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1章

4話 熱烈なラブコールもらいました。再就職先は天職っぽいけど、一応慎重にいきたい。

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「エンリケさん。最近、冒険者の数が減ってるのは知ってますか?」

最寄りの街・ライトシティへと戻った俺たちが向かったのは、冒険者ギルドだった。

街でも随一の複合施設である。
依頼受注カウンターや、アイテム購入ショップはもちろん、飲み屋まで幅広く併設されている。

ラウンジもあって、そこに至っては受けるクエストのレベルに合わせて、初級~最上級まで分けられている充実ぶりだ。

それに比べ、人手にはやや欠けるのか、ギルド職員はあたふたと駆け回っていた。

そんな一角の喫茶店、俺はミリリから『レンタル冒険者』について説明を受けている。

紅茶を馳走してもらっていた。

「あぁ、うん噂程度だけど。
 たしか、出現する魔物の危険度が上がった、とかだったよな」
「さすがですっ、その通り。おかげで、離脱者がたくさん出ていて。
 そんなわけで、一部の有力なパーティーは除いて、世の中は割と深刻な冒険者不足なんです」

……ま、一応『彗星の一団』はその有力パーティーの部類に入るのだろう。

ゆえに、俺は追放されたわけだ。

「だから、メンバー不足に困ってるパーティーや個人に、冒険者を派遣しよう! 
 と、そんな感じのサービスです」
「……つまり、レンタルってわけか」
「はい。結構いい目つけでしょ? 
 冒険者ライセンスさえあれば、パーティーメンバーは登録次第、いつ入れ替えてもいい制度ですしね。

 ただの思いつきじゃないんですよ? 実際、すでに何度も貸し出しをやっています」

おぉ、実績があるのは分かりやすくていい。

俺がやや前のめりになったのを察したか、ミリリも身を乗り出す。

「この間は、ゴブリンの群れ退治に参加しました。
その前は、町の警備を手伝ってほしいと言われたのでサポートに入りましたし、新米パーティーに請われて魔法を教えたこともありますっ!」

自信満々に、ミリリは息巻く。
大きくたわわな胸が呼吸に合わせて揺れていた。

周りの男どもの目がこちらへ集まった気がするけれど、俺が気にかかったのは、そこではない。

「その言い方だと、今のところミリリさんしか貸し出されてないと思うんだけど」
「あはは~。やっぱりばれました? ……お恥ずかしながら、その通りです。今は私一人でやっています。
 だから、協力してくれる人を探していたんですが、なかなか見つからず……」

レンタルされるからには、もちろん相応の実力がいる。

加えて、状況に応じた判断や、対応ができる細やかさが求められるわけだが、それに見合う人材はそういないらしい。

「その点、さっきのエンリケさんの戦いぶりは完璧でしたっ。
 モンスターに出くわすたびに、倒し方を変えていく柔軟さ。今思い出しても、惚れ惚れします」
「そんなに、おだてなくても別にいいんですけど。俺、ついさっきパーティー追放されたってレベルだし……」
「お世辞じゃないです、本音も本音です。エンリケさんを追放するなんて、見る目なさすぎ……。ありえません、何にも分かってないっ。
 塩っぽい顔も私好みだし……。

 ってそうじゃなくて! ぜひに、私に手を貸してくださいませんか」

ミリリは、はしっと俺の右手を両手で包み込む。

必死が故の行為だろうが、俺には刺激が強かった。

さらりと、好みだなんて言われたあとだし。
ドキマギしつつも、答える。

「……その、話はありがたいんだけどさ」
「えぇっ! あわわ、わわ! わー!」

ミリリの尊顔が、蒼白の色へと変わる。
あまりに動揺したのか、無駄に手をわななかせていた。

「そのお断り~な感じのトーン、続きを聞きたくないかもっ!?」
「早とちりしないでください。あんまりイメージがつかないなってだけの話です。面白い話だなとも思いますし。
 俺のギフト【無限変化】っていって、あらゆる武器とかスキルに適性があるんです」

つい言ってしまったが、どうせさっき強さは見られてしまった。

ギフトとは、一部の冒険者にのみ発動する特殊な性質のことだ。
俺の場合、普通は一つしかない武器適性が、あらゆるものにある。スキルも無限に習得できる。

「す、すごい! それってレンタルにぴったりすぎるかもだ……」

こくり、俺は頷く。

しかも、場面に合わせた行動をとるのは、俺の特技と言ってもいい。

信条たる『平均であれ』が活かせる場でもある。
あれ、レンタル冒険者って天職じゃね? ついに幸運巡ってきたんでは? と思ってもいた。

ただ、

「もしよかったら、なんですけど、体験とかってできます……?」

再就職は慎重に、だ。

もう追放されるような憂き目には会いたくない。

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