平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
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1章
16話 エルフちゃんに大感謝されるようです!
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「ほら、あとは自分で話せよ。それと、これももういらないんじゃないか?」
俺は、サーニャの頭に巻かれたスカーフをほどく。
エルフさんの眉尻がぴくりと動いた。
「相手もエルフさんだ。もう耳を隠す必要もないだろ」
「…………うん」
たどたどしいながらも、二人はお決まりの自己紹介から話をはじめる。
俺は、それを少し離れたところで見守った。
境遇が似ていたからなのか、意気投合するのは早かった。
もしかしたら、このまま二人して、どこぞへ流れていくの行くなんて可能性もあるかもしれない。
そうなったら、うん、きっといいことだ。
依頼人の期待に応えられたのである。俺としても、満足して家に帰れる。
……いや、その前に一応ミリリに報告でもしにいこうか。
ついでに飯でも買っていってやろう。
チーズをとろけさせまくったチキンなら。きっとご満悦間違いなしだ。
と、サーニャが俺の元へ駆けてくる。
「……ヨシュアさん、本当にありがとうございました! おかげで、やっと自分に向き合えた気がします」
気持ちのいい礼は、すでに言葉遣いが戻っていた。
レンタル冒険者としての任務は終わり、と言うことだろう。
「ずっと、なんでエルフに生まれたんだろって、立場を恨んでばかりいました。でも、同じエルフさんと話して、ちょっと分かったかもしれません。
立場を言い訳にしてたんですね、あたし。
珍しいものに見られるから、ってあたしの方から扉を閉じちゃってたんです」
サーニャは内省して、きゅっと裾を握る。
それから、にこりと笑った。
悩みの消えた、素敵な笑みだ。
「それじゃあ帰りましょう?」
「あれ、俺はてっきりあの人と一緒に旅に出るんだと思ったけど…………」
「ん? いえ。あのエルフさん、来月くらいから、この街のギルドで受付嬢をやるみたいなんです」
荷物が多かったことから鑑みるに、行商かと思ったが、なるほど。
むしろこの街へ引っ越してくる途中だったらしい。
焦って走り出したから、進行方向まで確認していなかった。
「だからってわけじゃないですけど、あたしもここに残ろうかなぁと。
もう分かってるかもしれませんけど、鈍いんです、あたし。
冒険者は向いてなさそうなので、受付嬢を目指すのもいいかなぁとか今思い始めました。
それに………………」
(…………ヨシュアさんの近くにいたい、なんて思っちゃったかも)
ほんの小さく、なにか囁かれた。
「今なんて……?」
「な、な、なんにもありませんからっ!」
そう声を大にし、首を目一杯振るサーニャ。
その長く尖った耳は、淡いピンクに色づいていた。
スカーフがないから、よく見える。
なんだ、エルフだからとか関係ない。ただの可愛い女の子じゃん。
なんにせよ、これで一件落着だ。
俺は、サーニャの頭に巻かれたスカーフをほどく。
エルフさんの眉尻がぴくりと動いた。
「相手もエルフさんだ。もう耳を隠す必要もないだろ」
「…………うん」
たどたどしいながらも、二人はお決まりの自己紹介から話をはじめる。
俺は、それを少し離れたところで見守った。
境遇が似ていたからなのか、意気投合するのは早かった。
もしかしたら、このまま二人して、どこぞへ流れていくの行くなんて可能性もあるかもしれない。
そうなったら、うん、きっといいことだ。
依頼人の期待に応えられたのである。俺としても、満足して家に帰れる。
……いや、その前に一応ミリリに報告でもしにいこうか。
ついでに飯でも買っていってやろう。
チーズをとろけさせまくったチキンなら。きっとご満悦間違いなしだ。
と、サーニャが俺の元へ駆けてくる。
「……ヨシュアさん、本当にありがとうございました! おかげで、やっと自分に向き合えた気がします」
気持ちのいい礼は、すでに言葉遣いが戻っていた。
レンタル冒険者としての任務は終わり、と言うことだろう。
「ずっと、なんでエルフに生まれたんだろって、立場を恨んでばかりいました。でも、同じエルフさんと話して、ちょっと分かったかもしれません。
立場を言い訳にしてたんですね、あたし。
珍しいものに見られるから、ってあたしの方から扉を閉じちゃってたんです」
サーニャは内省して、きゅっと裾を握る。
それから、にこりと笑った。
悩みの消えた、素敵な笑みだ。
「それじゃあ帰りましょう?」
「あれ、俺はてっきりあの人と一緒に旅に出るんだと思ったけど…………」
「ん? いえ。あのエルフさん、来月くらいから、この街のギルドで受付嬢をやるみたいなんです」
荷物が多かったことから鑑みるに、行商かと思ったが、なるほど。
むしろこの街へ引っ越してくる途中だったらしい。
焦って走り出したから、進行方向まで確認していなかった。
「だからってわけじゃないですけど、あたしもここに残ろうかなぁと。
もう分かってるかもしれませんけど、鈍いんです、あたし。
冒険者は向いてなさそうなので、受付嬢を目指すのもいいかなぁとか今思い始めました。
それに………………」
(…………ヨシュアさんの近くにいたい、なんて思っちゃったかも)
ほんの小さく、なにか囁かれた。
「今なんて……?」
「な、な、なんにもありませんからっ!」
そう声を大にし、首を目一杯振るサーニャ。
その長く尖った耳は、淡いピンクに色づいていた。
スカーフがないから、よく見える。
なんだ、エルフだからとか関係ない。ただの可愛い女の子じゃん。
なんにせよ、これで一件落着だ。
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