ。リーダーをどうしても許せないみたいで」
「…………!」
これは驚いた。
俺が追放されたあとの『彗星の一団』はどうやら、うまくいっていないらしい。
サンタナが指揮をとっていると思えば、必然の話かもしれないが。
また独りよがりな、身勝手な行動を繰り返したのだろう。
「うん。そう言ってたよ。噛み噛みだったけど、頑張って聞き取ったから間違いないよ。
詳しく教えてもらったらね。なんかもう、リーダーさんについていけないんだって。
明らかに無茶なクエストを受けてきて、抱えてる任務が終わらないらしいの。でも、恩人からの依頼だから断れないって」
ローズさんのことだろうか。
たしかに、それならば放り出しにくいわけだ。
彼女には、パーティーとしてかなりお世話になっている。
「最近、大事な人が減った、って言ってたけど、ヨシュアのことだったんだね?」
「…………大事な、か」
「嘘をついてる感じはしなかったよ。私の直感は、占い師より当たるので間違いなし♪
もしかしたら、ヨシュアのことを憎んでたのは、そのリーダーだけだったのかもね」
ミリリは、紅茶の入ったマグに少し口をつけて言う。
だったら俺に直接依頼をくれればよかったものを。
そう思いつつも、こうなったら調べないわけにはいかなくなる。
俺としては、長年の時を共に過ごした幼馴染を、やはりどこかでは信じたい気持ちもあった。
「受けよう、その依頼」
「いいんだね? 分かった。私は、ヨシュアの意思を尊重しますっ」
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