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1章

10話 返り討ち

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俺は剣を抜かず、ニュートラルの姿勢で、輩の一人を睨み付ける。

「な、なんだ、てめぇ! 本当にやっちまうぞ!?」

大きく刀が振りかざされる。
それが下されたと同時、サーニャの悲鳴がした。

けれど、もちろん俺は無事だ。
素早く鞘を走らせ、

「な、なんで、こっちが折れるんだぁ!?」

輩の手にしていた刀を割ってやった。
とくに魔法を使わずとも、完全に粉々である。

「せっかく卒業祝いに買ったのに!」
「残念ながら、もうそこまで刃が溢れたら直らないな」
「く、くそ。さては剣の師範もやってんのか。ば、化け物め……! 近づくな!」

長剣の習熟度はまだBなんだけど。
とは、わざわざ言わない。

「いいだろう。けど、交換条件だ。金輪際、サーニャに近づくな」
「わ、分かった、分かったから!」

さて、ミリリの方はと、俺は隣をふりみる。
彼女の敵も、もう地面にのされていた。

「えへん。念のため、念のため♪」

男の武器であった大鉈が、あっさり破壊される。

「固きものを砕け、魔の粉砕!」

魔道士は、ユニーク魔法を編み出すのにたけているらしい。
今使ったのも、それらしかった。属性をあえて使わない、無属性魔法だ。

男たちは阿鼻叫喚し、ショックのあまり気を失う。
近くにいた冒険者からの拍手が響き渡った。

「……やりすぎだな、こればかりは」

つい、やってしまった。

もっと適度にいい戦いを演じておけば、と思うが、後の祭りである。

サーニャは人見知りを発動したのか、きょろきょろと周囲を見回して落ち着きがなかった。
ミリリはといえば、

「レンタル冒険者! 私たち好評貸し出し中です!」

がっつり宣伝。
しかも、俺が今後も協力してくれることは既定路線らしい。

「ごめんな、サーニャ。無駄に目立っちゃって」
「えっ、あ、いや。……むしろ、ありがとうございます」
「あんなのを怖がることないからな。エルフが珍しいからって嫉妬してるんだ、きっと」

「……あの、ヨシュアさん。今日は一度帰ってもいいかな」
「おう。一度立て直そうか。ミリリにも聞いて、だけど」

注目の的となったままでは、色々とやりづらい。

「ほら帰るぞー、ミリリ」
「えー、もうちょっと! 大丈夫だよ、あいつらなら完全に伸びてるから! まだチラシ余ってるからー!」

商魂たくましいな、ミリリちゃん。
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