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1章

11話 ドジっ子な依頼人ちゃんを助けたら、またまた目立ってしまいました。規格外の技だったようです。

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というわけで、ゴブリン退治は翌日、再度行うこととなった。



昨日と同じ待ち合わせ場所に、三人集まる。



「今日は昨日より少し遅い時間だねー。夕方ダンジョンも気持ちいいかも!」

「……はい。ちょっと時間帯の違うダンジョンも見てみたくて」

「うんうん、なにごとも経験だっ!」



女子二人のフレッシュな会話をよそに、俺は一人拳を固める。



(……今日こそは『平均』的に行こう。悪目立ちは絶対にしない!)



密やかなる、しかし熱い決意。

それを心に秘めて、再び初級ダンジョン、ツクヨ池へと向かった。



時間帯が変われば、魔物の種類も多少異なる。

夕暮れ時は、夜行性の魔物が活動しはじめている場合があって、それを狩りの対象にしている冒険者も多かった。



適度に狩っていきながら、俺たちはゴブリンを探す。

そもそも、ツクヨ池近辺では珍しい存在ということもあって、なかなか見つからない。



俺の特殊ステータスの一つには、『探知』がある。

これを使えばすぐの話だろうけれど、できれば使いたくなかった。



目立ちたくないと言うのもあれば、サーニャのためにもならない。

彼女自身が見つけ、狩る必要があるのだけれど、



「どどど、ど、どうしよっ」



それ以前の段階で、躓いていた。



昨日も出くわした、水兵ガエルが相手だった。初心者でも倒せる雑魚魔物なのだが、なんと盾を突き落とされてしまったのだ。



あろうことか、それはツクヨ池にぽちゃん。



ツクヨ池は、ただの池ではない。



かなり広く、ほとんど湖のような規模をしている。そのうえ水も、魔物を生み出すとされる、特殊なものだ。



「あちゃぁ。真っ黒だよー、この池」

「……ま、名付けの由来が夜みたいに暗いことだしなぁ」



月は、池の真ん中に浮かぶ小島のことを言うのだろう。



「…………ど、どうしよう」



眉を下げて、乞うように俺を上目遣いに見るミーシャ。



それは反則的な一撃だった。

目立ちたくなかったが、こればっかりはしょうがない。



というか既に、「うわ、あの子、武器落としたよ」なんて同情の目線が注がれている。

目立つのは避けられない。



俺は、一度ステータスバーを開く。



_____________



冒険者 ヨシュア・エンリケ



レベル 355



使用可能魔法属性



火、水、風、土、雷、光



特殊スキル



俊敏(高)、持久(高)、打撃(高)、魔力保有(大)、広範探知(高)、目利き(高)



ギフト

【無限変化】

あらゆる武器や魔法への適性を有する。

一定以上の条件が揃うと、スキルを習得可能。



武器別習熟度

短剣 SS

長剣 B

大剣 B

弓  B

ランス C

魔法杖 B

……etc

_____________



…………ふむ、この中で使えそうなのは、風魔法だろうか。

当たりをつけてから、剣を抜いた。



「風の龍よ、俺の剣に宿れ! 疾風竜!」



魔力消費量も多い、超大技を繰り出す。



剣身を中心として、小さな竜巻が起こる。

そこに魔力を加えていきながら、より大きなストリームへと変貌させていった。



あとは、そうっと剣を抜いてやることで、自在に操れる。



刀同様使いこなし切れてはいないが、それでも池の水を巻き上げるくらいは易い。



池が大きく割れる。色々な落とし物や、魔物を巻き込んでこそしまったが、無事に盾の回収に成功した。



サーニャへ差し出す。



「ほら、あとで乾かしてやるから。とりあえず、ここ離れようか」

「あ、ありがとうございます……!」



平均点でいたいという俺の願望を犠牲にしてしまったけれど、サーニャの笑顔と引き換えなら悪くない。



「す、すげぇ! さっきの技、本当に龍みたいだった……。俺、あの人に弟子にしてもらおうかな」

「私、あの人、一生借りたいかも……。なんかキュンときた!」



弟子はもちろん取らないし、一生を誰かに貸してやる予定もない。



けれど、



「私が見つけたんだもんっ! ねっ? 会ったばっかりだけど、私のパートナーだもん!」



ミリリはなにを思ったか俺の腕にしがみついていた。

はっきり、お胸が当たっている。



「……あの、ミリリ」

「つーん、だよっ」



いや、どちらかというと「むにゅん」なんだけど。

口を尖らせる姿までこの上なく可愛いから、恐ろしい。



そんな俺たちを前に、サーニャはまた落ち着きなくあたりを見回していた。



癖なのだろう、頭に巻いたスカーフをしきりに引っ張り上げる。



ただ、よく見ればパニックを起こしているというわけではなく、その目には真剣味を感じた。



思えば、昨日も不自然に周りを気にしていなかったか。



記憶を辿っていて、ふと気づきがあった。

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